第26話 ジューネスティーン達が開発した物


 ジューネスティーンは、最初のフルメタルアーマーを改造したパワードスーツにより、1年生で後期の武闘大会で3年生の首席を初戦であっさりと倒しトーナメントを勝ち進み、決勝戦で次席を倒して優勝していた。

 その時の来賓達の中には、ジューネスティーンの装備していたフルメタルアーマーが通常の物とは違う事に気が付き職員に話を聞いていた。

 職員としても、ジューネスティーンがフルメタルアーマーの改良型で身体の一部を保護する事で一般より強い身体強化魔法が使える程度としか知る者はおらず、当たり障りの無い内容だった事から大半の来賓は聞き流す程度だったが、一部には興味深く聞き何やら考える者も居た。

 ジューネスティーンは、2学年になると2号機を完成させていたが、ギルドとの約束は卒業するまでに提出するとなっていた事もあり、完成させた後は実験を繰り返してデータを測定しパワードスーツのポテンシャルを正確に掴んでいた。

 武闘大会は、ジューネスティーンが優勝した後ルール改正され、パワードスーツの使用は禁止されているので、その後の武道大会でパワードスーツが見られる事は無かった。

 パワードスーツの能力を、校内で完成させた2号機により正確に測った事、以前、ジェスティエンに助けられた時に試し撃ちさせてもらった銃の事を考えると、銃と同様にギルドに目を付けられる可能性を感じていた。

 銃を持つジェスティエンが、国外に出て冒険者活動が出来ず、保護という名の元にメンバーをギルドが手配して常に監視している事を考えているのは、ギルドが銃の技術が外部に出てしまう事を嫌った結果と言える。

 合法でも非合法でも、ジェスティエンを確保し技術を知られてしまった国に対して、ギルドは徹底的な経済封鎖を行うが、銃の技術は、ギルドの存在をひっくり返す可能性が有ると判断していた証拠となる。


 ジューネスティーンとシュレイノリアは、パワードスーツの能力とギルドの経済封鎖を天秤に掛けたら、ジェスティンの銃と同様にパワードスーツの技術を手に入れようと考える可能性もある。

 現に、火薬と銃を開発したジェスティエンは、ギルドの意向により、ギルド本部の置かれている南の王国から出国する事を許されてない。

 南の王国は、ギルド発祥の地で本部も置かれており、ギルドが作る魔道具による交易品の租税により潤っている事から、他国以上にギルドの意向を重視していた事もあり、早々にジェスティエンの保護をギルドに対して約束させられ国内での活動は保証されていた。

 ギルドは、シェスティエンのメンバーも揃えており、他国から秘密裏に接触される事も行なわれないようにして、火薬や銃の技術の流出を防ごうとしていた。

 銃が世界にもたらす影響を考慮し、一国だけが技術の独占する事を防ぐ為、ギルドは冒険者としてのジェスティエンを完全な保護下に置いている。

 銃に対してギルドの対応を考えれば、パワードスーツに関しても同様の判断をされる可能性が高い事から、卒業直前に提出した2号機(Rev .2.00)の評価によって自身もジェスティエンのような立場になりうると考えていた。


 そして、ジューネスティーンは、魔法紋を利用したジェスティエンの銃に類似しているニードルガンを完成させている。

 ニードルガンは、一般的な銃とは異なる点は、銃弾の代わりに複数の針を撃ち出す事によって、射程は短いが広範囲に打撃を与える事ができる。

 ニードルガンの弾丸は、ショットガンの粒状の弾が針に変わった物と言ってよい。

 先端が細く尖った針が高速で撃ち出される事により貫通力が高い事から、射程内であれば被弾した部分は粉々に粉砕されてしまう。

 ジューネスティーンは、ジェスティエンの銃をコピーして魔法紋の発動で爆発させて弾丸を撃ち出したが、試し撃ちした銃とは違い、撃つ度に方向がズレてしまい思った通り的に命中できなかった事から、悩んだ結果として弾丸ではなく束ねた針を弾丸として撃ち出す事を閃いた。

 的から外れたとしても複数の針を撃ち出す事によって、ばらけた針が広がって外側の針の弾道が曲がっても、大半の針が的を捉えられるようにした。

 束ねられた細い針の先端と質量は、撃ち出された後、徐々に広がっていくが、ジューネスティーンが、最初に用意したジェスティエンの銃弾を模した弾丸より、複数の針の束が真っ直ぐな弾道を描き徐々に広がっていく事により、的の中心を貫通させるのではなく的全体を粉砕していた。

 ジューネスティーンは、ジェスティエンの銃を模倣したニードルガンを完成させたがギルドに知られた場合、ジェスティエンのように国外に出れなくなる可能性が有ると判断し、ギルドにはニードルガンの存在を伏せていた。

 火薬を使う必要が無い魔法による銃の開発に成功した事により、銃弾に火薬を詰める必要も無く、金属の針を束ねた弾丸を用意するだけで良くなった事は、魔法紋の小型化だけを考えれば良い。

 火薬という特殊な薬品が不要となり、魔法によって弾丸を撃ち出す銃が作れる事を証明してしまった事から、その重要性に気が付き2人だけの秘密にしていた。

 しかし、ジューネスティーンとシュレイノリアが、ギルドに隠していたのはニードルガンだけでなくホバーボードも有った。

 ホバーボードにおいては、パワードスーツの外部装甲に用意した冷却用の風魔法によって、偶然床を滑空したのを見て思い付いた。

 ボードの作成はジューネスティーンが行ったが、動力や制御においてはシュレイノリアが魔法紋を用いて完成させる。

 ジューネスティーンは、パワードスーツの製造も有った事からボードだけを作り、そこにシュレイノリアが魔法紋を描き実験して完成させた。

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