深層 2

 夕方四時半、さぎりがレンカランクルを連れて彰人の家にきた。寝癖もそのままで、鞄のポケットにはプリントが乱暴にねじこまれている。背後からレンカランクルが顔を出すと「はぎはずっと寝てたぞ」と言って居間に駆け込んでいった。いつものように鋼に「電源まだか」と急かす声が聞こえてくる。

「ハギ、ココア。どうぞ。今日は上がる時間ないだろ」

「ううう。いただきます。ひさしぶりに寝坊したよお」

 さぎりは彰人から受け取った極甘ココアをおいしそうに飲んだ。いつも家に上がってスイーツ補給してから登校しているが、今はその時間がない。

「寝てたのかよ。あ。まさかお前、あれから行ったのか」

 さぎりはあくびをしながら首を横にふる。

「出てない出てない。疲れてたからすぐ寝たもん。でも今日はやたら眠いんだよね。お兄ちゃんの電話で起きたけど、また寝ちゃったし。ココアで目が覚めた。糖分大事だわ。アキト、学校でプリント見せて。課題ぜんぜんやってない」

「いいけど。どれ」

「へ」

「今日出すやつは三枚あるだろ。英単語と現代文と生物」

 さぎりは空のカップを落としかける。

「どどどどうしよ、英単語しか持ってきてない」

「わかったわかった。ハギん家に取りにいってから学校な。それよりハギ、鋼さんから聞いたか。ポスターのこと」

「うん。分析に出すことと、街灯チェックするんでしょ。やるやる。調査の手伝い、大好き」

 今日の午前中、彰人は鋼にポスターを見せた。見せられたほうは紙を舐めるように見る。

「これ、どうした。学校から持ってきたのか」

「ううん。昨日、さぎりを送ってく途中でさ。切れた街灯に貼ってあった。帰ってすぐ寝たから、ガネさんに報告するのを忘れてた。これ、レンカランクルが毒がついてるって言うんだ」

 彰人は街灯が切れた状況からポスター剥がしたことまで説明した。さぎりが妖怪に変化したことと自分が益妖怪を殺したことは言わず、レンカランクルが連れてきたところ死んで塵になったと話した。

 聞いた鋼は硬い表情でうなる。

「ガネさん、なにかわかった」

「このポスターな、深世界の扉だ。このぐるっと描かれた蔦と蓮の花のデザイン。特に花びらを見てみろ。どの花びらにもまんなかにマルが入ってるだろ。これはカミサマの目。あそこのトレードマークだ」

 書かれた花すべてが目だと知ると、彰人は腰が引けた。数が多すぎる。

「うええ」

「たぶん店員が信者で、勝手に書いて貼ったんだろうな。人にはわからないけど関係者にはわかるデザインだし、裏にあるべき許可印がない。フツーなら許可印どころか勧誘疑いで警察から厳重注意もんだ。協会にも報告が入ってるだろう。でもこいつは住んでいる俺でさえ気づかなかった。電柱のペット探してますポスターまで見ていない。盲点だった」

「毒がどこ塗られてるか、カルネモソミはわからないって言ってた」

「俺もわからんな。ちょっと頭領に聞いてみるか」

 鋼は小瓶を取り出そうとして、戻した。

「やめた。妖怪に効く毒なら、頭領はダメだ。しかたない、こいつはこのまま協会に送って分析に回す。もらっていいか」

「いいよ」

 鋼はポスターをビニール袋に入れる。

「深世界の扉ってヤバいね」

「いや、まだ断定はできないかな。今はこれひとつだけだし」

「そっか」

「こいつをもう少し集めたいところだね。それなりの数の証拠があれば協会も動くし、警察も器物損壊で調査するだろ。問題はどうやって集めるか。使役してる妖怪を使うわけにいかないし、式神じゃ毒かどうか判別がつけられない。ひとが行って確認するとして、益妖怪の活動時間じゃないとな。しかたない、レンレンが帰ったあとで俺が」

