世界観に惚れこむ、どっぷり浸かる。そういう言葉をとにかく使いたくなる作品でした。
「霊」というものの存在を目や耳などの「五感」でそれぞれ捉えることができる「異能」を持つ主人公たち。
異能ゆえに強烈な生きづらさに悩まされていたが、同じような境遇を持つ仲間たちと出会うことにより、少しずつ自分の居場所を獲得していく。
本作の特徴となるのは、超心理学やオカルトなどの分野にまつわる、非常に豊富な知識の数々が出てくることだと言えます。
幽霊とはどんなものか。悪霊が人を襲うとはどんな理屈によるものなのか。
そうした現象を理論的に突き詰めていくことにより、「その世界」についての理解を固めていくことになります。
現実に世の中では霊とは何かを理論的に研究する学問もあり、読者は本書を読み進めることにより、そうした学術的にして理性的なアプローチの仕方を獲得していくことになるのです。
通常のホラーとは一線を画する、学術理論に基づいて読まれる心霊世界。それは確実に新しい視点や考え方、強烈な知的好奇心を読者に与えることでしょう。
「霊も人間と同じで暗示にかかりやすく、悪霊だと噂されれば次第に悪霊と化して行く」など、実際にありそうだと思えそうな話も出てきて何度も感嘆させられました。
その上で登場人物たちの魅力も強く、辛い世界で生きながらも、主人公たちの掛け合いにどこかホッとさせられる場面も。
仲間との絆。そして豊富な知識による霊への理解。様々な形で読者をもてなしてくれる、唯一無二な手触りを持つホラー小説です。
まずレビューとしては好ましくない指摘から始めさせてください。本作の作者は他作品にて文体や構成など、文意・物語だけでない、伝え方そのものを変調させる実験を行ってきました。ですが本作は文体や語り口は保守的です。それは娯楽作としては読者に安全な構造をしています。
そこで語られる物語は、実に非現実的でありつつ薀蓄に支えられて、フワフワとファンタジーしておらず、現実味が共存しています。こちらも本作の作者の真骨頂です。
この世には、大多数が作る文化や「空気」からはみ出ている人が少数います。生きていて苦しく、しかし多数派を変えることはできず、「メサイアコンプレックス」を叶えることもできない、世界の中で疎まれているのに世界より小さくて「嫌なら出てけ」と蔑まれても出ることすらできない、苦しい場所に居続けることを定められた、あぶれ者。
主人公は、話が展開するにつれて、そのようなあぶれ者であることが分かります。その主人公が、同じように世界であぶれた人達と出会います。
彼らは居場所があります。しかしねぇ、あぶれ者がいられる場所が最初から在ったはずがないじゃないですか。
居場所は何であれ人が作るもの。彼らは彼らがいられる場所を作っていました。大変な努力の上に。
この世から逃げることもできないあぶれ者が自分の居場所を自分で作る、この物語は、同じように現代日本であぶれている人に必要だと信じます。実は同じ目的の物語は現代日本に多く在り、これは大きな流れの一滴という位置付けです。評者は、もっと他の作品を読むべきでしたが、この物語に出会って助かったと思います。
評価が分かれるとしたら、続編をいかに作るかでしょうか。居場所を作った主人公達は、自分達を苦しめた外界といかに関わるのか。どのような答えが示されるのか、楽しみにしています。
これは、人生を打ち砕かれた者たちの
物語ではない。また、自らの在り方に
絶望した者たちの物語でもない。
彼らの超越した感覚は『何か』が突出した
分、別の『なにか』を持ち得ない。
それも、苦しいほど致命的に。
『超能力』者という括りにある彼らの
知られざる苦しみは、一人では決して
抱えきれないが、集い理解し補う事で、
重なっては交差しながら強化されてゆく。
恰も、美しい鉱物の精製の如く。
登場人物は皆、とても個性的で魅力に
溢れる。謎も多く、今後どの様に流れて
行くのかはわからない。それでも彼等の
強い『絆』と『縁』は変わらない。
其々が補い相乗し、佳き『何か』を
齎して行くだろう。
因縁も運命さえも超えながら。