第9話 父と母

「ふわぁ…おはようお父様。」

「おはよう。今は王都の検問所の前だよ。これから検問所で確認を済ませてからなかに入るところさ。まだ寝てて大丈夫だよ。」

「もう大丈夫。寝たからそんなに疲れてるわけでもないし、特に不調もないから。」

「そうか?それなら良いけど…あっ母さんの事を起こしておいてくれ。衛兵との確認があるから、私は外に出ないといけないんだ。頼めるかい?」

「もちろんです‼私に任せてください‼」

「いい返事だ。それじゃあ頼んだよ。もし何かあればリーナにでも言ってくれ。」


私は寝起きで閉じかかっているまぶたをこすりながら、母の事をゆすった。


「起きてくださいお母様。もう王都についてしまいましたよ。」

「ん…ふわぁ…おはよう。もう王都についちゃったの?」

「そうみたいです。お父様は衛兵との確認に行きました。」

「わかったわ。眠ったお陰で気分は良くなったわね。」


母の事を起こしてから数分が経ち…父が帰ってきた。


「おはよう。衛兵との確認も終わったからもう入れるぞ。」

「わかったわ。リーナ大丈夫だった?私の事を起こしてくれても大丈夫だったのに…体調悪そうよ?」

「大丈夫ですよ。私なりに体調管理はしていますから。それよりも奥様の体調の方が心配です。私と違って直接参加するんですから、体調は整えておかないと…」

「そう言ってくれるのは嬉しいんだけどね。ありがとう。」


リーナと母はまた話をしている。

私は心の何処かで少し嫉妬しながらも、その光景を眺めていた。


そして確認が終わったことを証明するかのように馬車はすぐに動き始めた。

御者の人と衛兵でつい数分前まで何か話をしていたし、もう少し遅れると思っていたのだがどうやらそうでもなかったようだ。


私達を乗せた馬車はそのまま表の通りを走り、ついに中央にそびえ立っている城をまじまじと見つめることが出来るくらいの距離にまでやってきた。


城は遠くから見ていたときよりも遥かに大きく感じた。


「うわぁ…思ってたよりも大きいのね。」

「だろう?王城を中心として色々と活躍しているからな。どちらにせよこのくらい大きくないと中に様々な機関を内蔵できないからな。」

「へぇ〜そんなに沢山の機関があるの?」

「ん〜まぁこれ以上は難しい話になるから、今度話をしよう。さて…ようやく貴族街だな。」


馬車は比較的整備されている道を走り出した。先程までとは打って変わってほとんど揺れがないことに私は驚いた。


「ねぇお父様。急に揺れが収まったけど…どうして?」

「それはね、貴族街に入ったからだ。最近は貴族街の前…まぁ一応首都に当たる街も整備が進んできてはいるが、完全というわけじゃない。道も完成しているわけじゃないしな。ただ貴族街はもう道が整備されているんだ。」

「へぇ〜ちなみにうちの領地はどうなの?」

「私の領地内の道は基本的に整備を終えているよ。私の領地では作物を含め、沢山の特産品を出せるからね。必然的に商人も多くなるのさ。商人にとって、馬車っていうのは自分の足のようなものだ。整備されていればそれだけ印象も良くなる。まぁこんなところかな。」


私は父の言葉を聞いて、そう言えば領地内では比較的揺れていなかった事を思い出した。とはいえ…まだ領地の外は整備が進んでいなかったけど。


「確かに…あの揺れを長時間ですもんね。となれば…今後も道の整備はするんですか?」

「そうだね。まぁ無理のない範囲で進めていく予定さ。」


雑談を交わしている間も馬車は進んでいった。何分か経った頃…窓の外を見ていたリーナが急に話しかけてきた。


「見えますかお嬢様。あそこにある屋敷が当家が今日の間利用する場所です。」

「う〜ん…二回りくらい小さい?」

「まぁしょうがないですね。王都と領地で往復することがあると考えればあれでも十分なくらいです。」

「リーナの言うとおりだ。っと…到着したようだ。先に中には逝っていていいよ。リーナ娘のことを頼んだよ。」

「お任せください‼私がお嬢様の事を命に変えても守りますから‼」

「別に命までは張らなくて良いんだけどなぁ…そう言ってくれると嬉しいよ。」


減速し、屋敷の前で馬車は止まった。

父いわく私達はパーティーが始まる1時間前までここを使うようだ。

あまり長く滞在するわけじゃないけど、普段から手入れされているようでホコリもほとんどない。


それに…ここにはなんと魔法の訓練が出来る場所があるそうだ。

私は少し興奮しながらも、彼を探した。


「ゼノン‼私の魔法の練習に付き合って‼」

「…分かりました。ですが少々お待ちください。私もやることをやらなければいけませんので。20分ほどしたらそちらに向かいます。」

「わかったわ‼なるべく早く来てね‼」


彼は出発する前のときとは違ってちゃんとした言葉使いになっていた。なんだかあっちの方が親しみやすかったような気がする。


私にもあんな風な言葉遣いになってくれてもいいのに…やっぱりそういうものなのかしら?









こんにちは!!

一応ご報告を。新作はいつもみたく長くならない…はずですので、是非みていってくれると嬉しいです!!

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