第3話 あ、雪降ってる
「うわー……汚ねえ」
電灯を点けて、第一声がそれだった。
物が散乱した自室の様子はお世辞にも綺麗とは言えない。床を見ればうっすらと
「まあ明日から連休という嬉しさに比べたら、どうというものではない」
気を取り直して身支度を整える。
「まだ寒い……」
電源を入れて間もないからか十分な暖気は感じられない。よって温かくなるまでSNSをチェックして気を紛らわせることにした。
「あーあー、皆さんまあ楽しそうなイブを
知人らの投稿を眺めていたらむなしい気分になる。まるで「しょうもないイブを送っているのはお前だけだ」と突きつけられているかのようで、つい憎まれ口を叩いてしまった。
「ああ……寒い寒い。ただでさえ安月給なのに心まで
そして、しきりに「寒い、辛い」と繰り返し
そのようにひねくれ精神を発揮して延々とボヤいていたならば、ふと、玄関へと意識を向けてしまう。
──でもあの娘は俺よりずっと寒い中に座り続けているんだよなぁ。
「いや……何を考えてるんだ。駄目だ。ラブコメの主人公にでもなったつもりか? 俺にできる精一杯はもうやった。これ以上はダメ、絶対」
ふいに湧いて起こった考えを必死になって否定する。
頭の中に降って湧いたイメージ。それは──外にいるギャルを部屋に招いて一緒にクリスマスケーキを切り分ける、という妄想だった。
いや、それは駄目だろう。
「勘違いをするな、人恋しさのあまり気が狂ったか? 自分の年齢を考えろ、よし、大丈夫、俺は冷静だ、確かにあの娘は可哀想だが、大学生だ、自己責任の
まるでお
これがせめて相手が男子大学生であれば、ここまで悩むことはなかっただろう。アウトドア用品でも貸してやり、勝手に火起こしでもしていろと申しつけるだけで良いのだから。ああ、どうして相手がギャルなのか、ままならないものである。
「──って、そうか……それでいいじゃん」
ふと思いついた。
ギャルを部屋に招き入れることは問題があるがしかし、屋外でも暖をとる方法はあるはずだった。幸いにも趣味でキャンプ道具一式は持っている。
「あ、雪降ってる」
窓の外を見ると、チラチラと舞い散る白い影が見えた。つまり今年はホワイトクリスマスになったということだろう。世の大多数の人間にとっては喜ばしいことかもしれないが、玄関前のギャルのことを思えば、
「雪が降ってきたから心配になった……って言い分にしておくか」
そうすれば世間にも言い訳がたつ。
いったい誰に対する
──
──
「あのー……寒くない? 上着とか貸そうか」
「ぐ、ぐださ〜い……このままだと、さむじぬっ」
悩んだ割には、やけにあっさりとした返事があった。
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