第2話 一石二鳥です。


「…ふぅ。

しっかし、いったい何人にヤられたんだか…。下腹部 押した時の音には我ながら引いたわ…。女の子が発して良い音じゃないぞ?」


小汚いオッさんの骸のそばで する事じゃなかったな。と、軽く反省しつつ これまでの事を考える。


「にしても、なんでこんな事に?

……あぁ。あいつ自称女神に 引き摺り込まれたんだったな。

ってことは、このが異世界転生定番セットがインストールされた身体…なのか⁉︎」


を意識した途端、の基本的な使い方が理解できた。まるで さも昔から普通に使っていたかの様に。


「うわぁ…。やり過ぎだろ は。でも、創造魔法とか ネット通販が無いのがまだマシか?

とりあえず、《洗浄クリーン》…。うん。中まで綺麗になったわ。有用だな。《洗浄クリーン》。

これなら、ヤリ放題のヤラレ放題だな…。だがもうヤラレ放題されるつもりは無いんだけどなッ!」


例え『普通に使っていたかの様に』使い方が分かっていても、使ってみたくなるのが人情ってな物で、インストールされたの使い心地を手当たり次第に確かめる。


「《地図マップ》に《鑑定》《生活魔法》。それから お前だ《収納インベントリ》くん。

『収納容量 惑星1つ分』ってなによ?安直に『無限』にしなかった努力は認めよう。だがな?『惑星1つ分』ってほぼ無限と一緒だ 馬鹿野郎!海水全部 収納してやろうか?コンチクショウが!」


ひと通り喚き散らしてスッキリしたところで、試しに目の前に転がっている小汚いオッさんの骸を《収納》に入れてみる。流れ出た血液の一滴も残さない様にイメージして。


「うわぁ…。うわわぁ…。毛ジラミ居たのかよ、コイツ…。オレ、貰っちゃったりしてるんじゃねぇの?《洗浄クリーン》で なんとか…なるのか。良かった。マジで。いやホント…」


収納インベントリ》に入った物を不思議感覚で認識。そして、そのまま《鑑定》にもかけられる事も確認。知識としては分かっていた事だけど、念のための確認。確認、大事。指差し確認まではしないけど。


「でもなぁ…、生き物が生きたまま入っちゃうってダメだよねェ?しかも、収納物の時間停止ってさ…。やり過ぎだろ?まったく この辺りはしっかり制限かけておけよな?

でもまぁ、有効活用悪用させて貰うけどな!hahaha!!」


某芸人が真似する欧米人並みに大袈裟に笑いながら、確認実験を進める。

雑な手掘りの窟壁を 磨き上げられた墓石の如くツルツルになる様に《収納》を使って切り取る。


「うは♪ これってある意味《空間切断》?バッカじゃねー?誰だよ!こんな使い方出来る仕様にしちゃったヤツは?

って、あぁ。アイツ自称女神か。分かった。分かりましたよ…。お望み通り このをメチャクチャにしてやんよ?」


まず手始めに、散々ヤリ回してくれた(記憶にないが)馬鹿野郎推定山賊どもへの お礼参りって事で、《地図マップ》を活用しながら 目に付く物を手当たり次第に収納に徴発しながら推定山賊アジトを巡回する。もちろん馬鹿野郎推定山賊達は生きたまま放り込む。


「フフフ…。100人以上居たけど、オレってこんな人数にマワされてたのか?よく生きてたな。オレ…。ってか、この身体か。でもまぁ、大人の映像作品の企画で似た様なのがあったんだから、死ぬ程の事じゃ無いのか?うーん」


