強く、気高き者⑦

 その後どうにか宿を発見、部屋を予約した如月。本来であればこの後はアルカレスト城へと足を運び、イベントを進める所なのだが、先程からカジノコールが鳴りやまない。収拾がつかず、他の客に迷惑が掛かっても困るので渋々、約束通りカジノへと出発した。

 「カジノっ、カジノ!カジノ!!」

2人の合唱に包まれながら宿を出る如月。

「なぁ、2人共、そんなにルナが余っている訳じゃないからちょっと遊んだら終わりだぞ。」

「はーい。」

「少し遊んだら帰るんだからな。」

「はーい。」

「約束だぞ。」

「はーい。」

絶対生返事だよなと、溜め息つきつつカジノへ向かうのだった。


 「うわぁ~、人がいっぱいいるね~。」

そんなに短期間、狭い感覚で感動していたら疲れてしまわないかと心配する如月を余所に、衰え知らずの元気を発揮するフィオ。一方のラビはと言うと、如月がルナとメダルを好感している最中、真剣な眼差しでゲームを選択していた。本気だ。気配が伝わってくる。真剣ではあるが、スロットや麻雀をラビは知らない。

「ラビ、メダル交換してきたぞ。どのゲームにするんだ?」

「うん、ブラックジャックにするぞ。」

やはりカードゲームの中から選んだようだ。

「ラビちゃん、私ブラックジャックって知らない。」

「大丈夫だ。ほれ、如月。説明してくれ。」

「はいはい・・・えっと、ラビはルールを知っているんだよな。」

「いや、知らんぞ。」

「・・・・・・何でブラックジャックを選んだんだ?」

「名前がなかなかカッコイイ。」

「左様でございますか。」

負けを覚悟した如月だった。


 「なるほど、21だな。理解した。」

「私も分かったよ。エースは1か11だね。」

ルールが単純とはいえ、2人の呑み込みが早いことに安堵する如月。ちょっと疲れてしまい、長々と説明を繰り返す体力が残っていなかった。とはいえ、交換したメダル500枚はすぐに無くなるだろう。そう思いつつも一応は景品交換所の看板を眺める。メダル1000枚で『特級薬草』、2000枚で『黒の指輪』、3000枚で『ルーンナイフ』、5000枚で『生命の石』。この辺までは如月も知っているアイテムだった。最上位の景品は50000枚で―、60000枚で―

「おい如月、訊いているのかっ。おい、如月ってば!」

ラビの何度目かの呼び掛けではっと我に帰る如月。驚き戸惑い、動揺していた。如月も訊いたことのない名前が記されていた。元万事屋で、かつ倉庫番をしていた如月の知らないアイテム。ありえない。

「早くメダルを渡すんだ。1ゲーム100枚からだと。」

「ああ、ごめんごめん。じゃあ、500枚あるから、2人でがんばってくれ。」

動悸の収まらない如月。何かがおかしかった。

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