社会人となったリクと大学院生の原田。
飲み屋での思い出話から懐かしさに心が温まる物語です。
半年ぶりに再開した二人はタイトルの『迷子とおむかえ』の関係にありました。
限界まで酔ってしまうとフラフラと迷子になってしまうリク。
彼から迎えの連絡を受け、介抱に向かう原田の甲斐甲斐しさ。
この関係が大学キャンパス内の『果樹園』での記憶と繋がっていて、そこで感じられる甘酸っぱさに何とも言えない高揚感を覚えます。
思い出の場所を浮かべてはしばし思いに耽る二人。そこに何やら外から漂ってくる夏の香りがありました。
それは二人で紡いだ冬の花火の記憶。
季節感は真逆なのに、かえって花火というスパイスで懐かしさがくすぐられる感覚。
なんだか新鮮でとても印象的なシーンとして残りました。
香りが残す記憶の力は思いのほか大きいですよね。
これはほんの一部ですが、経験的に知っている無意識の描写が行間に込められていて、じんわりと味わい深い特徴がこの小説に込められた醍醐味と言えると思います。
リクが酔ってくれたら、またあの頃に戻れると思いを馳せる原田。
追憶の花火の香りも漂ってきて美化されていく季節の思い出。
夏の季節は終わるけれど、二人の心の夏はまだ終わらない。
花火の灯はいつか消えるけれど、二人の気持ちの火は冷めやらない。
いつの日か二人で描く消えない花火を、めぐりゆく季節から願いたくなる素敵な物語です。
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