第10話 王国騎士団長
「剣聖エラルド。お前も見ていたなら分かるだろう? セプテントリオの超技術は王国のために役立てるべきだ。それにそこのアリオトとかいう魔導人形……」
ヘルメスベルガーはアリオトに好奇の視線を向けた。
「その再生力、実に稀有なものだ。国王陛下に移植すれば、永遠の命をも実現できる。でかしたぞエラルド。その魔導人形を解剖すれば不死の秘法が手に入る!」
ヘルメスベルガーとは旧知の仲だが、些か忠誠心が高すぎるきらいがある。特に国王陛下への行き過ぎた忠誠心は周りからも狂信的と思われている。そう思っているのは、俺とて例外ではない。
「待て。セプテントリオは砦だ。帝国の侵攻を防ぐための。盗聴していたのなら分かるだろう!」
「勝手に話進めやがってさぁ!」
ついにアリオトが大声で制した。
「なぜ私の身体を利用する前提で話を進めているんだ? 私の身体はヨハンナ様の手作りだ。自殺はもちろん許されていない。誰かに解体させるなんて以ての外だ。貴様ら程度が気安く触れていい代物だと思うな!」
アリオトは怒り心頭のようだ。有機物でできた魔導人形なので、その憤怒の表情の気迫も凄まじい。
「決めた。ヘルメスベルガーとか言ったな? お前には生まれてきたことを後悔させてやる」
「やってみろ」
ヘルメスベルガーがそう告げた瞬間、浮遊城に衝撃が走った。
「何だこれは?」
「ヨハンナ様の遺産は王国にも多数ある。その中には最近修繕が完了した魔導砲もあってな。どうやらメラクとやらの結界も貫通できたようだな」
そんなことにヨハンナ様の遺産を使うとは。今はセプテントリオと王国とで争っている場合ではないというのに。
俺が迂闊だった。利用されていることにも気付かず、名誉欲のためにここへ侵入してしまった。いや、侵入できてしまった。宝剣アイレスを持っていたがために。このままではマズい。
「ふんっ」
ヘルメスベルガーはアリオトに鉄拳を叩き込む。骨が砕ける嫌な音がする。
「バカだな。アダマンクジラの鱗を素手で殴って、無事で済む訳無いだろ?」
砕けたのはヘルメスベルガーの拳の方だった。だが、本人はどこ吹く風だ。
「まぁ仕方がないか。私の身体を利用していんだから、剣で致命傷を与えるわけにはいかないよなぁ!」
「クソガキが。再生能力があるのは分かっている。四肢を斬り飛ばして身動き取れなくしてやるよ!」
ヘルメスベルガーは背中の剛剣を引き抜き、斬りかかる。
「やめろ」
俺は間に入り、レディレイを振り抜いた。ヘルメスベルガーの大剣は、刀身が綺麗に両断されていた。
「何のつもりだエラルド? それ以上妨害を続ければ、反逆罪に問われるぞ?」
「あぁ構わない。それで王国を守れるならな!」
俺は続けざまに剣を振るい、ヘルメスベルガーの鎧を粉砕した。ついでに首筋に手刀を叩き込み、気絶させた。
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