アイドレ、再始動!

「……はぁ、意味がわかんねぇ……ホントに……


 しかし、行くしかないよな……よし、起きろイド! いるんだろ!」


『アイドレ:モードオフ。オハヨウゴザイマス。イドです』


「イド! 起きて早速だがアイドレを発進させる! 大丈夫か!」




『大丈夫です。コンバット・オープン戦闘システム起動。戦闘モードへ移行します』




 ルプスが操縦桿を持ち上げた瞬間、アイドレの背から放たれた閃光は、その巨体を空に持ち上げ———、



『衝突します』

「構うか!」


 そのまま、スルーズの基地を突き破る形で、天空へと飛翔した。



「最後までコイツに頼るとはな……なぜこうもまたインチキみたいなものに……っ」


『正当なシステムです。インチキではありません』


「うるせぇ、俺にとっちゃ魔力も魔術も幻想、インチキなんだよ! こんなもん信じてたまるか!」


『しかし、魔女様の放たれた白魔術は見事な術式の構築で———、



 ……魔女様は、何処へ』


 イドのその言動に、ルプスは驚きを隠せていなかった。


 何故か?……それは、今まで淡々と話していたイドが、自らの会話をも中断してまで、その違和感に関して突っ込んだからだ。


「アイツは置いてきたよ」


『……何故?』


「ハナから信用してなかったからだ。

 もう、アレに頼らなくてもいい理由ができた。それだけの話だ。


 行くぞ、下の方でドンパチやり合ってる」


 


 ルプスの言う通り、下では何らかの機体が2勢力に分かれて戦い続けていた。

 その中にいたのは———、


「ヴェリ……レオンッ!」


 姿形は変わってはいた……ものの、はっきりとソレは分かる。

 そう、あのプレート……ヴェリタス、つまるところ、レオンの乗機のものだった。


『データ照合……一部一致。発展機の可能性あり。

 魔力機関波調照合……完全一致。


 間違いありません。かの機体は、ヴェリタス。姉妹機、ヴェリタス・レーゾンです』



「つまり、下にいる黒いラヴエル共は———」

『魔術世界製のサイドツーです』




 ルプスの中でようやく合点がいった。ここを襲っていたのは、本当に魔術世界だと。


 そして、奴らの狙いは———自分たち、アイドレと魔女だと言うことを。


「まだ気付かれてはいない、どうす———」

『危険察知、回避を!』


 ルプスがほんの一瞬目を逸らした、その瞬間。

 ヴェリタスの右腕に装備されていたライフルは、アイドレ向けて放たれていた。



「っとぉ!……バレてるってわけか、こっちは……!」

『敵機、感あり。来ます』



 瞬間、ヴェリタスはそのプレートを広げ、


「あのプレート……数が増している……?」


 一瞬にして、そのライフルを正面に向けた形で———、


「変形した?!」



 左右それぞれ6枚、計12枚のプレートを主翼とし、飛行機のような形に変形してみせた。



『接近———スピードの計算……間に合いません』

「ぐっ……っう!」



 次秒。針が1秒を刻む間に、ヴェリタスはアイドレの真横を通過し、おまけにアイドレの右腕を切断して持っていった。


「何だと……っ!」



『おやおや。これは奇遇だね、アイドレ。

 またもや君に会うことになるだなんて、僕は予想だにしてなかったよ』


 通信で流れてくるのは、安寧に満ちたレオンの声。

 がしかし、やはりしらばっくれている。そんなことルプスにはお見通しだと言うのに。


「二度と会いたくなかったぜ、テメェとは!

 やってくれるじゃねえか、なあっ!!!!」

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