第24話 セレーナ

 セレーナが焼失してはや三日そろそろ完全に消えたのではないかと心配になってくる。アセナ以外は火傷痕も治ってきた。ララノアが微弱ながら治癒が出来たのが大きい。


「……俺に《死霊の呪い》を使ったやつは何処にいる」


 能力復讐者による追跡。自分、または仲間に害がなされるとその敵の居場所が分かる能力。とは言え焼失した者までも捉えられるとは思っていなかった。


「……そこに居るのか? セレーナ」


 示した場所は目の前。姿形は見えないが、そこに居ると言っている。


「ごめんな、セレーナ。お前のおかげでアイツを撃退できたよ。ありがとな。城の修繕費はアイツから奪うから、もう少し待っててな」


 この声が聴こえてるかは分からない。そんな事よりもセレーナがまだこの世界に居ると知れたことで十分だ。


「……セレーナ。ちゃんとアイツから奪うから俺の使える金を減らさないでくれ」


「使徒様誰と話してるですか? 誰もいないです!」


「セレーナだよ。そこにいるんだぜ」


 セレーナの方を見ているが何も見えないのでポカーンとしている。指をさして場所を教えてあげるもその周りをぐるぐると周り居ないと言い張る。


「使徒様にしか見えないですか!? 何も居ないです!!」


 手を振り回し確認するが感触も何も無く、だんだん怖くなってくるアセナだった。



 ――その四日後


「――使徒様。只今戻りましたわ」


 そこには元気そうなセレーナの姿があった。長い白髪も死んでも綺麗な瞳もいつもの豪華なドレルを身にまとっているが、


「……なんか、薄くない?」


 ところどころ透けているというか、全体的に色が薄い。しかもデフォルトで宙に浮いてるため完全に幽霊だ。


「元の姿になるにはもう少し魔力が必要ですわね」


「まぁ、良いや。所で金……」


「早速ですが。城の修繕費の話ですが、ララノアさんの金貨だけではだいぶ足りないので節約はもちろんですが、そろそろ動かなければ行けない頃ですわ」


 早い。手を打つのが早いな……俺が言おうとしてたことを先読みしたのか? あれが聴こえてたのか?


「そろそろ動くのか? 良いんじゃない? 何をするのかは知らないが……」


「荒稼ぎですわ。」


「な、なるほど……?」


「時に使徒様、金はどこにあるかご存知で?」


 ……似たような会話アセナともやったような気がするな……


「そうだな……人間の金持ちを襲うとかか?」


「惜しいですわ。金を作るところを襲えばいいのですわ!」


 た、確かに!? そっちの方が早い!! なぜ気づかなかった! そうすれば一生困らない!


 しかしふとした疑問が浮かぶ。どこで作っているか分からない。各国々で一つ持っていたら経済が大変なことになる。となればどこかの国にあるのだろうが、それが何処かは分からない。


「どこの国で作ってるか知ってんのか?」


「知らないですわ」


 全ての計画は破綻した。今の時間は一体なんだったのか。時間を返して欲しいと思いつつも、いい案を聞いたと内心満足だ。


 ――どうせ人間共は分からないだろうから、偽の金貨を作ってぼろ儲けしてやる!

「人間の国に用はないですわ。さらに元である金を奪いに行くんですわ!」


 ……確かに純度を下げて偽金貨を作るにしても金は必要だな。俺としたことが、計画が甘かったな。


「そこで、黄金の魔女の所に行きますわ」


 黄金の魔女聞くからに金を持っていそうに名前をしているな。期待大だ。


 セレーナによると、黄金の魔女は砂漠の一角を砂金に変えて黄金の宮殿を築き、大半の金融機関を牛耳っているらしい。金を貰える為にやることは一つ気に入られる事だ。


「――なるほど、砂漠か……」


 暑いのは嫌いだ。行ったはいいものの気に入られなかったら終わりだ。そんな賭けに乗りたくは無い。疲れるからな!


 あまり気は乗らないが一発逆転が狙えるとも言える。どうしたものか……


「あっ、ちなみに使徒様は強制的に行きますわよ?この城を壊した本人ですからね」


 逃げ場はないようだ。

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