りるる頑張ります!①
ガタンゴトン、ガタンゴトンと音を立てながら、今その列車は走っていました。
その列車には沢山の民族の人達が乗り、それぞれの人々がそれぞれに有る目的地を目指す旅を
列車に揺られながら続けていました。
そんな、乗客の中にひとりの、少女の姿が有りました。
その少女、女の子の名前は りるる
その りるる の胸の中はいま、ドキドキとワクワクでいっぱいでした。
そう、なぜなら今日から りるる は今までとは違う新しい世界への第一歩を踏み出したばかりなのです。
他所行きのおしゃれなのでしょう、赤を基調に黒色のチェックの入った、所々にフリルの付いたゴシック調の長い姫袖ブラウスとそれに合わせたスカートを履き、その足元にはやはりフリルとリボンの付いた黒色のロングソックとその上に茶色の革のブーツと言う出で立ち姿をした りるる はその手に見るからに大きくて大変に重そうな、茶色い革製のキャリーケースの取っ手をキツく握りしめながら、緊張の走る顔をうつ向かせていたのでした。
無理もありません。
人は誰しもが今までとは違う新しい何かを始める時には、思い描いていた夢や希望よりもまず、【大丈夫なんだろうか❓️、果たして私にはその目的が果たせるのだろうか❓️】
と言った不安の方が大を占めて仕舞い、それが乗り越えるべき最初の壁として立ちはだかり、それを乗り越えてでも前に進むのか❓️。
やはり、そこで立ち止まり違う道を歩むのか❓️。
その時に人は誰しもがそのどちらかを必ず選ばなくては成らなくなる。
最後の選択の場所で有り
まさに今 りるる はたった1人でその選択の場所に立ち
列車を降りたらすぐに折り返しの便に乗り換えて故郷へ向けてとんぼ返りをしてしまおうか❓️
いや、やはりちゃんと目的地で有るその駅に降り立って、その新天地となるまだ見知らぬその地で自分で選んだ道を歩んで行くのか❓️
その葛藤がまだまだ りるる の心の中では繰り広げられ、その時 りるる は必死にそれらと戦っていたのでした。
ただこの様な場合、どちらを選んだら正しく、どちらを選んだら間違っている。
そんな事は誰にも言えず。
前に進み出す事も勇気で有り
また、諦めて引き返すのもまた、その人の出した勇気による結論で有りそれを責める資格などは誰にも出来ることは出来ないのです。
と、そんな折の事でした、りるる の向かい側の席に座って居た、犬科の けもの族の男性のひとりが車窓を開けそこから身を乗り出しながら
「おお、見えて来たぞ、平和の国フランソワーズだ❗️」
と、歓喜の声を上げると他の乗客達も一斉に
「本当かよ❗️」
と、旅人風の男性がその後を次ぐ形で声を上げながら窓へと駆け寄って、その【フランソワーズ】が望めると言う外をの除きこみに行き
そして、その窓側の席に座って居る兄妹と思しき二人の小さな子供を連れた
妙にやせ細った、おそらくはまだ20代後半であろう若い婦人が
「これで、ようやく、ようやく戦争の無い国へこれたのね」
それまで有った何事かの不安からようやく解放されたのか、安心の滲む声を絞り出しながらすすり泣き涙を流しながら、自分自身にもそして連れている二人の子供達に向けてもなのでしょう。
その積もる思いを言葉とにしていたのでした。
そんな人々の姿を見てか、先程までの不安はどこへやら。
りるる は俯けていた顔を上げ、急にやる気のスイッチが入ったのか、本来彼女が持って居る、キリッと引き締まった気品の有る顔付きになると同時に、スッくと座って居た椅子から腰を上げて立ち上がり、そして大勢の乗客達が群がっている車窓に向かって、りるる は足早に駆け寄ると、その群衆達の間を掻き分けて掻き分けてをしなながら、その出来た隙間に、ギュウギュウと強引に身をその身を滑り込ませる、と、言うよりも、無理やりにでも詰め込みながらに外の景色を見ることが出来る、車窓の側まで辿り着くと、りるる の目には、連なる山々を背にする緑なす広い丘、俗に言う丘陵地帯の広がって居る光景が飛び込んで来たのでした。
それこそが、りるるの新しい生活の場所となる
平和的中立王国フランソワーズ
りるる はそれを見ると、こそが希望に溢れた笑顔で大きく見開いたその瞳をキラキラと輝かせながら
「フランソワーズ。私、今すぐにそっちへ行くからねぇーーーーーーーーっ❗️。もう少しだから待って居てねぇぇーーーーーーーーーーっ❗️❗️」
と、車窓から身を乗り出しながら、目の前に広がるフランソワーズの大地へと向かって、手を振りながら嬉しそうな声を上げていたのでした。
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それから程なくして、蒸気機関車に引かれた列車は、フランソワーズの駅の構内へとゆっくりと滑り込むようにして入り、その中の幾つか有るその内の4のナンバーの振られたホームで静かにその動きを止め停車をすると、次には駅の構内で りるる 達を乗せたその列車の到着と次の発車時刻を告げる駅員によるアナウンス声が、エレキテル と言う錬金術によって作られたスピーカーから駅全体にけたたましい程の音量で、聞こえて広がり、ここフランソワーズで列車を降りる りるる を含めた人達に、これから別な地へと向かう為に、その列車に乗る人達、その双方の乗降客達で今、駅の構内は人混みで溢れかえっていたのでした。
そんな中を りるる は沢山の荷物の入った大きな革製のキャリーケースをひとりで重たそうに引き摺る様にして運びながら
「よいしょっ❗️」
っと、列車の中からホームへと気合を入れながら運び出し
ゆるふわで腰の辺り迄伸びる薄茶色の髪とタレ目がちでパッチリの茶色いお目々の少女 りるる は今更ながにその手荷物の中に収めた物が予想以上に重かっな。と、
後悔をし、額に吹き出た汗を「ふぅ」とため息混じりにハンカチで拭き取りながら
『やっぱり、ここは魔法の出番かな❓️』
と、ここ密かに呟くと
今まで荷物の方へと向けていた目と顔を りるる は、その目の前に広がっている、フランソワーズの大地へと向けると思わずに目にした、その目の前に広がる圧倒的なと光景に目にして
「うわぁーーー!!」
と、その感激を声に出していたのでした。
そこには、駅から南へと長く遠く、そして険しく丘陵地帯と言う丘の上にある、フランソワーズの街街へと続きながら伸びている、通称で龍の道、ドラゴンロードと呼ばれている急で長い道のりが続く坂道が広がっていて
それを目にした りるる は突然に訪れたその乗り越えなければならない試練に呆然となりながら
「・・・・嘘でしょこれは」
と、気の抜けた声で独り呟いていたのでした。
『せっかくここまで来ていきなり急な坂道って・・・・』
と、落胆の声でその思いをつぶやきながらも
列車の中でそうで有った様に、りるる はギュっと口を固く結び
凛とした表情でその坂道、ドラゴンロードを下から順番に街があると言う上の方へ目で追いながら見上げて行くと
「私は自分で決めてここまで来たんだもの。そう、メイド学校に通って立派なメイドに成るそのために、ここまで来たんだもの」
りるる は、そう言って自分自身に言い聞かせると
「だから、私、りるる はがんばります❗️」
と、続けてその思いの丈を言葉にして結びました。
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