「この学校で一番強い場所につれていってくれい」
転校初日、弊衣破帽に学ラン、高下駄という姿で現れた山下一郎が、案内役の天城へ放った要求です。
いや、“強い場所”って何だよ⁉
ところが天城は投げ出しません。
権限が強いのか、肉体的に強いのか――番長の言葉を真面目に分析し、筋道を立てて答えを導き出します。
なるほど、確かに正しい。
正しいのですが……その答え、本当に選んで大丈夫なのか⁉(笑)
本作の面白さは、話の通じない番長だけにあるのではありません。
何が起きても冷静に原因や対策を列挙する天城。何でも恋愛へ結びつける同級生。大切な先輩のためなら恐怖にも立ち向かう後輩。そして、あまりにも順応力の高い学校の大人たち。
誰ひとり同じ会話をしていないように見えるのに、物語だけは驚くほど勢いよく前へ進んでいきます。
さらに、読み進める途中で明らかになる、ある事実。
その瞬間、それまでの言葉や出来事が一斉に違う色を帯び始める――これは、まさに小説だからこそ味わえる仕掛けです。
やがて、すれ違っていた言葉は、本気の拳へ。
笑いに満ちた物語でありながら、間合いや重心まで伝わる勝負は熱く、誰かを守ろうとする勇気も、交わした約束を守る潔さも、決して冗談ではありません。
目の前の分かりやすいことを盛大に見落としているのに、その人の心の強さだけは見逃さない。
そんな番長だからこそ、この出会いは単なる騒動では終わらず、二人の間に生まれた不器用な敬意が、読後の胸に温かく残るのです。
はたして、この物語で最も「会話が通じていない」のは誰なのか。
一度会ったら忘れられない番長と、冷静で強く、どこまでも優しい案内役。
その桜色の大混戦を、ぜひ見届けてください!