第9話:お菓子デート
絆川公園の休憩所にあるテーブルに響子が作ったカップケーキやクッキーなどの菓子が並び、ベンチに座っていた正義達はそれぞれ手に取り、食べていた。
「どう正義君、美味しくできたかな?」
クッキーを頬張った正義は寡黙ながらも、頷きながら、答える。
「甘くて、美味しい。上手くは言えないが、手作りはやはり美味しい。」
(なっ、何よ! 感想が下手くそじゃない! 私なら、食感がきめ細やかだとか、甘さが優しいだとか言いなさいよ!)
(いいだろう、別に! あいつは不器用ながらも、親切丁寧な褒め言葉を綴り出したんだぞ! テレビの食レポのような感想言ったら逆に困惑するから!)
(甘いわね! 私なら原稿三十枚の感想を響子の家に配送してるわよ!)
(重過ぎだろ、それ!?)
晶子と匠がひそひそと言い争う中、彼が言ったように響子は胸を撫で下ろしながら、喜んだ。
「ありがとう! 褒めてくれて! 他に手作りをしてくれる人がいるの?」
「ああ、うちのお袋が休日にいつも俺の為にお菓子を作ってくれるんだ。」
「正義君のお母さんも菓子作りが得意なんだ! 私の菓子作りはケーキ屋をやっているお父さんから教わったんです! 今は別居してるけど…」
「良いお父さんなんだな。うちの親父なんて、いつも仕事に構って、家を空けていて。お袋もその事でよく愚痴っていたな。」
仲良く談笑し合う二人を見た晶子はその仲睦まじさに嫉妬しながらも、響子を暖かく見守っていた
訳ではなく、響子が微笑みながら会話する姿をビデオカメラで撮影し、息を切らしながら、口から涎を垂らし、うっとりと見惚れていた。
(おい、風紀委員長。あんた、何、公衆の面前で何、変な視線を送ってくるんだ…それ、もしかして、ストーカー…)
(何言ってるのよ! これは響子の御姿を後世に残す立派な事業なのよ! その後、私は自宅で布教用と保存用と観賞用にダビングして、観賞用で深夜まで何十回も視聴して、響子エナジーを吸収するのよ!)
(やっぱ、ストーカーじゃねぇか! まごう事なき変態じゃねぇかぁ!)
(私はもう諦めたよ、ツッコむの。)
変態染み、否、完全に変態である晶子に物申す匠に美宇は何処か遠い目で達観した。
「なぁ、風紀委員長はいつも、ああして、響子をカメラに撮ってるのか?」
「晶子ちゃんのこと、私の幼い頃からの幼馴染だけど、カメラが趣味って言っていたから、別に大丈夫だと思うよ。」
「いや、変な表情をしているから、何かあるのではと…」
「晶子ちゃんに失礼だよ、正義君! 晶子ちゃんは確かに少し可笑しい所はあるけど、私が下着を盗まれた時も、可愛くて新しい下着を渡してくれるし、私の下校を後ろの物陰からいつも見守ってくれるし、お泊まりや旅行で一緒にお風呂に入った時、いつも身体を洗ってくれるし、そんな悪い人じゃないよ。」
「…そうか、疑って悪かったな。」
一抹の疑念を浮かぶ正義だったが、響子の信頼に満ちた信心に絆され、考えるのをやめた。
響子の持っていた鞄の中からラブるんが顔を出して、焦っても正義たちに気付かれないよう、小声で注意を喚起する。
(どうしたの、ラブるん?)
(響子、みんな! 気を付けるラブ、奴らがすぐそこまで来てるラブ!)
(奴らってまさか!? あの人たち!?)
すると、澄み渡った青空が怪しい色で曇り出し、公園中にポップで、ダークな
「この感じ、確か、"クローバーズカルテットマジェスピュア"が戦っている現場に感じた雰囲気なのか?」
「ああ、あれを見ろよ。
冷静に物怖じしない正義は匠の指差した方へ魔法少女であることを隠している少女たちと共に向くと、なんと、いつの間にか怪しい花々や生き物で飾り付けされた
"Welcome To Cendrillon Villainess"
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