19 ひとりぼっちの帰還

 葵の痕跡はどこにもない。

 まるで最初からいないかのように。

 ベッドは一つしかなくて。机も、制服も、鞄も。

 いや、いないのか。

 きっと今僕がいるのは葵がいた世界線とは違うところだ。昨日とは違う世界。

 目の前にあるのは一本のゲームソフト。アップデートが年に何回か行なわれ、キャラの昇格や新たなストーリーの追加も行われるというロングセラーのオフラインゲーム。

 それは僕が知らなかった物語。

 僕は手にとってパソコンのディスクトレイにセットした。

 最初から始めよう。

 葵がいる世界を、みんながいる世界を。

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