第14話 ハーレム主人公の運命力
昨日の事がまだ頭に残りながらもいつものように宇佐美に話しかけると、宇佐美は昨日の事を思い出したのか少し恥ずかしそうにしていた。なんとなく理由は分かるが、昨日既に謝っているので何回も謝らなくても良いと思い、俺は気にせずすぐに学校に行く準備をする。
俺はいつもの様に朝ごはんを食べたり、髪も整えたりしているが、宇佐美はかなり恥ずかしがっているのか目が合う度に顔を赤くして視線を逸らす。少し気まずい空気にはなっているが、すぐに一緒に登校する。昨日体育祭で一緒に登校した事もあり、今日も宇佐美と共に教室まで一緒に登校した。登校途中も宇佐美は少しよそよそしく、距離が空いたように感じてしまった。しかし原因は俺なので、今の宇佐美に何か言う事は出来ない。
「んじゃ、今日も頑張れよ…」
「そっちも頑張ってね…」
俺と宇佐美は一言交わして、自分の教室に入ると教室に入るなり、すぐに竹内が声をかけてきた。
「明日打ち上げだけど〜ちゃんと覚えてる?」
「覚えてるよ、昨日話したばっかじゃん」
何故か俺を1日経ったら忘れる人だと思っているのか、竹内は度々こういう感じで声をかけてくる。選抜リレーの時もそうだったし。
「結局行くの8人?田中、佐々木、俺、竹内、橘、伊織、樋口、宇佐美」
「そ〜、それ以上多くなると多分席無いし」
「おっけ〜分かったわ」
「ちゃんとお金もってきてね〜?誰も奢んないから」
「分かっとるわい」
一体竹内は俺を何だと思っているんだ…ホームルームが始まったので、とりあえず席に着く。するといつものけだるげなあの教師がやってくる。
言い忘れていたが、あの教師の名前は
「んじゃ体育祭も終わって、次はすぐテストだからな〜ちゃんと勉強しとけよ〜」
その一言だけ伝えてさっさと他の事も済ませ、ホームルームを終わらせた。ほんとにあんな教師が担任で良いんですかね…
授業を受けて休み時間になると、俺の席の周りにいつものメンバーが集まってくる。俺の席の前は伊織の席なので、そこと俺の席の間の真ん中を空けて雑談し始める。
「てか、うめちゃん大丈夫なの?テスト」
「まぁヤバいかもな…」
「梅ちゃん勉強ヤバいもんね〜あたしチラッと見た時、ヤバい点取ってた記憶あるもん」
「まぁなんかあったら私教えるよ?」
「橘〜マジ神」
橘はいつも救いの手を差し伸べてくれる。何かあったら宇佐美と橘に助けを求めよう。橘も宇佐美も勉強はかなり出来るのでとても頼りになる。
今日も特に何か起こる訳でも無く、昼休みに突入した。すぐに俺は佐々木と田中を昼飯に誘って食堂に行く。俺が飯を食べ始めると、佐々木が申し訳なさそうに手を挙げる。
「どした、佐々木」
「いや…ホントゴメンなんだけど、明日の打ち上げ行けんくなった」
「えぇ…マジ?なんで?」
「明日のバイトのシフト、人が足りないらしくてさ…この前代わってもらったから断れねぇんだよ…」
まぁ…バイトのシフト問題は仕方が無い…今後の人間関係を上手く築く為にも、こういった事はちゃんとしておいた方が良い。という事で明日の男子は2名になってしまったのだが、ラブコメ漫画等を読んでいる俺はこの先の展開を何となく察している。
ラブコメ特有の男子が排除されていく現象ラブコメじゃよくある事だ。それに田中の今の申し訳なさそうな雰囲気を見れば分かる。案の定田中も佐々木と同じ様に手を挙げた。
「俺も明日、家族で飯行く事になって…」
「あ〜はいはい、わかったわかった」
「「マジごめん!!」」
そうして結局明日の打ち上げは6人に減り、その内男子は俺一人だけだ。正直行く気が失せ始めてるが…だってこんなん俺の立場かなり狭いよ…このままじゃ女子4人席と、その中から余った女子1人が俺と同じ席になっちまうよ…
「てか、その事竹内とかに言ったん?」
「一応言った…納得はしてくれたけど、マジ申し訳ねぇ…」
俺は竹内が食堂に居ないか見回してみると、竹内、橘、伊織がご飯を食べていた。
「おい、アイツらの所行くぞ」
そう言って俺達はご飯を持って、3人の隣に行って俺が一言声をかける。
「ごめん竹内、隣良い?」
「お、良いよ〜」
「てかコイツらから聞いた?明日行けないって」
「聞いたよ〜」
「ホントもっと早く言ってよ〜男子梅ちゃんだけになっちゃったよ?」
「てか良かった?男子俺だけで…あれなら俺行かないけど」
「え〜梅は来てよ…せっかくなんだし」
