第31話 創作料理
だれがレース関係者で、だれがただの観客だかよくわからないレストランで、とにかく早めの昼食をとった。
「ママの魔法で心を読んでほしいよ。だれが関係者かわかるでしょ」
ルドルフが冗談を言う。
ピットウォークの時間が来た。ルドルフの興奮が最高潮である。応援してるオレンジ色のマシンの前から動かない。私はアングルをかえて何枚もスマホで写真をとった。修二くんが居なくなったと思ったら、
「ルドルフ、あっちにレーサーの人いるぞ」
と言った。確かに眼の前のマシンと同じ色のスーツを着て、派手なカラーのおねえさんたちに囲まれていた。ルドルフはさっそくかけていって、
「がんばってくださ~い!」
と言って、握手してもらっていた。おへそが見える衣装のおねえさんたちもニコニコしている。私は服の上から自分のおヘソの横の肉をつまんでみた。
決勝は残念ながら、オレンジ色のマシンは序盤で姿を消してしまった。スタートはよかったのだが、むしろ良すぎた。予選2位、トップのマシンに肉薄するスタートを決め何周か激しいバトルをしていた。
私達はメインスタンドの指定席から観戦していたのだが、ホームストレート後の第一コーナーで無理に突っ込み一番手の車に接触、コントロールを失ってクラッシュしてしまった。一番手の車もダメージをうけたようだがレースに復帰、しかしオレンジのマシンは動かなくなってしまった。
ルドルフは見るもあわれにしょんぼりしていた。
応援するチームは負けてしまい、帰りの渋滞も心配なので早めに帰路につくことにした。
帰りの運転は交代ですることにし、そのとき私は後部座席で居眠りしていた。
夢をみていた。森の魔女様のもと、玲子ちゃんと二人で魔法の練習をしていた。
焚き火のイメージで火魔法を使うと、それまで私は爆発を発生させていた。魔女様はそれをいいことに、畑の横の森を吹っ飛ばし、畑をひろげることをやっていたのである。そして突然、私は火魔法のコントロールに成功した。うまくいった事自体に動揺して、私は夢から覚めた。
車はもう、山を超えて東海村の近くまで帰ってきていた。
「修二くん、私寝すぎちゃった、ごめん」
「いや、道が空いてたから、あっという間に帰ってきちゃったよ」
「そうなんだ、夕食私、つくるわ」
「疲れてない? お弁当でいいよ」
「大丈夫、よく寝た。冷蔵庫にご飯あったよね」
「うん、まだいっぱいあったはず」
「OK」
いつものスーパーに車を入れてもらった。私は思うところがあって、
「修二くん疲れたでしょ。私買ってくるから、寝ててよ」
と言うと、修二くんは特に何も疑うことなく、
「ああ、ありがと」
と後部座席にうつってリラックスした姿勢をとった。
ルドルフは手伝うと言ってついてきた。こういうところがかわいいのである。
サラダにする野菜を買う。私は作ってみたい料理があって、エリンギ、ベーコン、ミックスビーンズの缶詰、カットトマトの紙パックなどをカートに入れた。
「ママ、見たことない組み合わせだね」
「うん、初めて作る」
「のぞみママのレシピ?」
「いや、オリジナル」
「え」
さらに安い食塩、洗濯のりも買う。
「ママ、だいじょうぶ?」
「うん、多分」
「さっき買ったお塩、いつものとちがうよね。お塩まだあったよね」
「うん、これがいいの」
家に帰ると男子二名は荷物はこびと洗濯、私は炊事となった。
まず修二くんに在庫を確認しておいた冷凍のご飯を解凍する。その間にサラダを用意する。レタスを洗って手でちぎる。きゅうりは乱切りにする。
炒め鍋に角切りになっているベーコンを放り込み、着火する。ベーコンから油が出るだろうから油はひかない。そこにエリンギをぶち込む。ミックスビーンズの水気を切って、やはり鍋にいれる。カットトマトを缶から鍋にぶちこむ。トマトジュースとかホールトマトでもいいと思う。そこに解凍したご飯を入れて加熱する。
「いい匂いだね、緒方さんから教わったの?」
荷物運びを終え、お風呂からあがった修二くんが聞いてきた。私はにやりと笑って、
「ううん、はじめてつくる。レシピはない。オリジナル」
と言っておく。修二くんの笑顔がちょっとこわばった。
修二くんが動揺したのには理由がある。
私は中学生の頃、創作料理をやってみたことがある。どれもこれも食べれたものではなかった。そのころは私には料理の才能がないのだと思っていた。しかしのぞみの奴は、それは私が実験できない「聖女効果」と同じ原因だというのだ。そういうわけで私は今まで、料理はレシピに忠実にやってきた。
ルドルフはその原因を、私がこの世界でも少しだけ持っている魔力のせいだと言っていた。私は魔法の細かいコントロールが苦手だから、それが実験とか創作料理に悪影響を与えていると我が息子は分析していた。
だからこないだの異世界生活で、私は森の魔女様のところで修行してきたのだ。大好きな修二くんから離れ、大好きな研究生活から離れてでもやったのだ。魔法使いになりたいという玲子ちゃんを伴い森の魔女様のところへ行って、私は魔法のコントロール力を身に着けた。
そう言うわけだから私はまず、創作料理に挑戦することにしたのだ。
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