第15話 喧嘩両 say bye
手持ちの狼煙玉は
次は、次は。と、呟く。泳ぐ視線は彼の焦りと苛立ちが如実に顕れていた。
そして、今ひとつ。
遂に力尽きて回転が止まる。傷だらけの体で大樹に寄りかかった
両眼をぎゅっと瞑り、覚悟を決める。
退却の判断は自分に任されていた。しかし上手く立ち回れなかった自分は仲間の為に死のう。遥か格上相手に最後まで諦めず立ち向かったあの仲間のように。闘って死のう。
不器用な覚悟を抱いて
「おい!」
驚くほど拍子抜けに正面から敵は現れた。
裸同然のいかがわしき少年を軽々と小脇に抱えている。具足の下からでも判るほど筋骨隆隆とした
「随分派手に暴れていたな。この樹海が誰の縄張りか知っての所業かい」
男の問いに応じる意味などない。表情を見れば自ずと判る。
天を仰ぎ、男が口を大きく開いた。口に掌を入れ、ずるりと何か長い物を抜き出す。不可思議な光景だった。
「ところで見てくれ。こいつをどう思う」
「どう思うって」
男はこれ以上無い程に眼をきらきらと輝かせていた。褒められたくて堪らない童のような表情で、躊躇なく間合いを詰めてくる様は不気味としか形容し難い。
「かなりのもんだな」
咄嗟に、意図せず、無意識に、口からまろび出た言葉だった。当然、
「去れ。
「私はお供しますぞ。この魔眼で。貴方が仕えるに相応しい真の魔王となるか見定めるまでは」
「何でお前がいるんだ。いつの間に」
「えへへ。魔王さまの為に馳せ参じました」
洞窟内で
「待て!こらァ!」
「逃げんな!お前は此処であたいと添い遂げるんだ!子を産むぞ!誰よりも強い子をばんばん産んで、一緒に大軍を育てるんだよ!」
虫の執念深さ、剥き出しの本能が何より恐ろしい。立ち上がった
「
「俺の家族に手を出したら地獄の末でもぶち殺すぞ阿呆女ァ!」
怒りに我を忘れた喧嘩腰で、今にも舟から飛び出しそうな
←「
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