増援

「なっ……?!」


 戦いは終わった。誰もがそう思っていた。

 がしかし、終わってはいない。

 ブレードが振り下ろされ、致命傷を負い、地に伏したKINGは———それでもまだ、生きていた。


「魔力の……共振……はっ?!」


 ———いや、生き延びていたのではない。

 その事実については、魔女が真っ先に気付いていた。


『魔力濃度上昇。魔力が集結しています。

 生体反応、1。———敵です』



「そうか……魔洞地脈で蘇ったか、ヤツはっ!」


「何だと……っ?!」



 ———がしかし、時既に遅し。

 ルプスが……アイドレが振り向いたそこには、KINGの巨体の影がそびえていた。


「っ……ああ……っ!」


『魔力共振、同調を開始。攻撃に注———』


 イドがそれを言い合える前に、アイドレは……吹き飛ばされた。




「あああああああっ!!!!」

『損傷甚大! 損傷甚大!……敵からの攻撃です!』


 ———そんなこと言われなくても分かっている。


 激しい衝撃に包まれ、ただ風に揺られていくアイドレ。

 何とも無惨な姿だったが、もはや魔女にもルプスにも、どうすることもできやしなかった。








『邪魔者は……消えた。

 ようやく、静かに食事が———』

















『そいつはどうかねえ、キングとやら』


 響き渡ったのは女の声。少女というほどの若々しさは感じず、ルプスと同じく、いくつもの死線を潜り抜けてきた者の声だった。



『———!』


 もちろん、KINGはすぐさまそれに反応する。……が、こちらも既に遅かった。


『とっておき、食らいな』


 一瞬のうちに、KINGの巨体に撃ち込まれた銃弾群。


 それらは、撃ち込まれたその瞬間に起爆し———、


『ぎょええええええっ!!!!』


 ……その体を、完全に焼き尽くしてしまった。




『……と。

 こちらサレード隊、サレード・スリー……目標の排除を確認。


 これより…………の探査、及び中間脈核の確保に移行する。



 ああ、それと———面白いものを見つけてねぇ。




 きっとアレは…………近頃暴れ回ってる、魔術世界の奴らの機体だろう。




 ……え?……ああ、大丈夫。きちんと鹵獲しておいたよ、パイロットも込みでね。



 そのまま、そっちに連れて帰る。中からどんな顔ぶれが出てくるか、楽しみだよ』

 



 



 


 ……こうして、何の変哲もなかったようなゴブリン掃討の依頼は、巨大ゴブリンの出現……新たな魔洞地脈の発見などのアクシデントを迎え、収束へと向かった。




 しかし、最悪のアクシデントはまだ裏に隠れている。


『サレード隊』。そう称された部隊に、アイドレ諸共……ルプスと魔女が連れ去られたこと。


 そして、もう1つ。










『こちら、ヴェリタス。


 ……ええ、アイドレの所在を確認。スルーズ領、ミュンスター基地へ運ばれるものと予想します。


 ……ええ、ええ。それがいいでしょう。寛大なお気遣い、感謝致します。



 はい、決行は2日後の朝にて。合流にも時間がかかりますので。


 ……では』



 そのアクシデントとは……最悪の敵に、見つかってしまったことである。

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