一か八かの難癖
フーヴァーは飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになるのをこらえて社会局からの連絡を聞いていた。
「なるほど、それはそれは……由々しき事態ですね」
あいつらアホなのか?と言う言葉を飲み込み考え事をするような素振りをして誤魔化していた
「連絡はどちらに?」
「農務省とシュツッテンファンベルク無任所大臣に。カルマン内務大臣には手紙を。証拠はデューイ帝都地方検察庁支部長へ」
「おお、そうですか……」
動かなければならんなぁ……。
内務省社会局の連絡を聞いたあと農務省へと行くことを決めたフーヴァーはここに来てこれかぁ……とため息を付いていた。
「あぉん?」
報告を聞いたロスロップは思わず奇妙な声を上げてしまったがその後は取り繕い了承した。
「これ輸出関係だから俺に飛び火するんじゃないか?密輸にしても限度があるだろ、敵国の反対勢力じゃなくて狂信者だぞ?どうするんだ?どうすりゃいいんだ」
「フーヴァー商務大臣も今頃頭を抱えていますよ」
「デューイは高笑いだろうなぁ……」
「商務大臣はこちらに向かっているとのことです」
「ということは向こうのほうが報告が早かったな……」
げんなりしたロスロップは来客準備を命じてため息を付いていた。
「了承しましたわ」
ホセ・ルイジアで夕食を取っていたリリーナはイントツルスや一部の人間をそっと奥に隠し、わかりやすい人間を見える場所に配置してただの親睦会として振る舞っていた。社会局からの連絡を聞くとあっさり了承の言葉を紡ぎ出し皆に向き直った。
「それでは皆様、私は少し外しますわ。好きなものを食べて楽しんでください。でもフォアグラの食べ過ぎは流石に気をつけて。あとラーメンは流石に異質だと思いますわ」
出かけようとしたが気になったのか
「好物でして。食肉関係は当家の仕事ですからね。牛だけではないのですよ。それに質がいいと私も作ってみたくなるのです」
「貴族時代はあまり食べられなかったもので……。弟もよく食べたいと言っておりましたので気になりまして……」
「まぁ、試してみるのも良いことですからね。そうですかベッサ公爵は意外と食事は安上がりなんですね。いや、高いものは高いですけども。まぁ良いことですわね……美食で身を滅ぼすよりは」
その年でラーメンを食べたがる貴族の子供……?と若干気にはなったもののそういうこともあるかと流したリリーナは社会局の人間に声をかけて出かけていった。
「行きましょうか」
「査問は終わりだ。起訴するぞ」
デューイの喜んだ声に新しい部下は訝しげに声を上げた。
「しかし、これではベルソンヌだけにしか打撃を与えられません」
「高田財閥の押収した資料とベルソンヌ財閥から押収した資料があれば十分打撃はあたえられる。つながっているはずだ」
「それに査問自体は維持しないと資料を破棄されるのでは?」
「おっとそうだったな。ではどうするか……」
「いっそすべてを起訴すれば良いのでは」
「すべてを?」
部下の提案にデューイは深く聞こうと尋ねた。
「神聖帝国と関わりがあったわけでしょう?それに馬車には保険がかかっているはずです。これは輸送状況も不明ですしもしかしたら船舶輸送かも知れませんよ?」
「おお、つまり利敵行為に全財閥が関わった可能性があるわけだな!よし、危険が予期されるから法務省の武装部隊を動かすぞ!ことは重要だ、事後報告で許されるだろう、外患援助罪でもなんでもいい、少なくとも外患罪だと言え!財閥に外患罪で強制捜査をしろ」
「いつですか?」
「今すぐ、直ちにだ!」
登城したリリーナは農務大臣室にフーヴァーとロスロップがいる話を聞くと直ちにその場所に向かっていた。
彼女が入ると2人は助かったと言うにような表情でリリーナを見ていた。
「ことは深刻でね、ご存知でしょうが」
「ロスロップ農務大臣のやっていた輸出貿易で利益を上げる行為を悪用されていた場合我々は非常に大きな問題に直面することになる。例えば農作物の馬車が行方不明になったとかボロ馬車に変わっていたとか」
「ああ、そうですか、時期が被っていましたのね?」
「ウェラー公爵に押し付けようにもあの人が狂信者を支援するわけがない。どうやって欺いたんだ?」
「金の密輸馬車ではないかという話ですわ。実際は分かりませんけど、戻ってきたことまでウェラー公爵が把握してるか難しいでしょう?」
「ああ、そうか。しかしそれでは……」
そうロスロップがいいかけた途端、ものすご勢いでノックがされた。
「どうした!」
「法務省の武装部隊が動いています!帝都平民義勇軍と国民衛兵も!」
クーデター?いやそんな馬鹿なと思いつつも3人は神聖帝国を利したとしてルイーズ大公派閥かそれに賛同する反神聖帝国の過激派、特に神聖帝国亡命者が殺しにかかるという事実を否定できなかった。
「近衛は?静観ですの?」
「宮城には向かっておりませんので……」
「ではまだチャンスは有るか」
そうフーヴァーがいった時、またも一人の男がやってきた。
「失礼いたします。トマス・デューイ帝都地方検察庁支部長からシュツッテンファンベルク無任所大臣にご連絡です」
「内容は?」
「ここで伝えても?」
「……近くに」
そう言ってリリーナは2人から少しだけ離れて体を傾けていた。
「各財閥を外患罪で強制捜査します」
その言葉を聞いたリリーナは思わず緊張がほぐれて笑いだしていた。
ひとしきり笑った後に2人に何が起きたか説明すると2人もまた緊張がほぐれたのか笑い始めていた。
「ああ、これで終わったな。外患の証拠がなくても別のものがでてくるだろうさ」
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