第80話 親友

 あれから少し時が経ち、遺跡のけっこう中まで入っていた。

 エレーヌが中心となり、照明魔法で辺りを照らしている。


「それにしても、何かおかしいですね。敵が一人もいません」

「本当に誰もいないのか? そんなはずがない。確かに足跡があったはずだ」


「しかし、間違いは無いはず・・・ です」


 先ほどロイクが探知魔法を使い、遺跡の構造を把握、そして敵の有無を確認した。

 しかし、敵は一匹たりともかからない。


 ――前に来た時は、ガーディアンが居たはずだが・・・

 


「・・・だけど、完璧には消しきれてないようだね~」

「ああ、私も同意見だ」


 ロイクとミゲルが辺りを見回しながらそう言った。


「え? どういうことだ?」

「・・・戦った形跡があるということさ」


「まさか、あのガーディアンたちは全滅でもしたというのか?」

「恐らくね。多分ここは、黒き魔獣によって支配されている」


「じゃあなんで敵がいないんだ・・・?」

「さあ、僕にも分からないよ。今回は、相手の誘いに乗ろうじゃないか~ フッフフ~ン~」


 (・・・陽気だな。まあ、いつものあいつというか)

 


「お? なんか大きな空間があるぜ。ここが中心部じゃねえか?」

「・・・うん。どうやらそのようだ」


 レイドたちがたどり着いたのは、当初、エレーヌとレイドが遺跡に落ちてきた場所、まさにその場所であった。


「レイド、私は反射魔術の研究をしていたと言ってたな。なぜ、ここがそうか分かるかね?」

「・・・確かに、理由を聞いていませんでしたね」


「レイド君、英雄ジャン・コレルについて知っているかね?」

「はい。この前、エレーヌと演目を」


「ハーン? エレーヌと? そんなことがあったのかー」

「静かにしてくれ、カイン」


「はいはい、わかったよ」



「ジャンにミアっていう妻が居ただろう。これは、そのミアの墓だ」

「だから、どうしたって言うんだい?」


 ロイクがそう質問した。 


「ミアって言うのは、ジャンと結婚した人なんだ。その人がこのインテグリ―を作ったとされている」

「・・・なるほどね~ その剣、魔法を反射しちゃうし」


「ミアは、戦いのさなかに死んでしまうんですよ。痛ましいことです」

「エレーヌ君、それは違うのだよ」


「・・・え? そうなんですか?」



 

「あれは、綺麗に話をまとめる為に作った嘘だ。実は、彼女はジャンによって・・・ 殺されている」

「・・・はぁ!? なぜ、、、」


 エレーヌは何か言い始めようとしたが、自然と止まってしまう。


「・・・エレーヌ、分かるかい?」

「はい。敵・・・ ですね」


「どうやら、話はまた後になるな」


 ロイクが剣を抜いたことにより、全員が臨戦態勢に移る。


「・・・こちらに急接近してきます。人型です!!」

「っっ!」


 ――すると、前から何かが、現れたことが分かった。


 

「・・・皆さん、お集りのようで・・・ どうされたんでしょうかぁ?」

「君は・・・ ロマンか」


「お久しぶりです!! ミゲル教頭! あの時は、どうも。ありがとうございました」


 現れたのは、ロマンだった。

 話し方も、服装も、色々と前とは違う。


「・・・あれがロマンなのか? 話し方が全然違うじゃないか」

「お? これはこれは、レイド君もいらっしゃるのですかぁ・・・ 好都合なことですねぇ」


「ロマン、聞きたい質問はこれだけだ。君が黒幕ってことで良いのかな?」

「・・・そうですねぇ。私の名は、ロマン・ベレーター! 人類を正しい道に導く、救世主ですっ!!!」


 ロマンは大きく腕を上げ、そう宣言した。


「はっ、救世主? 笑わせてくれるね~」

「まぁ、劣等種に理解など求めていませんし。貴方たちをこれから殺す・・・ だけですしねぇ」


「はっ、たかが一人で僕たちを倒せると思わないでね~」

「一人・・・ 一人ですか。ククク・・・ やっぱり鈍いですねぇ」


(!? まさか・・・!)


「おい! ロベルト! 居るんだろう! 出て来い!」

「・・・ロベルト? こんなところにいるわけ・・・」





「・・・すまない。こっそり後を付けていた」

「なっ・・・ 認識、阻害魔法ですか・・・」


 ロベルト、レシティアが背後から現れた。


「・・・これは誤算だね~ ロベルト単体だったら、認識阻害魔法なんてできないはずだったから、油断してたよ」

「ちょっと、なんで敵意を向けられているわけ? ロベルト何かしたの?」


「レシティア! 今すぐロベルトから離れるんだ!!」

「・・・え? どういうことよ」


「あいつは裏切っている! あっち側だ!」

「・・・何を勘違いしているんだ。俺は裏切ってなどいない!」


「嘘をつくな!」


 しかし、ロベルトは依然として堂々と立っている。

 レシティアやエレーヌ、ミゲルは混乱している様子だ。


「ククク・・・ 滑稽滑稽」


 ロマンはこんな感じだ。


 ――何が面白いんだよ・・・

 レイドがそう思った矢先だった。


「なあ・・・ レイド、ロベルトが裏切ってるって、ほんとか?」

「ああ、今まで黙ってたが、そうだ」


「だから、俺は裏切ってなどいない!」

「もう、どうなっているのよ!」


「どうするよ?」

「・・・二人を相手するしかないな」


 カインは一歩一歩、レイドに近づいている。


「・・・! おい、レイド!」

「黙れ! 裏切り者の話など聞くつもりは無い!」





「なぁ・・・ レイド。こんなに面白いことって、あるか?」 

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