第5話

「ティア様。レイ様が部屋でお待ちです。」 


 部屋でのんびり過ごそうかと思っていたのに…。ブラインに呼び出され私はレイ様の部屋へ向かった。 

 

「失礼します。」 


 扉をノックし、部屋に入るとレイは本を読みながらソファーに寝転がっていた。 


「ここでの生活に不満はあるか?」 


 レイ様はそう尋ねてきた。 


不満か。まだ到着して数時間しか経っていないが…。唯一不満があるとすれば、お前の性格だよと言いたくなる。

 

「特にございません。」 


私は深々とお辞儀をする。 


「そうか?とりあえず明日、一緒に王都へ買い物にでも行こう。その時に欲しい物は揃えればよい。」 


 今、欲しい物はないと言ったばかりだろう…!こいつは言葉が通じないのか?

 

 「私は、特になにも…。」 


何もいりませんと言おうとしたのだが、その言葉は遮られた。 

 

「そうか?少なからず、俺は不満だ。その服は屋敷から支給されているものか?」 


 私は「はい」と頷いた。ここに到着した時にブラインから屋敷の侍女たちと同じ服を渡された。お嬢様系のワンピースなのだが、動きやすいし丈は丁度良いので悪くはない。 


「その辺の侍女と同じ服は俺が許さない。もっと良い服を買いに行くぞ。」 


 ほう。こいつは私をプロデュースしたいのか。 


「お心遣いはありがたいのですが、私はあくまでボディーガードです。なにも、あなた様から良くしてもらう理由などありません。」


 私はハキハキと伝えた。そもそも服に興味が無い! 

 

「馬鹿か。ボディーガードは口先だけの理由だ。最初からそんなつもりはない。」 


 じゃあ、なんでこの屋敷に呼んだんだよ。わけのわからない事を言うレイ様に心底イライラする。 


「とにかく、明日は王都へ出かける。いいな?」


「かしこまりました。」 


私は頷いた。ボディーガードは、出先について行く約束なので断ることができないのだ。 


  

 部屋に戻ってから私は気が付いた。王都に出かけるということは、私は彼を警護しなければならない。 


 彼の命は常に狙われているということは…。同時に私の命も狙われる…!  

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