第57話「意外な再開」

「待ってくれ。俺は敵じゃない……ってリィドじゃなないか」

「……」


 こちらの名前を知っているということは敵でない可能性が高そうだ。


「おい、前に遺跡で一緒に探検した仲じゃねーか。横取りしたように勘違いさせたなら、謝るからよ、剣は下ろしてくれ」

「あ、ああ」


 言われて思い出した。


「ナルスだよナルス」


 そんな名前だった気がする。


「どうしてこんなとこに?」


 リィドも剣をしまう。


「もちろん、探索さ。俺が一番乗りだと思ったのにな」

「そうだ、前に俺の仲間でセツナって覚えてるか?」

「ああ。黒髪の姉ちゃんだろ?前に見たな」

「な、どこでだ?」

「ん?」


 ナルスは首を傾げる。


「数日前にアンシャイ商会の連中と話してるの見たぞ」

「助かる」 


 貴重な情報だ。


「なぁ、あれ譲ってくれないか?」

「ん?」


 ナルスの指の先には謎の小箱が置いてあった。

 いつのまに出たのかリィドには認知できなかった。


「倒したからか?……別にそれく、あ」


 売ればもしかしたら高額な値になるかもしれないが、物自体には一切興味がない。


「譲ってもいいが、交換条件ってのはどうだ?」

「もちろん、内容によるが感謝する」

「こちらかの要望は二つ。実は俺たち四人でこの遺跡来てたんだが、三階の魔術式でバラバラになったんだ。仲間を探すのを手伝って欲しい。後は三階まで戻れるよう案内して欲しい」

「それくらいならお安い御用だ。取引成立だな」


 ナルスによるとここは六階だそうだ。

 ナルスは三階か直接ではなく、四階で五階への移動経路を見つけ、五階を探索し終え六階にきた。

 お宝の匂いのする部屋を見つけたが、罠があるので後回しに他の箇所を探索していた。

 戻ってきたら罠が消えていたので入ってみたらリィドと遭遇した。

 探索済みなので進行速度が速い。


「左に行こう。右は俺が行って戻ってきた道だ」


 しばらくすると、ナルスが突如横に飛ぶ。


「うぉ」


 リィドの体に衝撃が走る。


「見つけた」

「フェイシス、無事で良かった……」


 リィドはフェイシスの頭を撫でる。

 フェイシスが飛びついてきただけ。

 慣れているリィドだから無事であるが、それなりの速度があるため場合によっては怪我する恐れがある。


「リィドと……遺跡の人」

「ナ・ル・スだ。俺名乗ってたよな?」


 誰も彼も名前を覚えていないのでナルスは肩を落とす。


「フェイシス一人か?」

「うん、。リィドとなーちゃんはどうして?」


 リィドは経緯を説明した。


「なーちゃん。ありがとう」

「いいってことよ。正当な取引だからな」


 ナルスを先頭にリィド、フェイシスと続く。


「リィド、フェイシス。それに……ナルス殿」


 暫くするとエリルとも合流できた。


「なんだろうな。覚えてもらってただけなのに嬉しいのは」


 エリルにも同様な説明をし残りはミケだけになった。


「……ここはやばいぞ。引き返そう」


 ナルスは何かを感じ取ったようだ。

 汗が流れるのを見て冗談ではなく、本気度が伺えた。


「あ、みーちゃんの気配」

「お、おい」


 ナルスが止めようとしたがフェイシスはそのまま行ってしまった。


「リィド、みーちゃんいた」


 リィドはふと思い出した。

 ナルスと会った時はミケはいなかった。


「おい、悪魔だけど大丈夫なのか?」


 ナルスはミケの姿を見て怯える。


「よく分かったな。大丈夫だ。契約もしてる仲間だ」

「そ、そうか。なら大丈夫か」

「すまんな、またご主人は粉かけてるのか?」

「あのな……」 


 ミケのことは心配してなかったがいつも通りなのを見て安堵した。

 ミケにも説明した。


「帰りだが、三階に戻れるようなのは見つけてない。一階にしか戻れないがいいか?」

「むしろ助かる」


 ナルスに案内され魔術式がある部屋に辿りついた。


「これからどうするんだ?」


 リィドは約束通り、小箱をナルスに渡す。


「俺は七階への道を探すぜ」

「そうか。助かった」


 別れの挨拶を済ませ無事一階に戻った。

 そしてすぐに遺跡を後にした。


「エリルかミケ、アンシャイ商会て聞いたことあるか?」

「ないの」

「……すまん、覚えてる限りはなさそうだ」


 セツナがこの商会の人間と話しているのを見たということを伝えた。


「リィドどうする?商会の人間を探すのか?」

「いいや、家に帰る」

「一応理由を聞いてもいいか?」

「エリル、商会てのは全ての奴が全うとか限らない」

「それはそうだろうな」

「もし探るだけでやばい連中だったらどうする?」

「なるほど。了解した」


 馴染みのない国で行うのではなく、まず拠点近くで安全に情報を集める。


「ほう、やるではないかご主人」

「別に褒められることではないけどな」

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天から美少女が降ってきたので一緒に暮らす 紅羽夜 @2kuuya2

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