完結のあとに
「死神のお仕事」という話を一旦閉じた。
過去に完結出来ずに放置され、長い月日を経てようやく話を閉じることが出来た。物語の特性上、いくらでも話は追加できるのだが、とりあえず閉じた。
この、「閉じた」時に、もの凄い内面の動きがあったの、で記録のために記しておこうと思う。
あとがきでも少し触れたのだが、りおまさんは過去に心理療法(精神分析)を仕事のトレーニングとして受けている。その時に「小説を書く」ことがなんであるか、という事を深掘りしたことがあった。結局本人の中では、自分自身の内面の『旅』をパラレルに表現したモノであると結論づけている。よくよく読んでみて分析してみると、まぁ無意識の部分がめちゃくちゃ書かれていて、『うわああああああ!』と叫ぶこと頻回。書いているときは全くそんな意識がないだけに、読み返して判明したときの衝撃ったらない。
さて、そんなトレーニングを受けていて、特に重要視されていたのは「エンディング」の取り扱いである。ここで下手をすると、今まで築き上げてきた何もかもが崩れて、その後の人生にも悪影響を及ぼすからだ。セラピストはセラピーの始まった瞬間からエンディングのことを考えて動く、それぐらいの重要ポイント。なぜなら、
エンディング、とは「喪失」であるからだ。
セラピーはいい。セラピストが隣にいるからこの衝撃を一人で抱えなくていい。だが日常生活においてそういうことは稀。そこでなんとかかんとか、その衝撃を和らげるために色々心理は働くわけである。そうやって我々はなんとか過ごしている。
ここで「完結」の話に戻ると
「完結」とは「喪失」なのである。
書き終えて、予約投稿を終えて、手放した!となった瞬間、達成感がまずやってきた。ウン年越しの未練が解消されたのだから。本題はこの達成感の後だ。
凄まじい虚無感に襲われた。
手元から無くなってしまった。心に大きな穴が空いた。その穴がやたらと黒い。
そんな感覚だった。
それもそうだ。書くのを再開してから徐々に感覚を取り戻し、最終回の辺りにはかなりのエネルギーを費やした。しかも初めから「自分自身を振り返り、分析するために書く」と決めていたものだ。それ故に自分自身のエネルギーを、仕事もそこそこに、こちらへかなりつぎ込んでいた。エネルギーの費やす先が無くなったのだ(仕事しろ)。
これがまた一日では収まらず、しばらく虚無感を抱えて生活した。
読み返してみたり、振り返ってみたりと過去を振り返ってばかり。もう完結した話は過去のものだとわかっていても、書いていたときの充実感を取り戻したくてモヤモヤしていた。なんなら新しいシリーズでも始めてやろうかと無茶をしでかそうとしたり。
ただ、自分で
「ああ、喪失に対する反応だわ。っていうか完結が喪失なの忘れてたわ……」
とメタ視点では理解していたので、多少は冷静になっていた部分もある。そこはトレーニングのおかげだろう。
思っていた以上に完結による喪失感が大きかったのには驚いた。それだけ愛着を持っていたということでもあるし、そもそも自分自身の今までを記したものでもある。つまり自分自身の一部を無くしたようなものだから、衝撃も大きかった。
この喪失体験を上手く乗り越えることが、次の話を作り出していくために必要なのだと思っている。終わらせて手放すことに耐えうることが出来るのなら、次の話も未完で終わることはないはず(ネタ切れは別かもしれないが)。
そんなことを思いながら、段々とフェードアウトしていく喪失感。しかし折角衝撃から立ち直ってきたときに、致命的なミスを発見した。結局また加筆せざるをえないという事態に。喪失感も去ってしまっていると、もう手放した話のテンションには戻りにくい。この加筆は大変な苦労だった。
今はもう落ち着いて、心の中でケリがついている。落ち着くのにかかった時間は約3週間ほどといったところか。やはりそれなりの衝撃だったことがわかる。こういった衝撃を和らげるためにも、「あとがき」という作者のまとめは必要だ。振り返り、手放すための緩衝材とでも言おうか。お世話になった作品に別れを告げるための儀式なのだろう。この喪失感は短編を書き終えた後ではあまり感じなかったので、やはり時間をかければかけるほど喪失感は大きいのかもしれない。
今後はそういった衝撃が来ると予測して、最終回を穏やかな気持ちで迎えられるように、心の準備を忘れずにしたいと思う。
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