最終話 青の歌

焼き鳥と、つい買ってしまったいくつかのビールの入ったビニール袋片手に帰る道。

頭上には月。

「お~じ~ちゃ~ん。」

「ファッ⁉」

いかんいかん、ネット語がつい。

「だれ、え、おい、川上洋子⁉」

佇む、アンニュイな女。女は浴衣姿。

「…ひょっとして、幽霊って姿、自由に変えられんのか?」

「そ。山、なにそれ、裸の大将のコスプレ?一応23歳だよね?」

「うるせいな。」

「今日、あの世?的なとこに行くの。決心がついたわ。夏の決心。

ちょっと最後に、またあなたたちの顔を見て回ってるの。」

「ほえ~。あ、そんなら、立華は無事だったか?」

「うん。けど、相変わらずトラブルに巻き込まれてるよ。」

「そっか。(あいつがそういう体質だったとは知らなんだ…)」

「今日、花火大会って知ってた?」

「あ、そっか。すっかり忘れてた。」

「この橋から見えるよ。もうじき始まるんじゃない?」

こだまするなんかのアナウンスの後。ドーン。打ち上がる花火。

「おお~。」

「きれいだね~。」

祭りの今日は、まるで街中の人間がどこかへいなくなってしまったかのように、

人の気配のしない街。橋の上。

「ちょっと大将、ビールちょうだいよ。」

「誰がおにぎりが好きだ。幽霊が飲めるわけないだろ。」

「飲めるの。」

「しゃあねぇなぁ…ほい。焼き鳥一本やるよ。あっ、ナンコツは食うなよ!」

「はいはい。」

「じゃ、乾杯。」

「おう。」

「かんぱ~い。」

花火が空中で散開する。吹き抜けるは夏の夜風。

「ぷは~っ。」

「なんだ、このビールのCMじみた光景は。」

「はは、っぽいぽい。」

「尺玉花火、実にきれいだな~。」

「じゃあね。」

「え?」

幽霊みたいな俺と、本当の幽霊の川上。

花火みたいに短く、儚い一生を終えた川上と、

永い永い、やがて来る「地獄」の約束された怠惰の人生を過ごす俺。

対照的だなぁ、っと思って横をふと見ると、

川上洋子はきれいさっぱり消えていた。

夜風だけが舞っていた。


夏八木小学校・久化19年度卒業生。

「脱落者」は以下の通り。

     ↓

「山田 輔」(中学二年生で脱落。)

「川上 洋子」(中学三年生で死亡。)

「長門 祐介」(高校一年生で脱落。)

「春田 杏子」(高校一年生で脱落。)


他30名、「成功」。




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