第15話 アリスとヒヨコ


アリスは空を飛んでいました。

周りには数羽の鶏が一緒に飛んでくれていました。

やがて雲の上にある小さい島に降りました。

その島には、テントが一つ建っていました。

中を除くと、大きなヒヨコが寝ていました。

アリスその見るからにフワフワのお腹に顔埋めると、鼻がムズムズしてクシャミをして咳き込んでしまいました。

するとヒヨコが目を覚ましました。

そしてアリスを見て目を丸くし震えました。

「なっ! 何故君が僕の前に来るんだ」

アリスは、意味がわかりませんでした。

「知ってるぞ、君は卵と鳥が大好きな子だろ」

「ええ、卵と鳥さんのお肉は好きね」

「やっぱりそうか、だから僕はズーとヒヨコでいるんだ」

「なんで?」

「食べられない為さ」

「ヒヨコは確かに食べないわね」

アリスが、その後少し沈黙しているとヒヨコは叫ぶ様に言いました。

「さては、わかったぞー 君は卵や鶏、さらに、あの悪魔の製造方法のフォアグラにも飽きて、遂にヒヨコを食べようとしてるんだー この悪食ー」

「ヒヨコなんか食べる所無いわよ」

「本当に、そう思うかい」

「ええ、大きくしてからの方が得じゃない」

「なら、もう帰ってくれ、僕はズーとヒヨコだ、用は無いはずだ」

アリスはテントの外に出て、また飛ぼうと手をバタつかせるとさっきみたいにふわふわと飛べなくなっていました。

アリスは、とりあえず、その島の周りを散歩してみました。

でもその広さは、自分の家の庭と同じくらいで、すぐに終わってしまいました。

そしてお腹が減った気がしました。

アリスは、またテントに入り、ヒヨコを揺すり起こしました。

「なんだい、まだいたのかい、ちみは」

「私、お腹すいちゃった、あなた何か食べ物持ってる?」

「お腹空いたって、それは気のせいだよ」

「気のせいなの」

「そうさ、ここは無の世界だからね!」

「むの世界?」

「実現しない世界!」

「そうなんだ、これは夢ね」

なら、アリスは、飛べないならと、思い切って夢の世界から出る為に島から飛び降りました。

アリスは、両手と両足を広げ落下していきます。

やがて氷の地面が見えて来ました、その時コレは、ヒヨっとしてヒヨコのウソかもと思いました……ヒヨコだけに……


……… ………… ……

そう思うと、アリスは目の前に歪んだ水が見えました。

「冷たい」

それは氷袋でした。

やっぱり夢でした。

アリスは布団から出て一階のリビングに降りました。

「お母さーん」

「あら、アリス、熱下がった見たいね」

「うん、私しお腹空いたの」


お見舞いのフルーツとプリンでアリスは、お母さんにプリンアラモードを作ってもらいました。


 アリスは、その雲の様なクリームに囲まれたプリンを見て、夢の中の島とあの食べられたくないと言ってたヒヨコの事を思い出しました。


 そしてアリスは、そのプリンを、いつもよりゆっくり大事に味わって食べる事にしました。[終]

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

尊い国の住人達とアリス 仙 岳美 @ooyama1252takemi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