【コラボ配信】国内最難関のCランクダンジョンに挑みます!【Dステージ・リライブ!】2

 昨日の下見でも通った針葉樹林を進んでいく。


 装備は俺が道中用、ヒバナはユニーク装備、ガーベラは基本装備。動きやすさ重視である。


 で、ウィンリーにも今回は身に着けているものがある。


〔ウィンリーちゃん荷物多くない?〕

〔実はずっと気になってた。<騎乗の鞍>も着けてないし〕


 コメントで指摘された通り、ウィンリーはかなり大きな荷物を背負っている。体の左右に布製の大きいトランクが二つずつぶら下がっているのだ。


 イメージ的には砂漠を移動する隊商キャラバンの荷運びラクダみたいな。

 トランクはすべてマジックポーチであり、中には見た目以上の量のアイテムが入っている。かなり頑丈に作られているがそのぶん重量もある。


「ウィンリーにはライブ用の機材を運んでもらっているんです。大きいマジックポーチでないと機材が入らなくて……」


『マジックポーチそのものも重いため、私が運搬役を任されています』


〔あー、そういうこと〕

〔雪姫ちゃんたちだけで全部準備するってなったらそらそうなるか。大変だな……〕


「なので今回の配信、ウィンリーの戦闘参加は控えめになると思います。うっかり機材を落としたり壊したりしたら大変ですから」


 今回のウィンリーは基本的に荷物を守ることが最重要任務となる。

 せっかくの初陣なので活躍を見せたいところではあるが、さすがに機材のほうが大事だ。


 ガーベラが肩をすくめて言った。


「ま、ウィンリーに関しては荷物がなくてもあんまり戦うところ見せられないと思うけど」


「あはは……」


〔?〕

〔なんかガーベラちゃんが気になること言ってる〕

〔機材を守る以外にウィンリーちゃんが戦わない理由がなんかあるってこと?〕


「えっとですね、それは――」


 どう説明したもんだろうか。

 俺が迷いながら口を開いたところで。


『グルゥウウ……』


 木々の陰からモンスターが現れた。

 白い狼型のモンスターだ。数は一体だが、サイズが大きい。

 具体的には十人乗りの車くらい。


「あーっ、“グロウウルフ”!」


「早速出たわね白わんこ! ワン転がしにしてくれるわ!」


 ヒバナとガーベラが好戦的な声を出す。


〔グロウウルフか〕

〔……でかくね?〕

〔時間経過で成長していくくせに、旭岳ダンジョンは過疎すぎてなかなか討伐されないからな……一応まだ最大サイズではないと思うけど……〕

〔原作で千冬がボコボコにされてましたね〕


 グロウウルフは珍しい成長型のモンスターだ。

 ダンジョンに発生した後、時間経過によって少しずつ強くなっていく。最悪の場合はBランクダンジョンの出現モンスター並みに強くなることもある。


 ……が、この個体はそこまでじゃないな。

 平均よりやや大きいくらいだろうか。


「たぁああああああっ!」


 ヒバナが<星炎のブーツ>の効果を使って宙を駆ける。爆炎の尾を引いて上を取り、先制のかかと落とし。


〔入った!〕

〔相変わらず機動力バケモンだな、ばなちゃん〕

〔でもあんま効いてないぞ!?〕

〔やっぱつえーなグロウウルフ……〕


『ガルァアアアアアアアアアア!』


「あれぇ!? 全然ダメージ入ってないんだけど!」


 即座に反撃の爪が振るわれ、ヒバナは驚きながら離脱。相性が悪いとかではなく、シンプルに能力値差が大きいんだろう。


 Cランクの攻略適性レベルは平均150程度。

 しかし俺もヒバナもレベル100にすら届かない。


 ユニーク装備やらスキルやらで誤魔化してきたが、いい加減それ込みでも苦しくなる頃合いなのだ。そもそも旭岳ダンジョンはCランクの中でも難易度が高いし。


 というわけで。

 今回から今まであまり使ってこなかったものを積極的に使っていく。


「聖神ラスティアよ、我に力を貸し与えたまえ。彼の者に猛き力を、【ストレングス】!」


 ガーベラがヒバナに対して力上昇の強化魔術を使う。


「ガーベラありがと! それじゃもう一回――たああああああっ!」


『ガグッ!?』


 ヒバナが再度グロウウルフに突撃、蹴り飛ばす。

 さっきは大したダメージが入らなかったのに、今回は爆発の威力込みでグロウウルフを数歩後退させた。


〔おっ〕

〔ダメージ入ってる!〕

〔ガーベラちゃんのバフ珍しくね?〕

〔自分にはちょいちょい使ってる気がする〕

〔冷静に考えたら神官クラスっぽいガーベラちゃん、普通に強化魔術も使えるんだよな。なんか頭から抜けてたな……〕


 ガーベラの強化魔術だ。


 【ストレングス】など単体に作用する強化バフ魔術は効果は高いが、一人ずつにしかかけられない。また同じ系統のバフは重ね掛けできない。

 それでも能力値で負けているモンスターとの戦いでは相当ありがたい武器だ。


 ……ちなみに今まであまり使ってなかったのは、使わなくても勝てたから。


 ガーベラが性格的に支援役に向いていないっていうのもあるが。


「すっごー! これならちゃんと戦えるよ!」


「ぬはははははーっ! 犬ごときが私の覇道を邪魔するなんて許されないのよ! おら媚びなさい! 腹をさらけ出して忠誠を誓ったら楽に始末してやるわ!」


 ドガンッ! ボゴッ! バゴン!


