第16話 ヒフガへ⑤
「ディラと話せるのか?だって」
ハイゼの言葉をディラが通訳してくれた。当然、魔法による僕とディラの無音通信だ
「ニールニマホウヲオシエテモラッタ」
先程のケトンのときと同様、ディラから伝わる音声を発声した。まるで、始めて英語を習った時のようだ
「お前、戦士なのに回復魔法が使えるそうじゃないか、それも直ぐにニールに伝授したらしいな」
ディラが受信したハイゼの言葉を僕が魔法で読み取るややこしい会話だ。おまけに、ディラは言葉がしゃべれないので、僕が伝えたい言葉をディラに伝え、その言葉を通訳してもらい、魔法で読み取り、言葉を模音してハイゼに伝える。
早くこちらの言葉を覚えたいものだ。言葉に乗る感情が全く伝わらない
「ヤイ」
合意を示す言葉は覚えたので、ディラを介さず答えた。ちなみに否定の言葉は“イヤ”で、奇跡的に日本語と似ている。他にも挨拶の言葉と、お礼の言葉は最初にニールから教えてもらった
「お前、本当に昔のことは覚えていないのか」
「ヤイ」
ハイゼの目は僕を疑っている。記憶が戻れば自分たちのパーティを攻撃するかもしれないから、パーティの参謀長としては事情聴取も妥当である。
「報酬を
「ヤイ」
フリダラがそんな高額で取り扱いされていることを知らなかっただけだ。価格を知っていれば考えも変わったかもしれない
「報酬の事は礼をいう」
冷静沈着な参謀長もお金で心が揺らぐようだ。しかし通訳の言葉はぶっきらぼうに聞こえる
「ニールニゼンブヤルトイッタラコトワラレタノデ、ニールトソウダンシテキメタ」
「村長は泣いて喜んでいたぞ」
「ヤイ。ソンチョウニハ、ブキモボウグモ、ゴウカナショクジモイタファイタ」
「全部足しても、報酬の1/20にもならんぞ」
「ソレハ、フリダラヲブジニトドケラレタラデショウ」
ハイゼはディラに何か話した。そして、恐らく今日は何も起きないから、本日は休養せよとのこと、明日、話をさせて欲しいとディラが通訳した。見ると、ラザは既に眠りの中だった。
ハイゼから、ディラにウメサンが信頼できる人かどうか聞かれたと教えてくれた。ニールが起きていないと会話ができないので一方的な話だ。それを僕に伝えるところがディラらしい。もっとも、僕も言葉が分からないので、ディラがそのまま伝えたかは、疑う必要がある。ここは戦場なのである。
はたしてハイゼは異星から来たという、僕の話を信じるのだろうか?とにかく、今晩のディラとの話だ。地球に残した彼女に似た女性は僕をどうするつもりなのか。
とりあえず、死ぬまでは生きていればいいなと考えるだけで、それ以上は深く考えなかった。
〈つづく〉
※連続公開6日目
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