ブツクサしながら、推定山賊の推定アジトの壁・床・天井をキッチリ整備していく。

完全に自己満足の無駄な作業だが、真心を込めて丁寧に。

そうこうしている内に 前方から差し込む光に気が付いた。


「おぉ。アレが出入り口かな?だろうな。それ以外には考えられないし…」


なんの警戒もせずに ヒョッコリ外に出てみて驚いた。

推定山賊の見張り番がいた事にも驚いたが、なにより自分が全裸だった事を忘れていた事に。


「なんか着ないと風邪ひくな…。」


流れる様に見張り番を収納に放り込みながら、推定山賊からの徴発品に何か無いかと《収納インベントリ》の中を端から《鑑定》して行く。

どれもこれも、小汚い代物ばかりで触る事すら嫌になる物ばかりだった。


「ん〜。困ったな。良い感じの衣類はあるけど、ダニやらなんやらに塗れてるし…。コイツらを分離して収納から取り出…せるのね。

じゃあ、汚れも…?あぁイケるわ…。なんでもありか?これは…」


これは後から気が付いた事だが、衣類に付いた汚れもダニも《洗浄クリーン》一発で済んだ。どうやら《洗浄クリーン》は自分にとって不利益な物を排除する魔法みたいなモノだと理解した。『魔法はイメージ』ってヤツか?


✳︎☆✳︎☆✳︎☆✳︎☆✳︎


「さてと。これから どうすっかなぁ?推定山賊のアジトリフォームは終わったし、推定山賊もおそらくほぼ全て確保してある。

警察…。この世界にあるのかね?

定番だと 騎士団やら衛兵なんてのが治安部隊として活躍してるんだろうけど…。そこに突き出すか?それとも…」


対人類に関しては、《収納》を使えば捕縛から尋問・拷問・極刑に至るまでなんでもござれだ。ある意味『やりたい放題』


「私刑に処す?オレって被害者なんだし、復讐って事で…ヤっちゃう?ヤっちゃうか!うん。ヤってしまおう‼︎女の敵に人権無し!よって裁判にかける必要も無い!

とは言いつつも、1人ひとりに《鑑定》かけて、罪状確認するんですけどねー」


✳︎☆✳︎☆✳︎☆✳︎☆✳︎


リフォームの匠の腕によって見違えるほどになったアジトの外に出て、適当な場所に穴を開ける。目算5メートル角で、深さは60メートルほど。穴の底は通常目視不可能な深さ。


「なんと言う事でしょう…。この《収納》、便利だけど ヤバすぎでしょ。この性能。

やーいやーいバーカバーカ!この仕様にしたヤツ自称女神はなに考えてんだろね?なにも考えて無いんかな?」


それにしても さすが収納容量 惑星1つ分。使い方次第で 穴掘り職人もビックリの落とし穴が『アッ』と言う間。

その気になれば、おそらく『ブラジルの人!聞こえますかぁ〜?』ってやれるほどの深い穴も作れてしまいそうだ。その後 どうなるか想像できないからやらないけど。


「んなアホな事を考えてないで、私刑執行です!」

尚、どういう訳か2割程が男色家だった。しかもコイツらは掘る方では無く、掘られて喜ぶ方だったので、私刑的には無罪放免。


そして、私刑の内容だが…。《収納》を駆使して全裸に剥いたオッさん連中を、穴の真上で取り出す事での『紐なし強制バンジー』…つまり落下死させる。

それでもさすがに 数十人も同じ場所に紐なしバンジーさせれば、最後の方の私刑囚は、瀕死ながらも生き残った様だ。先達が緩衝材にジョブチェンジしたようだ。


「……。なんか 地の底から悍ましい呻き声が聞こえる…。しかもなんか非常にし…。


とりあえず、臭い物には蓋をしろってね。昔の人は良く言ったもんだわ。」


落とし穴を作った時の残土と言うか、土塊を そっくりそのまま元の場所に戻す。これで呻き声も臭いも完全シャットアウト。


「と、まぁ こんな感じで君らの恋人達は、オレに浮気したせいで極刑に処された訳だが?

どうする?仇を討つかい?」


私刑を真逃れた、掘られて喜ぶ推定山賊達に問い掛ける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る