025 - そしき -
025 - そしき -
「さてと、補給も終わったし次の指示があるまでのんびりするか・・・」
俺の名前はレオ・タァド、短命種の28歳、とある組織に雇われた工作員だ。
数日前、組織の命令でベンダルとその幼虫が寄生した乗客入りの旅客船をステーションにぶち込んでやったところだ。
親切なハンターに偶然救助された風を装い最寄りのステーションに入って2日になる。
ステーションでは管理局の奴らに例の旅客船を見たかと聞かれた時は少し肝が冷えたが、救助信号を出したのに無視されたと文句を言ったらあっさりと信じたようだ、ちょろいぜ。
俺はモニターを切り替えて星団ニュースを検索する・・・今いる所はエテルナ星系から転送ゲート1つ分離れてるから扱いこそ小さいがベンダルによるステーション襲撃が報道されていた。
「思ってたより被害が小せぇな・・・重傷者4人、これは襲われて卵を流し込まれた人数だろう、それから死者2人に軽傷6人、殆どが宙港の職員か」
船に乗っていた連中で生きている25人は全員宿主になったと書いてあるから依頼主の組織は満足してくれるだろう。
俺は更に報道を読み込む。
「なるほど・・・ベンダル・ワームを4体駆除、他に侵入が無いか捜索中のため宙港はまだ閉鎖中とある、俺が放したのは5匹だからまだ1匹残ってるな」
・・・
(ピッ・・・メッセージ、1件)
ぶっ壊れたように見せかけたエンジンの調整も終わり管制室でのんびり酒を飲んでるとメッセージが入ってきた。
「何だ?」
送り主はの名前は組織の使ってる偽会社だった、俺と話したいから3日以内に指定場所まで来いと書いてある。
「そんなに遠くねぇな、ここから転送ゲート2つ抜けたところか・・・」
組織には俺の船の位置情報を送り続けてるから居場所は把握出来てる筈だ、近くで急ぎの仕事でもあるのか?・・・だが直接俺に会いたいってのは初めてだ。
「考えても仕方ねぇか・・・会えば分かる事だしな」
俺は立ち上がり出港の準備を始めた。
・・・
・・・
「すげぇ船だな」
「そうね、お金をかけて偽装しているから星団に見つかる事はまず無いわ」
俺は今、組織の女に案内されて大型輸送船の通路を歩いている。
指定された場所に行くと小惑星の影にでかい輸送船が隠れてた、近寄ると通信があり船の中に入れと言う。
輸送船の後部ハッチが開いたから船ごと格納庫に入ると中には防護服に首輪姿の若い女が俺を待っていた。
プシュー
「どうぞ中へ」
「おぅ」
通路を進み、部屋に通される・・・会議室みたいだな。
「初めまして、私の名前はフローリン、あなたの上司になるかもしれないわ」
「上司?」
長い黒髪の無表情で無愛想な女が意味不明な事を言い出した、更に説明を聞くと俺を組織の一員に迎えたいらしい。
俺の今の立場は雇われの工作員だから別に組織に所属してる訳じゃねぇ、だが組織に忠誠を誓い仲間になれば給料と居場所が保証されるそうだ。
「断ったらどうなる?」
今俺は組織の偽装船の中に居る、つまり秘密を知り過ぎている訳だ・・・断ったら消されるんじゃねぇかと不安になったから念の為に聴いてみた。
「・・・この間お願いしたベンダルを民間船に送り込む任務だけど、星団の管理局が貴方を疑っているわ、ほらこれを見て」
女が手に持っている機械を俺に見せる、モニターには赤い表示で通信中とあるな。
「これは?」
「首輪に仕込まれている位置情報が作動しているか検知する道具よ、今は泳がせてるみたいだけど・・・どこかのステーションに入ったところで捕まるんじゃないかしら」
「なっ!」
