第7話:崩れたお菓子
私はその女生徒の案内で校舎裏を案内されたけど、正義君は何処にもいなかった。
「あの…正義君が何処にもいないけど?」
「誰があいつを案内するって言ったのかしら?」
その女生徒、はニマニマと嘲笑いながら、私の鞄から正義君に渡す手作りお菓子を奪った。
「なっ、何をするんですか!? 返して下さい!」
「私は
私は女生徒、美紅さんにそう告白され、一瞬を固まって、驚いた。
「あんたも、あいつに救われたって言う口だろうけど、私もあいつに救われたのよ。」
「そっ、そうなんですか…、それより、それを返して…」
「私もあんたみたいにあいつに尽くそうとしたわ、デートに誘ったり、話そうとしたり、でも、駄目だった。全然、私の事を見なかったのよ。あいつは人助けがしたいだけの偽善者なのよ。」
そう言った美紅さんは私の手作りお菓子をわざと地面に落とし、その上、踏んづけた。
「いや、やめて!」
「そんなあいつにお菓子を渡しても駄目なのよ。感謝しなさい。人助けに自惚れる最低な男に渡らなかったことに。」
私は美紅さんの言葉が正しいかどうかなんて、分からなかった…けど
(目の前で困っている誰かを、人知れず死のうとする誰かを救わなければ、俺はきっと一生後悔する!)
(あいつは怖いんだ、誰かと関係を持つことで自分がその人を護れないことを。あいつは今、そういう危険な事をしている。)
「確かに正義君は貴方を傷付けたのかもしれません! けど、そんなの貴方の思い込みです! 正義君は不器用だけど、勇気のある人なんです!」
私は強くそう言い返した。すると、美紅さんは血相と目の色を鋭く変えて、引っ叩こうとする。
「生意気なのよ、この良い子ちゃんが!」
思わず、目を瞑った私だったが、痛みはいつまで経っても来ないので、恐る恐る目を開けると、そこには美紅さんの腕を掴む正義君がいた。
「なっ!?」
「せっ、正義君!?」
「匠から連絡を受けて、来てみた。お前とはいつもここでたわいも無い会話をしたのを思い出したが、どうやら、合ってたようだな。」
「はっ、離しなさいよ!」
美紅さんは正義君の腕を振り解き、息を切らしながら、間合いを取った。
彼はそんな彼女を申し訳なさそうに、気まずい表情を見せ、言葉を綴った。
「恨むなら俺だけにしてくれ、頼む…。」
「この偽善者…!」
美紅さんは踵を返し、その場を後にした後、正義君は私に駆け寄った。
「大丈夫か、心音さん? 怪我とかは?」
「無いよ、でも、手作りお菓子が…」
私は崩れた手作りお菓子の方に目線を向くと、それに気付いた正義君はそのお菓子を拾い、包装によって汚れなかった部分を食べ始める。
それを見た私はムッと憤り、彼を俯きながら、ポカポカと優しく叩いた。
「貴方には色々、言いたいことがあります。美紅さんとはちゃんと仲直りすること、お菓子はもっと早くに食べて欲しかったこと、そして…」
私は俯いた顔を上げ、目を見開き、こう言い放った。
「今度はちゃんとしたお菓子を挙げますので、今度の土曜日、絆川公園に来て下さい!」
「…はっ、はい。」
狼狽えた正義君の顔をまじまじと睨んだ私は帰宅した後、自分の態度に顔を赤くし、ベッドに埋もれた。
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