9. 言葉の強さ

 私たちはきっと。

 言葉に堕とされ、言葉に救われる生き物だ。

 自分のことに怒ったり、他人のために何かを言うのは、それなりにエネルギーが必要なこともある。


 私も、私なりに言葉を尽くしてきたつもりで。

 自分の気持ち、自身や兄の障がいのこと。家の問題。誰かの呟きや、心の叫び。

 ずっと綴っていたら、こんな言葉をいただいた。


「精神の障害を持つ者として、身につまされる思いになりました」

「たくさんの方に読んで欲しいと思いました」

「どうかこの世界の矛盾が、昨日より今日、今日より明日に、少しでも解消されますように」


 ほぼ自己満足のように綴っていたものだったから、とても驚き、嬉しく思ったものだ。



 そして、誰かに届けたく綴った言葉や、本人の代わりにと指で叩いた、相手に伝わりはしない言葉。


「私はけっきょく「何も実になっていない」のかなと思います。

それでも。

重ねてきた年月の分の、信頼関係のようなものは、あるのだと信じたいな」

「彼らがあなたに言ってきた罵倒が、そう遠くない未来に、そっくりそのまま還ってくることを、強く望む!」


そんなものに対して。

「何も無駄になってないと思います」

「兄弟のために言葉を教えている姿が、清々しく神々しいです」

「胸がスカッとしました」


 どうやら、私の贈った言葉たちは、しっかり相手に届いていたらしい。そして、褒められてこそばゆい感覚にもなる。


 こんな風に。

綴ったものが、誰かに響いて。響いたひとの言葉が、私に還って響いてくれる。

 とても良い循環だと思った。

 

 改めて思う。

「言葉とは、強いな」と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る