 彰人は手を上げた。

「ガネさん、俺、帰りに何本が見てる。切れかかってるやつ」

「おっ」

 そこから話は進み、彰人は今夜から三日間、登下校中に街灯チェックをすることが決まった。街灯の位置、点滅状況、ポスターの有無を確認して、帰宅してから報告する。ただし、あくまで通学路上。路地奥に見つけても街灯には近づかず写真も撮らず、現場からメール報告も禁止。

 彰人の不満顔に、鋼は笑う。

「うろうろ歩いててみろ、すぐに勘づかれて逃げられるぞ。確実にシッポをつかみたいなら我慢して、知らないふりが一番いいんだ。それと、さぎりとふたりでやってほしい」

「それはいいけど、なんでわざわざふたりでやるの」

「あいつの目の前で妖怪が死んでるんだろ。今までも似たようなことがあってさ、また突っ走って暴走されたら大変だ。虐待疑いでひとん家まで行ったんだぞ。それとレンレン。気を抜いても、あれで闇の神だ。腹の底でどう思っているか想像もつかない。だから、さぎりが調査協力をやってるとおとなしいと思う。少なくとも邪魔はしないだろう。そういう理由」

「そっか。わかった」

 鋼はポスターを指で弾いた。

「アッキー。これは俺の直感。深世界の扉には近づくな。調査協力も今回だけ。あとは知らないふりして逃げてほしい。嫌な予感がする」

「わかった。でも協力しなくていいの。できることはやるよ」

「いい、いい。元社員が暇してるから、調査の続きはそっちに回すよ。それに、あいつらにもおまえらに恩返しさせてくれ。元社長からも頼む」

 彰人は笑って快諾した。なにより今、角と彩がどこかにいて、仕事ができるくらい元気なことが嬉しかった。最後に会ったのは、病院のベッドで寝たきりの自分に謝罪にきた時だ。勝ち気顔の角はしょんぼり顔だったし、痩身モデルのようだった彩は影も透けそうなほど痩せていて、逆に心配になった。

「そうだ。ミラくんにも扉のことは内緒な。なにも言わないほうがいい」

「え」

「三人いたのに、彼にだけ執拗だった。たぶん扉と関わっている」

 彰人はそれにも了承したが、納得はしていなかった。仲のいい友達に危険が迫っているなら、警告したほうがいいに決まっている。

「あのさ、ハギ。ポスターのこと、ミラに」

「ダメだよ。絶対ミラに言っちゃだめ」

 さぎりはきっぱりと言った。

「なんでだよ。ミラだぞ」

「だ、か、ら、言わないの。よく言うでしょ、信用してる人とは宗教と野球の話はするなって。あれは友達をなくすからだよ。アキトは自分の家のこと、友達から口出しされたいの。あたしは嫌。うちはシングルで、お父さんは杖つきながら働いてるよ。うちはこれでいいの。それでもうるさいのがいてさ、父親にさぎりは重荷だの、子どもは就職しろだの、言いたい放題言ってきて、最後にあなたのためなのよとか言うんだよ。余計なお世話だっての」

「そうだな」

 彰人が小四の頃には両親ほぼ不在で、一人暮らしが当たり前だった。その状況に世話好きの親戚や大人が来ては彰人に同情し、両親にダメ出しをして満足気に去っていく。あなたのために、と何度聞かされただろう。あの押し付けがましい言葉を吐く大人は大嫌いだ。

 同時に、自分自身に吐き気を覚えた。警告は時長のためを思ってのことで、あの嫌いな大人と変わらない。ミラのためと言っておきながら自分のことしか考えていなかった。嫌気がさす。

