第48話

 目が覚めると、隣にレイはいなかった。


 昨日から私たちは良い雰囲気になって、レイの横で眠りについて、幸せな夢を見て…。


 だから隣にレイがいないのは無性に寂しく感じられた。

 

 私はすぐにリビングに向かう。


 「おはようございます。レイ様。」


 扉を開くと、キッチンにはちゃんとレイ様のサラダも姿があった。


 「おはよう、ティア。」


 彼は朝食を作っていたようで私の好きなフレンチトーストが出来上がっている。


 「わあ!ありがとう!」


 彼も得意げな表情を浮かべると、手際よく野菜を切っていく。サラダも出来上がりそうだ。


 私はカップに紅茶を注いでテーブルに運び椅子に腰かけた。。


 「よし。もうできるぞ。」


 そう言ってレイ様も席に着き、私たちは朝食を取ろうとした。


 私の正面にはレイ様が座っていて、顔を上げると目が合う。照れたようにレイ様が笑い、私もフォークを手に取ろうとした。


 その時だった。


 窓ガラスに弾薬が投げつけられ、大きな衝撃と耳をつんざくような高音が鳴り響いた。


 「レイ様!」


 私は彼をかばうように状態を下げて地面にはうような体制を取った。


 まずい。敵が侵入してきた。それに耳もやられてしまった。


 「いたいた。ビンゴだな。」

 「久しぶりだな!」

 「俺たちのこと覚えているか?」


 そう言って体格の良い男性が3人入ってくる。ショッピングモールの時のあいつらだった。


「レイ様。二階のベランダから脱出してください。」


 私は彼を立ち上がらせ、部屋の外に追いやろうとした。


 すると、玄関の方からも敵がやってきた。


 まずい。囲まれた…。

 玄関口から敵が4人、つまり合計7人か…。


 玄関からの脱出よりも、破壊された窓から脱出した方が早く外に出られる。つまり優先すべきはあの3人組…。


 私は3人との間合いを詰め、敵を避けながら蹴りを決めた。


 「ハッ!」


 とりあえず一人には当たった。


 もう一人は右手を私に向け呪文を唱えようとする。

そういえばこいつら全員魔法をつかえるんだっけ。


 「デフェンデール!」


 私はとっさに防御魔法で身を守った。


 記憶が戻ったから、私も魔法を使えるんだ!


 ここで私はある作戦を思い付く。


 私の父が使っていた転送魔法「テレメタフォラール」は私も使える。つまりこれでレイ様を転送させれば、彼は助かるかもしれない。


 きっともう二度とレイ様には会えなくなるだろう。しかし、命だけは十分に助かる可能性がある。


 それに、何があっても彼を守るのが私の仕事だ。


 私は覚悟を決め手右手をレイ様に向かって掲げた。


 転送先は私が送られたのと同じあの森にしよう。あそこなら、森を抜けた先をレイ様も知っている。私とレイ様が出会った場所だもの。


 一瞬、レイ様と目が合った。


 きっと、どこにいても私たちは再会できる。


 迷うことなく私は言い放った。


 「テレメタフォラールッ!」

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