第29話
自室を与えられ、そこで静かに過ごすことを求められていることは、山本にも
分かっていたが、牧野の物言いと山本への言動から牧野への不満を直接ぶつける事で
不満を解消しようと考えた。
前回この施設を見て回った、時よりも建物の細部を注意しながら見て回ることにした。
前回はその建物内で何を栽培しているのかを重点的に見ていたが、今回は牧野が居そうな
箇所がないか、自室として与えられたようなデットスペースが作れる箇所がないかを
注意してみて回った。
山本は、2~3棟回ったが、なぜこの施設で栽培されている野菜は、ジャガイモと
玉ねぎとキャベツを最も多くさいばいしているのだろう。農業という分野に疎いとはいえ、
国内でたびたび野菜が不作になり野菜が高騰しているというニュースを見ることが
あったので、そういう不足しやすい野菜を栽培した方がいいのではないかと考えたが、
この事についても牧野に聞いてみたいと考えながら棟を見て回った。
結局、前回と同様に牧野を見つける事は出来なかった。
ただし、今回は、唐辛子を栽培と粉砕をしている、小屋とその地下については
見に行かなかった。
自室に帰る事にしたが、前回も見ていない所がある事に気が付いた。
そこは、業務用のエレベーターだった。
もしかしたら、エレベーターのどこかに触れると、隠し部屋が現れる様な事があるの
かもしれないと思ったのだった。
まー、試しに見てみるかと半分以上あきらめた状態で、業務用のエレベーターに向かった。
業務用のエレベーター内は、8条から10畳ほどの広さがあり、小型の自動車くらいなら
エレベーターに乗る事が出来るのではないかと思った。
しかし、エレベーター内を隅々まで見て回ったが、昇降用のボタンが開閉用扉の横に
あるだけで、変わったところはなかった。
やっぱり、何もないかと、ため息を付き、天井を見あげた時に、天窓の部分が僅かに
凹んでいる事に気が付いた。
今まで、エレベーターの天窓部分をまじまじと見た事も無かったので、こう言うもの
なのだと言われれば、そうななのかと確認することまではしなかったのだろうが、
今は、子のエレベーターには山本しかいない。
気になったら、確かめずには入れない山本は、まず、天窓部分をジャンプして
触ってみる事にした。
しかし、山本がジャンプして触ったくらいでは、天窓部分は、ビクともしなかった。
次に、山本は天窓部分まで上がれるように梯子を探してきてエレベーターに
梯子を立てかけた。
梯子を立てかけたとたんに、天窓部分が、開き梯子を立てかけた面とは違う面へ
ステンレス製の梯子が滑り出てきた。
山本は滑り出てきた梯子に驚き、梯子から天窓部分へ目線を戻すと、天窓から
牧野が、顔をのぞかせていた。
山本と目が合うと、牧野は「うるさい」とだけ、言うと顔を引っ込めてしまった。
天窓を閉じられる事も無かったので、山本は梯子を昇りエレベーターの天井部分に
上がった。
天井部分は、エレベーター内と同じ広さくらいの広さがあり、牧野の居住部分と
仕事をする為なのか、パソコンとモニターが、設置されている。
山本が自室に設置したトイレと浴槽などはなかった。
以前、牧野が言っていた様に、牧野はトイレとシャワーは外で済ませているのだろう。
山本は、ベットで寝そべっている牧野に疑問に思っていたことをぶつける事にした。
「こんなところにいたのかよ、探したぞ」
山本の問いに牧野は何も聞こえていない様に寝そべった状態を変える事も無く
無反応だった。
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