「俺、サイテーだ」

「そお? アキトが心配する気持ちはわかるよ、あたしも心配だもん。でもさ、ミラは扉が危険なことは知ってるよ。だから言わなくても大丈夫」

「ミラが知ってるって、なんでそう言えるんだよ」

「通報を止めたからね」

 さぎりはカップを彰人に返した。

 居間から「時間だいじょうぶなのか」と声をかけられ、ふたりはあわてて玄関を飛び出した。出る予定時間からかなり過ぎていた。


 教室に入る前、時長にどう話しかけようか迷っていた彰人だったが、相手は学校を休んでいた。一瞬不安になったが、風邪ということだった。

 心配事が杞憂に終わり、彰人はぼんやりと時長の席を見ていた。彰人の机を陣取ったさぎりは課題プリントを書き写すことに集中している。そこへ意外な人物が話しかけてきた。

「字見さん。時長さんがいらっしゃらないと、すこしさみしいですわね」

「あっ。はい」

 東野はあいかわらず優雅なほほえみを浮かべ、対して彰人は変な汗をかいた。ほとんど話したことがない、それも上品なお嬢様だ。そもそも彼女のような女子が田舎の高校にいることがふしぎだ。妖怪に関わっているから、いるのだろうけど。

 彼女は眉をひそめる。

「昨日、時長さんと一緒に下校されましたよね。帰り道はいかがでしたか」

「い、いかがって」

 慣れない相手と聞き慣れない言葉に動揺して、うまく口が回らない。さぎりが吹きだしたので、軽くイスの足を蹴った。

「昨日、帰りに誰かとお会いしませんでしたか」

「昨日の、帰り、ですか」

「はい。昨日です」

 東野が顔を近づけてきた。おおきな目で、まつげも長く、吸い込まれるようだ。長い髪がレースカーテンのように頬をなで、彰人はやわらかな香りに包まれた。目が離せない。

「思い出してください。昨日の帰り道です」

 昨日の帰り道そうだ帰り道だ昨日なにがあったのか思い出さないといつもと変わらない道でいつものようにさぎりと時長と喋っていて笑って

 あきひと、声を聞くな。

 カルネモソミが呼んだ。腕に静電気の痛みが走る。カルネモソミが警告している。なんだよ危険なことなんてなにもないし今は昨日の帰り道を思い出さないと

「アキトったら!」

 彰人は我に帰った。さぎりがにらんでいる。

「聞いてるの。ここ、問四、なんて書いてんの。教えてってば」

「ああ、うん」

 なにがあったんだろう。いつのまにか東野は身を引いていて、彰人を見てにっこり笑った。

「今はいいです。字見さんはいそがしいようですし」

「昨日の帰り、あたしもいたよ」

 さぎりは顔も上げない。

「ミラはさっさとバスターミナルに行ってた。なに、ミラのことが気になってるの」

「別に」

 態度一転、東野は何事も無かったかのように席に戻った。彰人は呆然としたが、さぎりは気にも留めず「ここも教えて」と急かした。

 授業開始のチャイムが鳴った。彰人も東野を気にしないことにした。気分屋の女子は昔からいる。


 今日の下校はいつもと違ってわくわくした。彰人とさぎりは意気揚々と校門前に立ち、辺りを見渡す。郊外に位置する校舎からは街並みを一望できるからだ。本当は校舎最上階の三階廊下から見たかったが、あいにく放課後は立ち入り禁止エリアだったので諦めた。

「見た限り、異常なし」

「よし。行くか」

「行こ行こ」

「あの。字見さん」

 ふたりは飛び上がった。見ると校門の陰から東野が恥ずかしそうにこちらを伺っている。

「驚かせてごめんなさい。字見さんとお話がしたくて、お声をかけました。あの、ふたりきりでお話がしたいので、こちらに来てください。お願いします」

「無理です。俺、すぐ帰るんで」

「だいじょうぶです、お願いします。すぐ近くですし、お時間もかかりませんから。さ、こちらです」

 細い手が彰人の腕に絡んで、離そうとしない。彰人が振り払う事をためらっているうちに、彼女はずかずかと歩き出した。引きずられていく彰人をさぎりは「先に帰ってるね」と見送った。