宿主の人権を保護する団体の頑張りで普段は首輪の位置情報が切られプライバシーが保たれている、だが犯罪に関わる容疑者の首輪に対しては位置情報の収集が法律で許可されていた。
「依頼は上手く片付けたようだけど疑われてるのは確かよ、首輪の位置情報が起動した時間は昨日みたいだし今頃は逮捕状が出ているかもね」
俺のやった事はバイオテロ行為だ、捕まったらタダじゃ済まねぇだろう。
「俺はどうすればいい?」
「私達の仲間になるなら助けてあげる、死んだ事にして別の人間として生きる事になるけど」
だが星団が俺を追っているとなると変に逆らえば身体に埋め込まれた毒が心臓に注入されて・・・。
「星団管理局が遠隔で貴方を毒殺すると思っているのでしょう?、私達の組織は位置情報の隠蔽と毒液注入の対策技術を既に持っているから心配ないわ」
そんな事も出来るのかよ!。
「どうやら俺に拒否権はないようだな」
俺はフローリンと名乗る女に手を差し出した。
「賢明な判断ね、組織は貴方を歓迎するわ」
フローリンも手を出し俺と握手する。
「で、具体的にどうやって俺を助けてくれるんだ?」
「まず、貴方の船を外に放り出して爆破する、船に乗っていたレオ・タァドという男はそこで爆死、首輪は原型も残らず破壊されて星団からは死亡扱いになるわ」
「・・・」
「同時に私達が貴方の首輪を操作して位置情報と毒液注入システムの制御権を星団から組織に切り替えて偽装工作は完了ね」
「待て、それじゃぁ今度は俺の命が組織に握られるのかよ」
「当然よ、まだ貴方を完全に信用した訳じゃないから裏切り防止と行動の監視も兼ねているわね、うちの組織は裏切らない限り仲間に理不尽な事はしないし頑張って幹部になれば監視はある程度緩むわよ」
確かに星団はこの組織を血眼になって探している、俺が星団のスパイかもしれないし警戒されて当然か・・・。
「分かったよ、これからよろしく上司殿」
俺が組織に入る事を決めるとフローリンの行動は早かった。
「遠隔操作で船を外に出せばいいんだな」
「えぇ、外に出たところをこの船の主砲で破壊するわ、乗っていた筈の貴方は死体まで粉々になるし首輪の回収も困難、星団管理局も諦めるでしょうね」
俺は一旦船に戻り、身の回りの荷物と遠隔操作用の端末を持って輸送船の管制室に連れて行かれた。
管制室では10人ほどの男女が働いている、全員首輪を付け防護服を着た宿主だ。
「俺はここで長い付き合いだった相棒が吹き飛ぶところを見てればいいのか?」
俺は隣に座っているフローリンに尋ねる。
「そうね、これからはこの船や組織が運営する研究所の中で働いて貰おうと思っているのだけど、必要なら新しい船を用意してあげるわ」
「えらく気前がいいな」
「私達は貴方の働きを評価しているのよ・・・」
「雇った工作員の中から優秀な奴を組織に引き抜いてるってわけか」
「正解よ、貴方はこれまでの任務45件全てで良い成果を出しているから勧誘しろって言われたの」
「誰に?」
「私の上司よ、そのうち紹介してあげるわ」
話をしているうちに俺の船が外に放り出される様子が管制室のモニターに映し出される、周りでは砲撃準備という声も聞こえてきた。
「さぁ、首輪を見せて」
フローリンの指示に従い顔を上に向けて首輪を見せる・・・本当に大丈夫かよ、首輪を下手にいじると毒液が注入されるって聞いてるぞ。
かちゃかちゃ・・・
首輪の端子にケーブルが取り付けられ、俺の横では男の作業員が端末を操作している。
「では始めます」
男が呟く。
「砲撃と同時に切り替えます・・・4・・・3・・・2・・・1・・・」
ぽち・・・
(ヴィィィィィ!)
