第2話 木漏れ日のなかで
自分の作品の二次創作みたいなものです。
ただの自己満足。いろいろ書いていきたい。パロはいいぞパロは(`・ω・´)b
◇◆◇◆◇
王都での長閑な昼下がり。気持ちよさそうな木漏れ日に誘われて窓を開けると、ほんのり涼しくなった心地よい風が吹いてくる。
今日は珍しくトーマスさんたち各々の予定が重なってしまい、僕以外はみんな外に出掛けていた。イーサンさんに借りているこの大きな家で、何をして過ごそうか……。
「ん~、思い付かない……」
趣味が無いのも考えものだなと思いつつ、新しいメニューでも考えようかとキッチンに向かう。
久し振りの一人の時間。のんびり料理を作っていると、それは突然やって来た。
ドアノッカーの音に玄関を開けると、そこには困り顔のステラさんが。
「ユイトくぅ~ん……!」
「あれ? ステラさん、どうしたん、です、か……?」
珍しいなと思っていたら、その腕には小さな子どもの姿が。
「朝からずっと泣き止まなくってぇ~……」
「えぇ……? 朝からですか?」
「はぃ~……。リーダーたちがあやしても、お手上げでぇ……」
失礼だけど、リーダーのエイダンさんはまだ分かるとして、あやし上手なステラさんがここまで疲労しているのは珍しい。
「迷惑は承知でぇ、師匠たちに助けてもらえないかと思って来たんですぅ~……」
「なるほど……」
宿屋の女将さんたちも奮闘していたそうだけど、なかなか愚図りが治まらずにみんなで悪戦苦闘していたらしい。ダンジョン帰りも相まって、エイダンさんもマイルズさんもエレノアさんも力尽きていると……。
「でも今日はみんな出掛けてて……。僕以外、誰もいないんですよ……」
「えぇ~!? そ、そうなんですかぁ~……」
ステラさんは落胆の色を隠せていない。
その寝不足気味の顔を見ていたら、可哀そうになってしまう。
「ん~……。その子、よければ僕が預かりましょうか?」
「えっ!?」
「ハルトたちで一応、小さな子には慣れてますし……。それにステラさん、寝れてないみたいだし……」
「うぅ……。ゆ、ユイトくぅ~ん……!」
泣き出したステラさんに、よほど疲れていたんだろうなとその心労を察した。
グスグスと愚図るその小さな……、男の子……? 小柄なステラさんに抱っこされても、その腕の中にすっぽりとおさまっている。もしかしたらユウマよりも小さいかもしれない。
ふわふわと風に靡く柔らかそうな金髪に、後ろからでも分かるふっくらした頬。ステラさんの服を握り締めているその指は紅葉みたいに可愛らしい。
そこで僕の視線に気付いたのか、振り返ったその子と目が合った。
泣いたせいか目尻は真っ赤に腫れている。だけどその大きな瞳は涙の膜を張り、キラキラと輝いているように見えた。
「わぁ……! 可愛い……!」
その宝石みたいにキラキラした緑色に、思わず声が漏れてしまった。
その子はジッと僕を見つめている。
( ……ん? この子、どこかで……? )
緑色にキレイな黄色が混ざり、まるで瞳の中に
「こんにちは。僕はユイトっていうんだ。君のお名前は?」
目線を合わすように屈むと、ステラさんと僕を交互に見やり、少し恥ずかしそうに僕を見つめ返した。
「……あぇくしちゅ」
舌っ足らずなのか、幼いせいなのか。その幼い子特有の可愛らしい声に、自然と頬が緩んでしまう。
あぇくしちゅ、って言ってたけど、う~ん……? もしかして……?
「アレク……、シス?」
「ん!」
正解だったのか、満足そうに笑みを浮かべるアレクシスくん。僕と顔を見合わせると、また恥ずかしそうにステラさんにしがみ付く。
「ふふ、アレクシスくんって言うんだ? ステラさん、この子、アレクさんと同じ名前なんですね」
「はっ……!?」
「え? どうしたんですか?」
ステラさんはしがみ付くその子に困惑の表情を見せていたが、ハッと思い出したように眉を下げた。
「あぁ~……! 伝えるのすっかり忘れてましたぁ~……! この子、アレクさんですぅ~……」
「へ!? あ、アレク、さん……?」
「はぃ~……」
想像もしなかった答えに、僕が固まるのも無理はなかった。
( ふぅ……。どうしたもんかな…… )
あの後、ステラさんが仮眠する間だけこの子のお世話をする事になった。
歩いて帰るのも大変だろうと、数ある寝室の一つを貸し出しそこで一休みしてもらう。
そして現在、僕の腕の中にはユウマよりも小さなアレクさん。
こんな可愛らしい姿になってしまったのは、どうやらダンジョンギミック? というものが原因らしいんだけど……。
僕の服を掴み、キョロキョロと忙しなく家の中を観察している様子。王都に滞在中の間だけイーサンさんに借りている大きな家だけど、この子から見たらもっと大きく見えるんだろうな。
そんな事を考えながら抱っこしていると、ふとアレクさんと目が合った。
「……えへへぇ」
アレクさんは両目をパチパチと瞬くと、少し恥ずかしそうにはにかみ、僕の肩にぽすんと顔を埋める。そしてまたチラリと僕の顔を見て、恥ずかしそうに服に顔を埋めた。
「グゥッ……!!( か、可愛い…………ッ!! )」
思わず唸ってしまったけど、コレは仕方ない。その唸り声にビクリと体を強張らせて僕を見上げるアレクさん。
……いや、この姿だからアレクくんかな?
「……アレクくん」
「なぁに?」
こてんと首を傾げ、可愛く見上げるアレクくん。ふわふわした金髪のせいか、本物の天使みたいだ。
「お昼ご飯はもう食べた?」
「ん~ん、まだ……」
もうお昼の時刻は過ぎているんだけど、ステラさんも疲れてたからなぁ……。
「そっか! じゃあ僕と一緒に、ご飯食べよっか?」
「ん!」
嬉しそうに頷き、きゅっと僕に抱き着いてくる。
……うん。可愛くて思わず頬擦りしてしまった。
「ん~! おぃちぃ!」
「よかった! 慌てなくてもいいからね? ちゃんとよく噛んでごっくんするんだよ?」
「はぁ~ぃ!」
よほど気に入ったのか、アレクくんは頬いっぱいにオムライスを詰め込み、もきゅもきゅと小動物のように食べている。可愛いなぁと眺めていると、視線を感じたのかアレクくんが僕に向かってオムライスを掬ったスプーンを差し出した。
「あげる!」
「え? 全部アレクくんのだから、食べてもいいんだよ?」
「ん! あげる!」
小さなスプーンにはこんもりのったオムライス。
僕が一向に食べないのがお気に召さないのか、唇を尖らせその顔が見る見る間にくしゃりと歪んでいく。
「……いいの? アレクくんの減っちゃうよ?」
「いぃの!」
「……じゃあ、一口もらおうかな」
「ん!」
僕が口を開けると、嬉しそうにスプーンを差し出してくれる。
ふわふわの玉子に少し甘めのトマトソース。小さめに切った鶏肉と野菜の旨味が口いっぱいに広がっていく。
「おぃち?」
「うん! とっても美味しい!」
「……えへへ」
僕が食べたのを見届けると、アレクくんはまたもっくもっくと残りのオムライスを嬉しそうに頬張り始める。そしてまた僕にスプーンを差し出すが、「アレクくんのために作ったから、アレクくんにいっぱい食べてほしいな」とお願いすると、目を輝かせてにこにこ嬉しそうに残りを食べだした。
昼食を終え、アレクくんと一緒に庭に出て少し日向ぼっこをする事に。
テラスには柔らかな木漏れ日があたり、とても過ごしやすい。
無意識のうちに抱えていたアレクくんの背中をぽんぽんと優しくたたいていると、うつらうつらとしているのが目に入る。
「アレクくん、寝てもいいよ?」
「ん~……、ねなぃ……」
僕の肩にぽふんと頭を乗せながらも必死に眠気と戦っているが、とろんとした目元は隠せない。
くすりと笑うと、アレクくんは僕の服をぎゅっと握りしめた。
「……おにぃちゃん」
「どうしたの?」
優しく頭を撫でると、気持ちよさそうに目を細める。
「……どこにも、いかなぃ?」
「うん。アレクくんが起きるまで、ずっと一緒にいるよ」
「……ほんとぉ?」
「ほんと。だから安心してお昼寝しようね」
「……ん」
僕がそう言うと、安心したように体を預けてくる。
「……おにぃちゃん、しゅき……」
半分夢うつつなのか、小さな声でそう呟いた。
「……うん。僕も、アレクくんのこと、大好きだよ」
それを聞いて、嬉しそうにはにかんだ。
しばらくすると、すぅすぅと小さな寝息が聞こえてくる。
(……心配しなくても、ずっと一緒にいるよ)
孤児院で見せてもらった、身長を測った柱の傷。三歳の時の身長って、これくらいだったんだなぁ。そんなことを考えながら、小さな体を大事に抱え直す。
愛しい愛しい、たいせつな人。
写真のない世界で、彼の子どもの頃を見ることが出来るなんて、僕はなんて幸運なんだろう。
疲労困憊のステラさんたちには悪いけど、こればかりはどうしようもない。
優しく揺れる木漏れ日のなか、少しだけ汗をかいた額に、そっとくちづけを落とす。
たまらなく愛おしい気持ちが溢れてきて、この時間が少しでも長く続けばいいのになと思わずにはいられなかった。
*****
(……なんか、いい夢を見てた気がする……)
もそりと起きると、まだレティちゃんたちは夢の中。
みんなを起こさないように起き上がると、なぜだか分からないけれど心がポカポカしているような気がしていた。
(……覚えてないの、もったいないかも)
少し残念に思いながらも、僕はいつもより目覚めのよい朝を迎えた。
◇◆◇◆◇
「……なんか、すっげぇいい夢見てた気がする……」
アレクもたぶん同じ夢を見ている安定の夢オチです。
【ダンジョンギミック】とてもいいものですね(`・ω・´)b
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