橘はとても寂しそうに俺が行くのを辞めようとするのを引き止める。俺は可愛い女子に直接こういう事言われるとほんとに弱い。
「まぁ…行くわ…てか席はどうなりそうなの?6人だとかなり中途半端になりそうだけど」
「あ〜それは大丈夫〜6人席あるらしいからそこ予約した」
「竹内ってこういう時準備良いよな」
「分かる、俺も体育祭実行委員の時殆ど竹内が準備してくれてたし」
「佐々木はもうちょいしっかりしろほんとに〜!」
そんな雑談をしてご飯を食べ終わり、昼休みが終わった。そして授業も終わり、放課後になったので鞄を持ち上げて帰ろうとすると、前の席の伊織がこっちを向いて引き止めてくる。
「あ、梅ちゃんちょっと待ってね。この後優香が明日の最後の確認したいらしくて」
「あ〜分かった」
俺は立ち上がりかけて中腰だった腰を下ろして椅子に座り、竹内と橘が来るのを待つ。ある程度皆が教室から出た後に橘と竹内もやってくる。
隣の教室に向かう竹内達について行くと、樋口と宇佐美も居た。俺、竹内、橘、伊織、宇佐美、樋口…なんと言うハーレムだろうか。この中に居る全員、方向性は少し違えどめちゃくちゃ可愛い。俺はもう何となく慣れてしまって居たが、さすがにこの人数だとこの輪の中に俺が居るのがおかしく感じてしまう。
全員集まったのを確認してすぐに竹内が最後の確認を取る。
「じゃあ、明日はこのメンバーで食べに行くけど大丈夫そ〜?」
竹内が確認を取ると、全員頷いて竹内は笑顔になる。このメンツで明日は焼肉に行くというのは、男子からすれば夢のような時間でありつつも、とても居ずらい状況でもある。並の男子なら居ずらいという方が勝ちそうな状況だが、それでも俺は少し楽しみだ。
その後は解散して、各々帰り道を歩く。と言っても全員駅までは一緒なので、駅に向かう。
「あ、そうだ竹内。明日っていくら位あれば大丈夫そう?」
「あ〜4000円はあれば確実って感じ!3000円ちょっとだから余裕もって持ってきてね〜」
改めて思うが、高校生で3000円の食べ放題はやはりハードルが高い気はする。俺の場合ある程度金に余裕はあるが、他の人はどうなのだろうか…宇佐美とかはバイトしている様子は無いが大丈夫なのだろうか…後で聞いてみよう。
「じゃあ明日は19時に予約してあるから、18時45分までには店に来てね〜」
「分かった」
俺と宇佐美以外は、別の方向の電車なので駅のホームで別れる。そして宇佐美と2人きりになった所で色々質問してみる。
「そういや、3000円ちょっとって割と高いけど大丈夫そう?」
「ん!全然大丈夫だよ!!」
「バイトとかしてないと思うんだけど、今は親からお小遣い貰ってるの?」
「そう!!てか、梅野もバイトとかしてないと思うけど親から貰ってるの?」
「あぁ、俺は普通に自分で稼いでるよ」
「そうなの!?いつ稼いでるの?」
「動画編集して、その動画上げて稼いでる。大体月8万とか位はね」
そう。俺はパソコンで色々動画編集をしてそれで楽に稼いでいる。8万円もあれば高校生ならある程度生活に余裕は出来るし、ちゃんと103万の壁も超えないギリギリだ。というか時給が良い。動画を上げて放置しとけば勝手に入ってくる。編集時間もあまり長くないのでかなり楽だ。
「すご…」
「だからまぁ…金はあんま気にしなくて良いよ。宇佐美はバイトする予定とか無いの?」
「バイトかぁ〜私、人見知りだからちょっと不安かも」
「案外やってみたら人見知り無くなるかもよ」
「ん〜…考えとく!!」
宇佐美には是非とも可愛らしい制服のカフェのバイトをして欲しい。もしそこに行ってくれたら、俺はそこの常連になるだろう。
2人で電車に乗って、いつものように帰宅する。最近は一緒に登校する時間や、帰る時間も長くなってきたが、変に噂が立つことは無い。そもそも一緒に居るのが長いからと言って、そういう噂が立つのは早計だ。というか俺からしたらそういう噂立っても全然良いんですけど!!逆にそれ待ちな所あるんですけど!!
もうお互い特に警戒すること無く、一緒にマンションに入る。気づけば朝少し気まずそうにしていた宇佐美も、いつの間にか元に戻っているしいつもの距離感だ。忘れているのかもしれないが、変に思い出させてまた距離を取られるのは普通に傷つくので触れないようにしよう。
そして次の日、2人で打ち上げの準備をし始めた
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