第2話 ダンジョン課金制につき、貧乏人お断り。
王都ヘリオス
その中心はヘリオス城がそびえ立ち、人で賑わい、絢爛華やかな王都が各国からの冒険者達を迎え入れる。
その都を囲む様に大小様々な集落ができ、モンスターが巣食う森林もあれば、その森林を利用して住んでる人達もいる。
このヘリオスの1番の目玉はお馴染みのダンジョン。
ヘリオスの近隣、アグーの森から入るダンジョンは入り口は寂しい洞窟だが、中に入ると巨大な空洞。そこから最下層までのルートに、どういう原理かちょっとした森や川もあれば城まである。と、いっても古城だが…
この世界、俗に言う異世界も景気不景気があり、バブル期に時の王が自分の権力を見せるため、街人たちや旅行者達が遊べそうなアミューズメントパークを作った。
それが『ヘリオスダンジョン』だ。
その後バブルが弾け、アミューズメントダンジョンは荒廃し、廃墟になっていく。
廃墟になり、幾つ年月が経ったのだろうか?
人々が気がついた時には、モンスター達の寝ぐらになり、宝石など綺麗な物を集めるモンスターの習性のせいか、ダンジョン内には金銀財宝、そしてレアアイテムの宝庫と噂される様になった。
***************
「ケルベロスも子犬から飼うと人懐っこくてかわいいもんじゃよ。
番犬にも話し相手にもなる。
リオン。お前さんも飼ってみたらどうじゃ?」と満面の笑みでケルベロスの頭を順に撫でるとそれに応える様にこれもまた三尾の尻尾で喜びを表し、身をくねらせて主人にケルベロスは甘えた。
番犬がケルベロス?
そう、もう分かってると思うけど、この世界は君達読者諸君が言う『異世界ファンタジー』の世界だ。
ちなみにいわゆる『転生もの』とは一切関係ありません♪
こんな異世界でも郵便屋さんってあるんだよ?
これはそんな異世界の郵便屋さんのお話さ。
「リオン!あまり飛ばして転んだりするなよ!」心配そうに笑って手を振るドートルさん。
「ありがと! 心配しなくてもそんなヘマしねーよ」
と、スーパーカブに跨ると次の家に向かってアクセル全開だ。
バルーン!バルバルルルーン!!
砂煙を上げて快調に飛ばす。
俺の名前はリオン。
冒険者だ。
…いや、今は郵便屋さんだったな。
リオンって名前は冒険者だった親父が付けた名前だ。
「ライオンの様に強く勇ましい勇敢な男に育つんだぞ!」
そう言って俺を抱きあげて遊んでくれた記憶は昨日の様だ。
当然俺も冒険者の端くれ。親父譲りの探究心は熱が冷めることは無い。
だけど…
冒険って金掛かるんだよね〜
配達の合間に、ちょっとヘリオスダンジョンの話をしようか?
随分と昔の話になるけど、ダンジョン内に住み着いていくモンスターもほったらかしにしていた王様なんだけど、どんどん数は増えるし、人への危害も出始めるし、流石の王様もダンジョン内のモンスター討伐のおふれを出した。
すると、他の国の腕に自慢のある冒険者達やいろんな種族も集まり出して、今や「冒険の街ヘリオス」とまで言われるまでにもなった。
これを見逃さない王様では無いね。
これは金になると。
なんと、この王様はダンジョンへの通行料を取り出したんだ!
* ダンジョンへの入場料。
* 各階層ごとの通行料。
* お得な10階層までのセット券。
* 20階層から最下層までの上級者向けセット券。
* 初心者向けのガイド付きの特別プレミアムチケット。
* 年間パスポートなんて物もある。
そう…
冒険すんのも金が掛かるんだよ。
で、その冒険資金を稼ぐために俺は郵便配達でバイトしてるってわけさ。
ヘリオスの周りにはたくさんの集落があるし、ダンジョンの中に住み着いて商売したり生活してる人達もいるから、手紙や荷物を届けるだけでも結構な稼ぎになる。
と、いっても雇われの身なんだけど。
おっと、そろそろ今日の配達が終わるな。俺の雇い主の店『トム爺の郵便屋さん』に帰るとするか。
バルーン!バルルルル…
俺はスーパーカブを『トム爺の郵便屋さん』に向けて走らせる。
夕陽が眩しい中、帰り道にいつになるか分からない次の冒険の事を考えるのはいつもの癖になってきた。
『トム爺の郵便屋さん』に雇われて半年近くなる。
仕事をくれたトム爺には感謝をしているし、トム爺が用意してくれた魔法の乗り物『スーパーカブ』も馬と比べたら段違いに速くて大好きだ。
客と話すのも楽しいし、仕事も気に入っている。
でも…俺は冒険者なんだ。
いつまでも郵便屋さんをやってる場合じゃない…
夕日の中、川沿いの土手を走っていると、ヒューマンとドワーフの子ども達が川遊びをしているのが見えた。
俺はスーパーカブを停め、ボーっとその光景を見つめる。
俺に気づいた子供達は無邪気に笑いながら手を振るので、それに応えて俺もニカッと笑いながら手を振った。
「おーいっっ!!もう、日が暮れるから家に帰るんだぞー!!」
「はあーいっっ!!」
子供は良いな…無邪気で…
遠くを見る様な目で、帰っていく子供達を見守る俺はボソリと呟いた。
「早く次の冒険に行きたいな…」
しばらく俺は子供達が帰った後の川を見つめた。
周囲は人気が少なくなり、寂しさを募らせ、カアッ!カアッッ!!と、カラスの鳴き声が響き渡る。
思わずため息が出る…
「俺…何やってんだろ… 」
カラスの鳴き声が聞こえる中、俺は一人
沈んでいく行く夕暮れ時を黄昏た…
「イカーンッッッ!!!!」
おもむろに俺は力一杯叫び、
パーンッッッッ!!!!
と、我に帰る様に頬を両手で力いっぱい叩く!
「こんな事でどうする!?
俺はヘリオス一番の冒険者になるんだろっ!?
宮廷騎士になるんだろ!!」
俺は自分自身に喝を入れる!!
「弱気な俺は俺じゃねえっっっ!!
あっぶねえーっっ!!夕陽が俺をセンチメンタルジャーニーにしてんじゃんよ!?」
「ふざけんな!!俺は冒険者リオンだっっつうの!!
みてろよ!?ヘリオスダンジョン!!」
俺はスーパーカブのアクセルを捻り、猛スピードで走り出す!!
「カラスが鳴くから、かーえろっと!くらあっ♪」
バルン!バルバルバルルルルーンッッッ!!
沈みゆく夕陽にスーパーカブの音が響き消えていく。
彼の名はリオン。
スーパーカブに乗る異世界の冒険者であり、郵便屋さんである。
リオンの冒険が始まるのは、まだ先の話である。
「あれ?前回と同じ終わりじゃね?」
…コホン
負けるなリオン!明日があるぞ!
「負けてねーしっっっ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます