本作は、美大生の宮村亜樹さんが、大正時代に生きた日本画家の人生を追体験し、彼の最後の裸婦像に関する真実を知る、というお話です。
ん?
宮村亜樹?
と、金星たぬき様の作品をいくつか読んだ方はなるはず。代表作『紺野さんとあきちゃん』のある種の続編です。こちらも良いので、ぜひ(勝手に宣伝するなですね。すみません)。
さて、本作は美大の3年生となった亜樹さんが課題のため日本画家 長谷浦城隍の研究をしている、というところからスタートするのですが、不思議なことにふと気が付くと長谷浦 城隍として目を覚ましたわけです。異世界転生もので、誰かに憑依したりするので、「え、亜樹さん死んじゃった!?」となりかねないですが、亡くなってはいません。
本作のメインは、出だしで述べたように、亜樹さんによる日本画家——長谷浦 城隍の人生の追体験です。
物語の視点は三人称視点なのですが、地の文を綴っているのは作者様ではなく、亜樹さん(いや、作者様なのですが……何を言ってるのか、ぜひご確認ください)。一人称も織り混ざった三人称視点……実況中継に近いですが、とても自然に混ざっているので実況中継的な喧しさは無い。自分も似たようなことをやっているので分かるのですが、実はこれ、自然にやるのかなり難しい。作者様のバランス力の高さが伺えます。
視点の話からしてしまったので、「そこしか褒めるところ無いのか?」となりかねないですが、違いますのでご安心を。他のレビュー者が触れていなかったので先に触れただけです。
物語自体ももちろん魅力的で、亜樹さんを通して、様々な女性を描く長谷浦 城隍の情熱をありありと感じます。そこに性欲は無く、美しいものを描き出すが画家の執念。描かれる女性たちの思い、そして「最後の裸婦像」として描かれた「しのぶ」との知られざる秘話。
他の裸婦像と異なり、なぜ最後の裸婦像だけ個人名を明記したのか。
読み手は大正時代のレトロな情景とともに綴られる物語を、亜樹さんと一緒に覗き見ているような感覚に陥ります。
お勧めです。
未読の方はぜひ亜樹さんと一緒に大正時代に生きた画家の人生を追体験し、最後の裸婦像に関する真実を探ってみてください。
長谷浦城隍の裸婦像「しのぶ」。
「しのぶ」とは一体城隍にとって、どのような人物だったのか?
現代の美大生・亜樹は、大正時代の城隍の体へと入り、彼の人生を追体験していた。
意識の内側から過去を見届けるだけで、決して干渉はできない。
この時代の城隍は、まだ本名の幾三郎を名乗っており、彼の「美を描き残す」ことへの執念はすさまじかった。
女性を抱くことはあっても、目的はあくまでも裸婦像――「美」である。
モデルはモデル、恋愛感情は存在せず、冷徹に「美」のみを追求する。
そして、遂に「しのぶ」に会う。
彼女は兄・郁二郎の妻となる女性。幾三郎の彼女に対する想いは特別で……。
はたして、「しのぶ」を最後に封印される裸婦画には、どのような真実があったのか?
あなたも、長谷浦城隍を追体験してみてください。