 着いた場所は確かに近かった。校舎裏からさほど離れていない。

「ここです。驚きました? 静かでしょう、穴場なんですよ。私も見つけたばかりですけどね」

 そこは古い小さな公園だった。雑草に埋もれた滑り台と鉄棒、ベンチと小さな砂場がある。伸び放題の植木は周辺の景色と明かりを遮り、一層ここを薄暗くしていた。確かに、ここなら誰にも気づかれないだろう。同時に、ここは妖怪が潜んでいてもおかしくないだろう。折しも夜九時前、妖怪の活動時間だ。

 東野は入口で手を離すと、雑草を気にすることなく公園に侵入していく。埃もかまわずベンチに腰をかけ、隣を指した。連れてきた人物に、並んで座ってほしいらしい。それを彰人は無視して、離れた砂場に立った。

「あら、まさか私を警戒してますか。だいじょうぶですよ。私はなにもしませんから」

「ここでいい」

 もちろん彰人は東野を警戒していた。学校での彼女の態度や強引な行動のせいもあったが、そもそも夜の公園に来ること自体がおかしい。島民には狂気の沙汰ともいえる。公園が見えたときからカルネモソミも警告していて左腕が痛い。

 しかし東野は、まるで散歩にでも来たかのようにベンチに座って足をぶらぶらさせ、ふわふわした髪をいじっている。東野は妖怪を知らないだけかもしれないが、彰人は薄気味悪さを感じて身震いした。関わりたくないとまで思う。一分でも早く帰ったほうがいいだろう。敬語を使う気も失せた。

「話ってなに」

「はい。私、字見さんを認めることにしました」

 怪訝顔の彰人に、東野はくすくす笑った。

「今日、お話して確信しました。字見さんは特別な人なんだって。素直で、誠意があって、聡明な人。あの人たちと大違い。あなたなら私の話を理解してくれる人だって認めました。これはすごいことなんですよ。今まで私が認めた人って本当に少ないんですから。字見さんは光栄に思ってくださって構いません」

 彰人は黙っていた。反論や質問で帰る時間が延びることはしたくない。

 東野は声を落として言った。

「あの。驚かないでくださいね。私、根源に会いたいんです」

「ふうん」

 間をおいて、東野が驚きの声を上げた。

「ええっ、驚かないんですかっ」

「人それぞれだし。そういうの考える人もいるんじゃないの」

 彰人は顔を隠すようにうつむいた。毎日根源に会ってプリンを出している自分が、今どんな顔をしているのかわからない。足で砂に絵を描いてごまかした。

 東野は感動に身を震わせる。

「ああ、やっぱり字見さんなんだわ。あなたは私の本当の理解者。予言のお導きは正しかった。ここで私を理解してくれる人に会える。みんな、私が会いたいって言うだけで笑ったり無理だって止めるんですよ。ひどいですよね」

「普通だと思うけど」

「私が会いたい理由もちゃんとあるんです。私が尊敬している人が、根源に会いたいって言ってるんです。でもその人は大事なお勤めがあるから会いに行けなくて、おひとりで泣いてました。だから私が叶えてさしあげようって思ったんです」

「ふうん」

「字見さん。根源がどこに封印されているか知ってますか」

「朝日川だよな」

「朝日川のどこか、ですよね。実は私、その場所を知ってるんです」

 彰人は東野を見た。まさか根源がさぎりに憑依していることを知っているのだろうか。固唾を呑む彰人に、お嬢様はほほえんだ。

「字見さんが言いたいこと、私にはわかります。私を理解してくれる人のことは、私にも理解できるんですよ。今は、根源の場所を知ってるのにどうして行かないんだって言いたいんです。そうですよね?」

