5章 第205話 フィジカルエリート麻衣

「キョウちゃんおひさ〜」


麻衣まい、元気だった?」


 夏休み中のある日、同じ地元に残った者同士である麻衣と久し振りに会っていた。高校を卒業してから数ヶ月、こんなに麻衣と会わなかったのは初めてなので新鮮な感じがする。

 先日カナちゃんと会った時も思ったけれど、自分達がそれぞれの道を歩んでいるのを実感する。

 殆ど毎日顔を合わせていた友人達と、全く違う日々を過ごしているのが不思議だ。だけどそこに不安感はない。

 お互いがお互いに、自分の歩みたい道を進んでいるからだと思う。少しの寂しさは感じるけど、それよりも皆が元気である事の方が大事だと思うから。


「カナちゃんがここに居ないの、不思議だよね」


「そうだね〜あんまり無かったね〜」


「カナちゃんが体調崩してた時以来かも」


 いつものファミレスで、カナちゃんだけが居ない。これまでにそんな事は、殆ど無かった。

 幼稚園で2人と仲良くなってから、大体は一緒に行動していた。カナちゃんと麻衣には他にも友達が居たから、私とはまたちょっと違うだろうけど。

 それでもモブ友3人衆として、共に過ごして来た時間は長い。それこそ10年以上の付き合いになる。

 人生の半分ぐらいの思い出には、大体カナちゃんと麻衣が側に居た。それが今では、ちょっとだけ違う形に変わっている。


「キョウちゃん、ちゃんと友達作れた〜?」


「そ、それは大丈夫だよ。ちゃんと出来たよ」


「ホントに〜? 見栄張ってない〜?」


「ホントだよ! ちょっと一部、変わった人が居るだけだよ」


 私がまこと達と仲良くなる前まで、私は友達を作るのが苦手だった。後ろ向きで小心者で、良く知らない人と仲良くなる事が上手く出来なかった。

 そんな頃を知っている麻衣としては、多少なりとも心配してくれていたのだろう。ギリギリぼっちじゃないだけの、超絶陰キャ時代を良く知っているから。


 高校は途中から楽しい毎日を送れたけど、大学でも上手く行くとは限らないから。実際、私はそれほど友達は多くない。

 まだ数人の友人が出来ただけだ。その内の何人かは、ちょっと変わった人だけど。変わった面があるだけで悪い人では無いんだよね。ちょっとキャラが濃いだけで。


「……変な人に着いて行っちゃ駄目だよ〜?」


「子供か! 私は小学生じゃないよ!」


「冗談だよ〜」


 確かに最近の私は、ちょっと変わった人と言うかキャラの濃い人達が周りに増えてはいる。

 だけど全員良い人達で、悪意は全く無い。篠原しのはらさんとか、特に濃いけど優しい人だし。他の人達も…………悪意は無いんだよね。

 個性的、うん個性的なだけだよ。真抜きにしても大学生活は楽しくやれているので、特にこれと言った問題はない。

 変な人に絡まれるとか、複雑な関係になったりも無い。これと言ったトラブルもない平和な日々だ。


「キョウちゃんも成長したんだね〜」


「した、のかなぁ? 少しぐらいは前に進めたのかな?」


「してなかったら今頃ぼっちでしょ〜」


 容赦なく火の玉ストレートを顔面に投げないで欲しい。そんな自分が容易に想像出来るから悲しい。

 もし真達と知り合えず、長野に移住していたらきっと友達はゼロ。大学生になっても誰とも仲良くなれずに、立派なぼっち学生をしているに違いない。

 カナちゃんと麻衣のSNSを見て、あぁ2人共元気にしてるんだな。とか思いながら1人ベッドの中でスマートフォンを眺める夜。

 あまりにも私過ぎる生活だよ。そのままぼっち系社会人になって、社会に馴染めず立派な家事手伝いに!

 うん、普通にありそうなのが怖い。なんならまだそうなる可能性は残っている。絶対にそのルートだけは回避しないと。


「ニートにだけはならないよ、絶対!」


「急に話変えるね〜。相変わらずだねそう言う所」


「え? なんで?」


 ちゃんと話は繋がっていたと思うんだけど。何故そんな反応になるのだろうか。ぼっちでニートだけは、絶対に避けねばならないのは普通だと思うけど。

 うちは母子家庭でそんなに余裕も無いからね。とても大事な話なんだよ。予定より早く片親になっただけで、元々はその可能性を考えて脱陰キャを目指したのだから。

 私がちゃんと社会人をやれないと、念願の犬を飼う生活も出来なくなってしまう。それだけは絶対に嫌だ。


「それより麻衣はどうなの? ラクロス続けてるんでしょ?」


「そだよ〜やっぱり楽しいからね」


「良いなぁ麻衣は運動出来て」


「キョウちゃん、全然駄目だもんね」


 麻衣は昔から、スポーツ関係ではそこそこ活躍するタイプだ。ドッヂボールとか、運動会とか球技大会とか。

 わりとのんびり屋だけど、いざ体を動かすとなると普段とは別人の様にしっかり貢献する。

 そしてコミュニケーション能力もちゃんとあるので、色んな所で友人を作って来る子だった。

 ゲームだったら、攻略対象の事を色々教えてくれる友人ポジションだ。アニメとかに居るよね、素のスペックが異様に高いのに何故かモブやってるキャラ。


「冬までにはマシになりたいなぁ」


「お〜! じゃあちょっとトレーニングしよっか〜」


「あ、待って、麻衣のペースには着いていけないから! 無理だって待って!?」


 その後私は、運動大好き麻衣のペースに振り回された。ヘロヘロになって帰宅した私は、その後どうなったかあまり覚えていない。

 ただ次の日は全身筋肉痛で、まともに動けなくて大変苦労する羽目になりました。麻衣の前で鍛えてるとか、もう絶対言わない様にしよう。

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