『精霊に愛された少女は《物語り》と共に果てなき森を歩む』は、青村司先生が描く旅と人の営みをテーマにした幻想的なファンタジーです!✨
物語の舞台は、広大な大森林。《物語り》を名乗る青年は、村々を巡りながら知恵と知識を交換し、 人々の営みを見届けながら旅を続けています🚶♂️🌿。
そんな彼と旅を共にすることになったのは、都の奴隷だった少女。彼女は思わぬ運命の流転により、《物語り》の青年と共に旅をすることになります✨。
旅の中で、ふたりは出会いと別れを繰り返します。両親を失い悩む少年、一見幸せそうに見えるが心に影を抱えた男性、そして人ならざる者たち――
彼らとの交流が、心の結び目を解きほぐし、変化をもたらしていくのです💫。
やがて、くたびれた商人を仲間に加え、北へと足を運ぶふたり。しかし、その地で待ち受けるのは、過酷な運命――🌌💥
青村司先生の筆致は、静かで心に響く旅の物語を紡ぎながら、人々の営みや選択、過ちを見届ける《物語り》の視点を通じて、読者に「人は出会いによって変わる」というテーマを伝えています!📖✨
旅の中で紡がれる短編集のような構成が特徴的で、一話ごとに異なるドラマが展開されるため、読者はまるで旅をしているかのような感覚を味わえます!🌍💖
果たして彼は何者なのか。どこまでも続くかのような大森林を旅するその男性は、素性が断片的にしか明かされていません。「物語り」という彼の役割は、集落から集落へと渡り歩くことで意味を持ち、ゆえに彼は旅を続けます。そこは、点在する集落と、凶暴にして自然の恵みである獣と、姿を見せない精霊への畏怖とが暮らす、俗と聖が入り混じる大森林。炎の精霊に選ばれた「祝り(はふり)」となった少女も旅路に加わりますが、その彼女をもってしても、彼は謎の存在です。森と同様に深まる謎。短いドラマの積み重ねが、この世界に深さと厚みを生み出し、読みやすいながらも広大な物語を構成しています。そして、優しく強く、ときにわがままやクセの強い人物も次々と現れ、彼らもまたこの森の中でしたたかに生きるリアルさを感じさせてくれます。あなたも、彼らと一緒に大森林を旅してみると、精霊の奇跡を目撃することができるかもしれません。連作短編形式なので、気軽に読み始めることができます。
最近は見なくなりましたが、かつては旅人が点在する村を訪れて僅かな期間だけ交流して去る物語が数多くありました。本作はその系譜に属します。
そこで旅人は見ます。村の民は、動かぬが故に世界を知らず、温かくもあるが薄情でもあり、そして愚かさと欲が罪に繋がることもあるのだと。
村人は人間です。どうしようもなく人間です。人間という、どうしようもない存在なのです。
それを見届ける旅人は、彼らに同調してぶれては全体像が見えなくなります。冷静であると同時に冷徹で、広い意味において、裁きを下すことになります。
しかし人は生きていれば身体を固めて寝ていることはできません。村人は次に何をなすのか。それを見届けて旅人は村を去ります。
それは、これまで多く語られた物語です。本作は全くぶれません。小手先の目新しさに頼らず、真正面から物語の構図に向き合い、過去から続く大きな流れに確固な新参者として加わりました。
この小説自身が、過去からの流れを引き継ぐ身でもあります。文章は伝える情報が冷徹に選別されて夾雑物がありません。小説のお手本です。
この小説自身が、語り手の手本です。
まず最初に一言、独特なハイファンタジー作品です。
精霊や旅人をテーマにした、行く先々の出会いとストリーが魅力的な本作。
読みやすい文章と4話程度のショートの短編集のような作品で、飽きることなくサクサク読み進められます。
個人的には3話の「焔の少女」まで読むことをお勧めします。
精霊、国家など世界観がしっかり作られている中でのストーリーですので本当に旅をしているような気持ちになります。
宗教や風習が作り込まれているので、洋ファンタジーのように、実際に異世界の空気を感じる事が出来ました。
ただ、先ほども言いましたが、読みやすい文章と短編集の様な感じなので、重さを感じさせない素晴らしい作品です。
ハイファンタジーが好きな人にオススメです!