俺の首輪から聞いた事ないような音が出たぞ、本当に大丈夫だろうな!。
「おい!、大丈夫なのか!」
(ピッ・・・)
「終わりました、全て正常に作動しています」
首輪の端子からケーブルを引き抜いて男がフローリンに報告する。
「さて、今この瞬間から貴方は星団管理局の監視を外れて自由になったわ」
フローリンが真顔で淡々と俺に告げた。
「組織には命握られてるじゃねぇか」
「裏切らなければ問題無いわ」
「・・・」
管制室のモニターに目を向けると俺の船が主砲の直撃で粉々になってるのが見えた・・・。
「新しい名前は何がいい?」
フローリンが俺に尋ねる。
「そうだな・・・どうせならかっこいい名前がいい」
・・・
・・・
・・・
「ローリー・コーンってのはどうだ?」
「いいんじゃない?」
俺が頑張って考えた名前に心底どうでもよさそうに答えやがったぞ!。
・・・
「やべぇ・・・」
「さっきから同じ事を言っているわね」
「お前が何度もやべぇもん見せるから仕方ねぇだろ!」
「私は貴方の上司なんだから「お前」は禁止!、それと名前には「さん」か「様」を付けなさい!」
「はいはい、フローリン様!」
「嫌そうね」
「年下の小娘に様なんて付けるのすげぇ嫌なんだよ!」
「そう・・・ならフローリンでいいわ」
偽装工作が終わった後、俺はフローリンに連れられ船内を案内されている。
どうやらこの船は研究船のようだ、中は医療設備や実験機材、怪しい装置で溢れてる。
ベンダル・ワームの飼育もしていて強化ガラスの中には禍々しい姿の怪物が蠢き、実験材料?の少女が襲われているのを見て俺は叫んだ。
「人体実験もしてるのかよ!」
「主に繁殖と研究、素材採取が目的ね、うちの組織は宿主用の薬を製造している製薬会社が母体なのよ」
「星団に5社しかねぇが・・・どれだ?」
「ドンブレラ社よ」
「5つのうちでも最大規模の会社だな」
「そうね、だから星団管理局から隠れるには都合がいいの」
「・・・」
今歩きながら説明を受けている俺の隣ではどこで攫ってきたのか死んだような目をした全裸の少女達が檻に入ってこっちを見ている。
「ここに居る娘達は攫ってないわ、孤児を買ったり・・・色々と手を回して譲ってもらったのよ」
俺の考えてる事を察したのかフローリンが俺に話しかける。
「たまに敵対する星団関係者の身内を報復の為に攫う事はあるけど・・・」
「あるのかよ!」
・・・
一通り船内を歩き回った俺達は最初に通された会議室に戻ってきた、居住区画に俺の部屋まで用意されてたのには驚いたぜ。
会議室ではフローリンと今後の事を話す、俺はしばらくこの船の中の雑用を受け持つようだ。
「食事はこのカードを食堂の機械に通せば料金が給料から引き落としになるわ、これで一通り説明は終わっ・・・」
フローリンの話が突然途切れた、俺は貰ったカードを仕舞いながら顔を上げて彼女を見た。
顔色が悪い、それに身体が小刻みに震えているな・・・。
「もしかして幼虫に体液を注入されたのか?」
こくり・・・
今まで素っ気ない態度で俺に接していた彼女が涙目で頷く、俺達宿主は数日おきに忌々しい幼虫に体液を注がれる。
がたっ!
「んっ・・・あぁぁん!」
急に椅子から立ち上がったフローリンが股間を押さえて切ない声を上げた。
腹の中の幼虫は時と場所を選ばねぇ、体液を注入して勝手気ままに暴れ回るから店の中やステーションの路上、皆の目の前で宿主が突然こいつみたいに苦しみ悶える光景はそれほど珍しくもない。
「あんっ!、痛いっ!、嫌ぁぁぁ!」
痛いと言ってるが実は同時にとてつもない快楽に襲われている筈だ、同じ宿主の俺も毎回体験してるから間違いねぇだろう。
「おい、大丈夫・・・じゃねぇよな、誰か人を呼ぶか?」
フルフル・・・
床に転がって悶えているフローリンは俺の問いが聞こえたのか激しく頭を横に振っている・・・手助けはいらねぇようだ。
髪の間からチラリと見えたこいつの耳は尖ってる、年下だと思ってたが長命種・・・もしかして俺より年上だったか?。
「あぁぁん!気持ちいいよぉ!」
幼虫の体液には快楽物質がたんまり含まれてるからそりゃ気持ち良いだろう・・・俺は何度も痙攣して絶頂を迎えるフローリンを眺めてる。
床に転がって淫らに快楽を貪る姿は凄ぇエロいぜ・・・。
・・・
・・・
「虫は大人しくなったか?」
「んっ・・・」
どれくらい時間が経ったか分からねぇが俺は床に倒れてぐったりしてるフローリンに話しかける、しばらくは立ち上がれないだろうが気絶しなかったのは大したもんだ。
・・・
・・・
・・・
「恥ずかしい姿を見られたわね・・・」
ようやく動けるようになったフローリンが椅子に座って俺に話しかける、まだ目は潤んでて息は荒い。
「体液を注がれたらみんな同じようになるんだから気にすんな、フローリンはいつ宿主にされたんだ?」
俺は彼女に尋ねた、このまま2人で見つめ合うのも気まずいし世間話みたいなもんだ。
「されたんじゃないわ、私は自分から望んで宿主になったのよ」
「は?」
こいつ、おかしな事を言い出したぞ!。
(柚亜紫翼からのお知らせ)
2026年4月27日、001話〜024話の内容を加筆修正しました。
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