 ヒバナと自分にも【ストレングス】をかけたガーベラが、二人がかりでグロウウルフを攻め倒す。二人よりはるかに高い身体能力を持つ狼型モンスターは防戦一方だ。


〔グロウウルフぼっこぼこで草〕

〔耐久上がってないから一発でも食らったら危ないはずなんですけどねぇ……〕

〔挟んで殴り続ければそもそも反撃されないという脳筋理論〕

〔ガーベラちゃん、グロウウルフが媚びても助ける気なくて笑う〕


「グロウウルフは二人に任せていて大丈夫そうですね。いいタイミングなので、私はさっきし損ねた説明をしようと思います」


 俺は配信用ドローンに視線を向けた。


「実は今回、ボス戦までにもいくつか“サブクエスト”が設定されているんです」


〔サブクエスト?〕

〔どゆこと? 普通にダンジョン攻略するんじゃないの?〕


「基本的にはボス攻略からのライブ、と言うのが趣旨ですね。なのでサブクエストに関しては必須じゃありません。いくつかあるクエストの達成数に応じて、視聴者の皆さんにちょっとしたご褒美がある、という感じです」


 まあ長丁場のダンジョン配信だとダレるからな。

 Bursを交えた企画会議の時に、月音が出したアイデアが採用された結果である。


「具体的な内容はこんな感じですね」


 月音の遠隔操作によって配信画面にサブクエストが表示される。


――――――


・グロウウルフ討伐

・アイスゴーレム討伐

・サンダーバード撃退

・ウェンディゴ撃退


――――――


「これら四つのサブクエストをこなしながらボス攻略を目指す、というのが今回の配信の内容になります」


〔このラインナップめっちゃ見覚えある!〕

〔原作の空来山編で主人公コンビが戦った敵じゃない?〕


「せっかく『Dステージ!』の企画なので、ほたると千冬の道筋をなぞってみたいと思いまして。あくまでサブの目標なので、下二つは“撃退”と甘くしてありますが……」


 サンダーバードとウェンディゴは相当な強敵。


 この二体まで討伐必須とすると全滅のリスクがあり、配信がダレるかもしれないという大人の事情もあったりする。


〔これクリアしたらどうなるの?〕

〔ご褒美……雪姫ちゃんたちからご褒美……!?〕


「ふふ、まだ内緒です。無事ガーディアンボスを倒せたらお知らせしますね」


 さて、説明はこんなところだ。

 話し終えたのと同時、グロウウルフをボコボコにしていたヒバナとガーベラが声を上げた。


「勝ったー!」


「疲れたじゃないのまったく……タフすぎるわよこの犬」


 グロウウルフが倒れ、魔力ガスと化して消滅した。

 普段より多少時間はかかったが、それでも傷一つなく討伐できたようだ。

 二人がこっちに戻ってくる。


『さすがです、ヒバナ姉様、ガーベラ姉様』


「えへへー。でもガーベラと二人がかりじゃなかったら大変だったかも」


「ふん、もっと感謝していいわよ」


 ウィンリーとそんなやり取りをした後……


「「……」」


 何かを期待するように俺を見てくる二人。


「お疲れ様です、二人とも。任せてしまってすみませんでした」


「「………………(じーっ)」」


 え? 何? 何か期待されてる?

 まさか……


「二人とも、よく頑張りましたね(なでなで)」


「えっへへへへへぇ~」


「……まあ、感謝のしるしは必要よね。うん。別に私が望んだわけじゃないけど。別に」


 二人の頭を撫でたらヒバナはストレートに嬉しそうにし、ガーベラはそっぽを向いてぼそぼそと何か言い始める。なんとなくこれで合ってる気がした。


〔ガハッッ〕

〔かわ……かわ……〕

〔なんかフリスビー取ってきた時のわんちゃんを思い出した〕

〔ガーベラちゃんそっけない口調のわりに顔真っ赤でかわいい〕

〔このパーティ天使しかいないの? 可愛さで世界中を救うつもりなの?〕


 とにかく、初戦は快勝。


 月音の遠隔操作によって配信画面に表示されるサブクエストの文章が変更される。


――――――


達成:グロウウルフ討伐

未達成:アイスゴーレム討伐、サンダーバード撃退、ウェンディゴ撃退


――――――


 初戦からサブクエストの対象と遭遇できたのは運がよかったな。このままの調子でいきたいところだ。

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