その村に"奇妙な旅人"が訪れる。
異なる色の瞳、くたびれた外套、背には二振りの剣。
《物語り》と名乗る男・タイカは、大森林の村々を巡り、知識と種を運ぶという。
彼の言葉に村は沸き、少年・イムナの心には"ある疑念"が芽生えた。
「僕の父母が残した種は、誰のものなんだ?」
夜の闇が迫る。静かな村の奥で、"何か"が目を覚ます。
精霊の残した影か、それとも滅びを運ぶ獣か。
この森で語られるのは、"ただの物語"ではない。
それは、失われた記憶と願い、そして"命の在り方"を問う物語。
過去と未来が交差する時、イムナは知る。
"見えないもの"の存在と、その優しさを。
「世界は広い」
そんなことは分かっていると言うかもしれない。
現代人は、確かに「分かって」いるのだろう。
本があり、映像があるからだ。
インターネットを開けば、世界のどこかで起こったことを知ることができる。
そんな情報のない「世界」で、その広さを感じることができるだろうか。
自給自足で終わる春夏秋冬。
行商人の伝える「別の村」の様子が、唯一の「そとの世界」。
それで構わない人だっているだろう。「ちいさな世界」に安らぎを覚える人もおおいことを、我々も知っている。
本作の登場人物は、どこかに「他者との違和感」を持っている。
なにかが違っていて、周囲と溶け込みづらく感じている人もいる。
疎外感というほどのことはなくても、すこし寂しかったり、寄る辺のなさを感じている。
旅人である「物語り」は、そんな人々に、言葉や、態度でそっと告げるのだ。
「そとの世界には、あなたのような人もたくさんいる」と。
「世界は広い」と。
彼は常に、外の空気を身にまとって佇んでいる。
それはちいさな救いだ。
ちいさくとも、求めていた救い。
それはきっと、現代における我々が「物語り」に救われているようなものだ。
ちいさな、たましいを救う連作短編集です。
舞台は広大な森、そこに点在する村々を旅する青年タイカ。彼は知識と知恵を交換する《物語り》として村を訪れ、人々と触れ合い、微かな変化をもたらす。
時には村の外に憧れる少年に道を示し、時には自らの殻に閉じこもる娘に勇気を与え。それはほんの僅かな知識であり、後押しであり、些細なきっかけだったりします。
タイカはとある事情により特殊な力を有していますが、決してそれを過信せず乱用せず、自らを厳しく律しています。彼は出会った人々にも自然な変化を求め、必要以上の干渉をせず、あくまで《物語り》であろうとします。
彼は勇者でも魔法使いでもなく、ただ人々にほんの僅かな知識ときっかけをもたらす《物語り》。
ファンタジーでありながら静かで不思議な優しい世界に浸りたい方、是非ともご一読ください。
獣の脅威に満ちた広大な森に、小さな村が点在している。
村同士の交流は薄く、旅びとが訪れるのは珍しい。
少女を連れているのなら、なおのことだ。
真っ暗なマップが、旅びとの足跡でゆっくり明らかになっていくような読み心地の作品です。
この世界の人々がどんな価値観を持ち、どうやって恐ろしい獣から家族を守り、いかなる加護をもって森での暮らしを営んでいるかを、一話ごとにあなたは知っていくでしょう。
「それってどういうことなんだろう」と疑問に思ったことを、次の話でサラリと説明してくれるから、知的好奇心をくすぐられながら、次へ次へとページをめくる手が止められなくなります。
ストーリーは、これから二部が始まるところ。
読み始めるには、ちょうどいいタイミングですので、ぜひ。