第6話 教室の景色

~ カナン ~


 教室の木の扉が開いた。

 

―― ここは孤児が来る所じゃないんだよ。

―― ぷっ、こんなこともわからないの? 学校辞めたら?


 無機質な無数の目から放たれる、ぎらぎらと鈍く輝く敵意に満ちた視線。

 戦場で斬るべき者達から向けられるものが、『友達』と呼ぶ同じ教室に座るから向けられる。


―― ここに入るお金をどうやって用意したのかな? あ、体を売ったの?

―― じゃあ俺が買ってるよ。ほら、拾え。


 投げ捨てられた硬貨が床に転がる。


―― 困るねえ。問題を起こされると。彼らは君と違って、ちゃんとした家の子供達なんだよ。


 目の前に敵がいる。

 朱雲雀あけひばりを置いてまで、何でボクはこんな所に来たんだろう。


―― 君を辞めさせろという声は大きいのだよ。だがね、私のものになるならいいようにしようじゃないか。


 心が濁っていき、父さんの顔さえぼやけた。

 どす黒い殺意に身を任せ、拳を握った。


「みなさん静粛に!!」


 っ、見えていた景色が切替わる。

 ボクを囲んでいた過去の景色が消え、ドロスィーちゃん副学院長先生が隣に見える。


「今日からみなさんのお友達になるカナンちゃんです!」


 ボクは見られている。

 第二魔法学院あそこと似た造りの場所で。


(「全員俺の敵じゃねえな。心配するなカナン。秒でボコボコにしてお前の舎弟にしてやるからよ」)

「いや大丈夫だからっ!! って、あ」


 ボクは見られていた。

 あの時とは違う目で。

 きょとんとした、呆気に取られた彼らは、敵じゃなかった。


(「がんばれカナン」)

(「ありがとうイフリート」)


 前に出る。

 お腹に力を込める。


「初めまして! 【カナン ソリティア】っていいます! よろしくお願いします!!」

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