自然も人も
街中によくある標識がふと目に入った。
それは歩道の側、街路樹の側に立たされた標識だった。その標識には街路樹から伸びたツルのようなものが巻きついていて、もうすぐ標識の頭というか顔という部分に緑が差し掛かる具合だった。このまま植物が伸び続ければ標識は見えなくなって人間はさぞ困るだろう、とぼんやりと私は考えた。標識が見えなくなったことで、その道路では事故が多発し、何も知らない人々は呪いだ、忌み地だ、と言ったりするのかも知れない。植物の成長力に人が殺される……。
時に自然は人間を脅かすものである。脅かすとまではいかなくとも、困らされたことは誰にでもある経験だろう。規模が大きくなればそれは災害となり、人の存在なぞちっぽけで大きすぎる自然のエネルギーに抗うことはできないと悟る。
しかし人間もまた自然を脅かす。自然を自分たちの都合で勝手に破壊しては更に発展しようとする強欲さが、自然を殺していく。それは巡り巡って自分たちに返ってくることをわかっているはずなのに実行できない浅はかさも持ち合わせている。
人間は自然の都合を考えない。だが、ツルを標識に伸ばした植物もいる。自然もまた欲深なのである。いかにも草食ですといった顔をして(草が草を食べるわけもないが)、何よりも貪欲に生にしがみ付き子孫を残そうとする。人も自然も、本質はさほど変わらない。どちらがどうだ、ということではない。こういうことが多いのだ、私の見る世界はどうも、そういうものでできている。また次回。
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