第5話 そして、渡る

ドス…ドス…と地面を震わせる重い足音。

翌朝、最上組の精鋭たちは正門前に整列していた。全員、戦闘服に身を包み、目は血走っている。


山崎が一歩前に出て、低く響く声で命じた。

「ええかお前ら。向こうに着いたら──誰だろうと撃って、刺して、殺せ。殺しまくれ」

「銃弾は温存だ。ナイフで刺せるなら、刺し殺せ」


「うっす!」

一糸乱れぬ返事が揃い、殺気が空気を染めた。


牧本が口元を押さえ、抑えきれぬ高揚を漏らす。

「……いよいよですね」


「じゃあ行くべぇ」

殿様姿の最上が両手を広げ、目をカッと見開く。

「──繋がれ」


空間がうねり、光の輪が浮かび上がる。

おおお……! と組員たちが息を呑む。


「先陣は俺だ」

イザが無造作に拳銃をぶら下げ、迷いなくゲートをくぐった。


最上がにやりと笑い、叫ぶ。

「お前らも続けぇ!」


──次の瞬間。

賑わうエルフの商店街が目の前に広がった。香ばしいパンの匂いと笑い声が満ちるその中心で、最上は躊躇なくカチャリと銃を向ける。


「え……?」

女のエルフが驚きの声を上げた刹那──。


バァンッ!

銃声が商店街を裂く。女はその場に崩れ、赤い飛沫が最上の袴に散った。


「ははは……!」

最上はナイフを抜き、倒れた腹を何度も何度も突き刺す。

「やっぱ、生はええなぁ」


「きゃあああああああああああ!!!」

阿鼻叫喚の声が四方に響き渡り、エルフたちが一斉に逃げ出す。


「何してる!撃ちまくれ!」

山崎の号令で組員たちは我に返り、四方へ散って逃げる背中を撃ち抜いた。

バンッ、バンッ──血が石畳に線を描く。


「……刺してたら腹減ったなぁ」

最上の腹が鳴った。


牧本が笑みを浮かべ、古びたパスタ屋を指す。

「このパスタ屋はどうです?」


「おお、ええなぁ! よし行くぞ!」


血に濡れた靴音を響かせ、最上たちは悠然と店へと向かった。


──アルタイル城・王宮。


「ふぅん……人間が?」

王ガルルは玉座で顎に手を当てる。


「ハッ。人間たちが商店街で市民を虐殺した模様です!」

兵士が緊張の面持ちで報告する。


ガルルの目が細まり、冷ややかに命じた。

「騎士と兵士三十名を動員しろ。市民を守れ」


「かしこまりました!」

兵士は敬礼し、走り去った。

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