 彰人はうなずいた。もちろん違うが、話の腰を折らないほうがいいと思ったからだ。

「実は私も行けないんです。最初、あの人に私が根源を連れてきてあげるって言ったら、あの人に止められました。根源のいる奈落の底は暗くて怖いところよ、それに、あなたがいなくなるとひとりぼっちになる、どうか悲しませないでって。ね、どこまでも慈悲にあふれた優しい人ですよね。でも、それじゃなにも変わらない。私は考えました。考えて、いいことを思いつきました。私を理解してくれる人に根源を連れてきてもらえばいいんです。それはまじめで、素直で、誠意があって、信用できる」

 人差し指が彰人に向けられた。

「字見彰人さん、あなたです」

「断る」

 背中を向けて歩きだした彰人に、東野は目を丸くした。

「だいじょうぶです、奈落の底に行けます。私にはわかる」

「行かない。話は終わったな。じゃあ」

「待って。どうして。腰抜けの時長は行けたのに字見さんは行けないんですか」

 彰人は振り返った。東野は涙をこらえてさらに訴える。

「どうして行っちゃうんですか。私の言葉を信用できないってことですか。字見さんってそんなひどい人だったんですか」

「なんだって」

「字見さん、どうか行かないでください。私のお願いを聞いてください。話を聞いてくれれば、あなたなら理解できます」

「そうじゃなくて、行ったヤツ。名前。時長って、ミラか」

 東野は泣き顔を豹変させ、不快そうに歪ませた。

「そうよ。同じクラスにいるあれ。私はあれの監視もしてるの。裏切り者だから」

 吐き捨てた言い方に、彰人は目を見開いた。高慢さにも程がある。

「本当に行ったのか、あいつ」

「行ったわ。逃げないよう同行者をつけて。でも奈落の入口で、同行者に泣きついて戻ってきたの。報告を聞いたとき、呆れて物が言えなかったわ。女にはあんなにできるできるって言っておいて、腰抜けもいいとこよ。口だけのいくじなしなんて、扉をくぐる資格すらないゴミよ、ゴミ」

 あきひと。用は済んだ。もう帰っていい。

 カルネモソミの言葉にうなずいた。

「俺もいくじなしでいい」

 彰人は踵を返して、公園を出た。奈落の底、根源に会いたいという誰か、入口まで行ったという時長。聞きたいことはあったが、一秒でもここにいたくなかった。

「字見さん。待って。私の話を聞かないと怖いことがありますよ」

 声を無視して来た道を戻る。校門前を抜け、角を曲がったとき。

 あきひとっ。

 カルネモソミの声と同時に腕は勝手に鞘走り、背後から音もなく襲いかかってきた大蛇の首を落としていた。重い音を立てて落ちた頭は、みるみる塵になって崩れる。

 ひとに見られないうちに剣を収めて、放り投げた鞄を拾った。右肩が痛い。カルネモソミの動きについていけず痛めたようだ。

「いてて」

「ほら、怖いことがあったでしょう。おおきな蛇くんが怒ったんですよ。私のお話を最後まで聞かない子は悪い子だから」

 声の主は背後からゆっくり近づいてきた。

「あら、蛇くんは」

「逃げた」

 まあ、と東野は目を輝かせた。

「やっぱり字見さんはすごい人ですね。蛇くんが逃げちゃうなんて、はじめて。あの蛇くんは奈落の子で、私が飼ってるんです。私の言うことを聞かない人には蛇くんにおしおきしてもらうんです。これでみんな考えを改めてくれるんですよ。ここの校長先生も蛇くんにおしおきされたから転入許可をくれたんです。校長先生って頑固ですよね、もっとはやく許可を出してくれれば、蛇くんに小指を食べられることもなかったのに」

 彰人は東野から目を逸らした。

「帰る」

「そうですね。お話はまたの機会にさせてくださいね。私は蛇くんを探してから帰ります。お腹すいてるといろいろ食べちゃうんですよ、あの子。字見さん、また明日お会いしましょうね」

 彰人は歩いた。足は次第に速度を上げ、最後には走っていた。のんびり歩いてるさぎりを見つけたとき、さぎりも振り返った。彰人を認めて手を振る。

「アキト。おつかれ」

「うん」

 うん。



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