第56話 ふと空を見上げて

「マリヤさん、そろそろですね」

 昼食後、決勝戦を前に再び試合会場に戻ってきたマリヤとミオ。学園の生徒達や観客が集まりはじめガヤガヤと騒がしくなり、少し緊張した雰囲気が辺りから流れてきた

「ちょっと緊張してきましたね」

 ミオの後ろにいた同級生が少し震えながら呟くと、隣にいた友達が背中を軽くポンッと叩いた

「緊張しないでも、マリヤさんとミオさんの二人なら圧勝で優勝しちゃうよ」

「そうだね」

 二人の会話を聞きながらふとマリヤを見る。ミオの隣にいるマリヤは右手を空に向けていた

「マリヤさん、何かありましたか?」

 と、ミオが問いかけると、上に向けていた右手を下げミオを見つめフフッと微笑む

「私の魔術はどうだった?」

「えっ、いつもと変わらずだと思いますが……」

「そう……」

「マリヤさん、ミオさん。始まりますよ、向かいましょう」

 話している間に二人より先に進んでいた生徒達が二人を呼ぶ。ミオが先に歩きだし、一人残ったマリヤはまた両手を見つめた後、ミオを追いかけるように歩きだした









「緊張してますか?」

「うん、とても」

 その頃、一足先に試合会場に来ていたマオと、マオの右肩に座るフランがヒソヒソと話をしていた。マオの使い魔だと思っている観客達もフランを指差し物珍しそうにヒソヒソと話している

「たくさんの人が見に来ていますね」

「うん」

「マオさん、大丈夫ですか?」

「うん」

「ご主人様は来ませんが、私達で頑張って勝ちましょうね」

「……うん」

 フランの話にマオが上の空で答えると、フランが心配そうにマオを見る。そんな二人の様子をいつの間にか側に来ていたミオがクスクスと笑った

「そんなんで私に勝てるの?」

 ミオがマオを見て言うと、ムッと少し怒った顔でミオに言い返した

「勝てるよ、たぶん」

 マオがそう言うと、フランがウンウンと何度も頷く

「大丈夫です、私がちゃんとサポートしますから」

「ありがとう」

 マオがフランにそう返事をすると、急にフランがキョロキョロと辺りを見渡しはじめマオの前に来ると今度は空を見上げた

「すみませんマオさん、少し離脱します」

「えっ?」

「戻ってくるまで頑張って逃げて耐えてください」

「えっ……ちょっとフラン!」

 マオが慌てて呼び止めるが振り向かずに去っていったフラン。マオが呆然としている側で、ミオ達もザワザワと騒がしくなっていた

「マリヤさん、あのさっきからどいしたんですか?」

 両手を見つめ動かず返事もないマリヤにミオや応援に来ていた生徒達が戸惑い困っていた。マオもマリヤの様子に気づいて見ていると、視線に気づいたマリヤがマオを見た後今度はミオを見た

「ここはあなたに任せるわ。優勝出来るように頑張ってね」

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