騒がしい起床

◆◇◆◇◆◇◆◇


「———おばぁああああああああああっ!!!!」


『大声を立てるのはおやめください。気付かれる恐れがあります』


 ルプスが目覚めた。……それも、迫真の叫び声付きで。

 どういうことかと言えば、何か変化があったのだ。


「あ……ああ、何かあったか、イド」

『大声を立てるのはおやめください』


「分かった……で、何があったんだ」

『おやめください』


「ああ! 分かったから、何なんだよ」


『先程、機体の妙な衝撃を感知しました。恐らく、輸送中の機体が停止したものと思われます。いつ、本機が移動するか分かりま———』


 イドがそう発したその時、またもや機体に衝撃が走る。


『本機、掴まれました。サイドツーのマニュピレーターによるものかと思われます。


 交戦の形跡は恐らくなし、無事に輸送されたものと考えてよろしいでしょう』


「結局は相変わらず沈黙がベストか……」


 ルプスがその口を固く閉ざした瞬間、機体に大きな衝撃が走る。


『本機、固定されました。恐らく、外部はハンガー内であると思われます。……装甲が開かれる可能性があります』


「……こじ開けようと……魔女は……っ」


 ルプスが目をやった魔女は、未だに寝ていた。しかし寝ていようが寝ていなかろうが関係はない。その存在が露見する事、そのことが一番最悪な要素だった。


「ぐっ」


 ルプスは魔女が身につけていた無地のローブを取り、それを魔女の頭から被せた。


「裸になるが、お願いだから気にするなよ……!」


 ———コイツが見られることは、決して……



『本機が、外部からこじ開けようとされています。

 機体損傷を防ぐために、ユニットコンテナを開放しますか?』


「……ああ、やってくれ」


 ルプスの声と共に、ユニットコンテナの正面が、音を立てて開放される。




『男……?』


 外からそこに入ってきたのは、小銃と思しきものを備えた、2人の青年だった。その服装と言い、どうも西大陸出身ではなさそうである。


『ボス、1人の……と思われる男を見つけました! きっと恐らくパイロットです!』



 ルプスは昏睡などしていない。つまり寝たフリというわけだ。


『オハヨウゴザイマス』

『うぉっ?!』


 突如発されたイドの声に驚く2人。

 が、その隙こそルプスの好機。


『なっ?! 貴様っ、放せ……っ!』

 

 拳銃を片手に持ったルプス。

 反対の左腕で、1人の青年の首を絞め、


「っ!」

『ぎあっ?!』


 その隙に、もう1人の青年の腕を、拳銃で撃って負傷させた。


「1人」


 もう1人の青年は、腕の痛みが抑えられず、思わず倒れ掛かる。

 その間、ルプスが首を絞めた方の青年が反撃を試みるも、


「これでもう1人」

『っぐ!』


 その青年の手も、ルプスはしっかり拳銃で撃ち貫いた。


『っふ……ぅ』


 思わず青年は小銃を落としてしまう。ルプスはそれを足で払いのけ、直後に大声で叫んだ。



「おい、聞いてるか外のヤツら!


 テメェらの仲間の命は預かった! 殺してほしくなければ、この俺の言うことを聞け! 反応を待つ!」


 なんともルプスらしい方法だった。青年らは呆気なくも無力化され、今はこのザマだ。

 そして、返答は意外にもすぐだった。



『ええ、貴方の要望に返答しましょう。

 サレード・スリー、アーデルハイトよ』


「アーデルハイト…………っいや、人違いか、流石に……」


 

『要望には応えましょう。貴方がその子たちを殺さないのならば、ね』


「……マジか」


 意外にも、話はすんなり通ってしまった。

 そして、もう1つルプスは驚愕していたことがある。


『で、要望は何かしら?』


「要望は……いくつかある。

 まず、このアイドレの中にいる人間の安全を保証しろ」


 ———しかし、その驚愕していたことには、ルプスはあえて触れずに話を進めた。


『貴方はそれを保証してくれるのかしら?』


「……すまん、手に拳銃は撃ち込んだ」




『…………』


 

 微妙な空気が、両者を通して流れた。

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