勘が鋭い仲間たち

週明けの月曜日、学校に登校した優希はいつも通り颯馬と湊翔と話していた。




「もうそろそろ2年生になって初めての定期テストの時期か。俺理系科目は得意なんだけど地理と国語苦手なんだよな…なあ今度皆で優希の家で勉強会やろうぜ。」


颯馬がそう提案してきた。




「また僕の家を勝手に集合場所にしてる!別に大丈夫ではあるけど。」


いつも何か事ある毎に優希の家が集合場所になるのである。


湊翔の家はそこまで広くなく、颯馬の家には妹がいるので必然的にこうなっているのだ。




「優希君って理系なのに地理と国語、特に国語は文系の人を凌駕するほどできるんだよね。漢文の読み方とか教えてくれない?」


湊翔は突出してできる教科はないものの、全教科安定して点数の取れるいわばオールラウンダーで正直羨ましい。




「皆それぞれ得意教科がばらばらで丁度いいから分からないところ教え合おうか。ところで勉強会はいつやろうか?」




「今週の日曜日の昼前からでいいんじゃない?どうせ優希朝起きるの遅いし。」


1年近く一緒にいると優希の休日の生活習慣事情は完全に把握されてるのだ。




「久しぶりに優希君の昼ご飯食べれますね!前家に行った時も美味しかったですし今回も期待しちゃっていいですか?」


湊翔も優希の作るご飯が好きらしくこういった勉強会や優希の家に集まった時はとてもテンションが高いのだ。




「ご飯楽しみにしてくれてるのはいいけどメインは勉強会だからね?」


「流石にそんなことくらいわかってますよ、今回のテストは2人に勝たせてもらいますからね。」




僕たち3人はテストの点数がほぼ同じなので毎回順位勝負しているのである。


今までの5回で優希2回、颯馬2回、湊翔1回という具合なので何としても追いつきたいのだろう。


ちなみに3人とも成績自体は優秀で、毎回上位20人に掲載されているのだ。




「それじゃ勉強会は今週の日曜で決定だな。優希、部屋綺麗にしておけよ?」


「流石に急に来られなければ事前に片付けておくから大丈夫だよ。」




ということで約束通り日曜日がやってきた。




朝7時半過ぎ、全身に強い衝撃を受けて優希は起きた。


目を開けるとベットから落ちていたのである。


「痛っ!春宮さん何もそこまでする必要ありませんよね?」


「夏目さん何やっても起きる気配全くなかったので仕方無くやっただけですよ?そもそも平日と同じように起きれば私にこういう風に落とされることもないのですよから。」




学校では絶対に見せることの無い怖さに優希は震えていた。


「…でも流石にこれは……」


「なんか文句ありますか?」


「ないです。ごめんなさい」


「これからも朝起きなかったらこうなることを覚悟しといてくださいね?」


「は、はい。」


もう完全に支配下に置かれているのは気の所為なのだろうか?


とは言っても自業自得といえばそうなのですが。




「そういえば今日は夏目さんのお友達がこの家にいらっしゃるようですね。友達がいるなんて思ってなかったので意外ですが。」


「流石に少しはいますよ?少ないことに変わりはないですが。」


「その方々には私のこともちろん言わないでくださいね?そこに関しては信頼していますけど。」


「バレたら僕の方が面倒になるのでしませんよ?」


「だったらいいです。」




そう言うと桜はコードレス掃除機を持って掃除を始めた。




「そういえば、昨日の夜に今日の朝ご飯の準備しておいたので朝ご飯食べていきます?」


「料理に関してだ・け・は用意周到なんですね。お言葉に甘えて頂きます。」


「そこ強調しないでください、僕が何も出来ない人みたいじゃないですか?実際そうですけど。」


「自覚はあるんですね。」


そんな話をしていたらいつの間にか朝ご飯を食べ終えていた。




「私は1回帰らせてもらいますね。また夜によろしくお願いします。」


そう言うと桜は優希の家を出て丁度真上の彼女の家に戻って行った。




それから2時間近く経った午前11時前に颯馬と湊翔が家にやってきた。




「「お邪魔します。」」




「あれ?優希君の家凄い綺麗になってない?」


「本当だな。そしてなんか女の匂いがするんだが…まさかついに優希にも彼女が出来たのか?」


前とは見違えるほど綺麗になった部屋をみて2人は不思議そうな顔をしている。




「彼女なんて出来るわけないじゃん。親がこの前来て「何このゴミ屋敷みたいな部屋は!私も手伝うから掃除しなさい。」って言われたから掃除したんだよ。」


春宮さんのことは言えないので適当に嘘をついて誤魔化しておいた。




「それにしては食器とかも1人にしては乾かしてある量多いし、信憑性ないですね優希君。」


「まあ優希が言わなくても俺たちは誰か突き止めて見せるけどな。」




(春宮さんが来ている痕跡はかなり消しておいたはずなのに2人とも勘が鋭くてバレそう。結構この状況はまずいなとりあえず話題逸らしますか!)




「それは置いておいて、飲み物もってくるから何飲むか言ってくれる?」


「俺はコーラで。」


「僕はオレンジジュースお願いしていい?」


「はいよっ。」




一時的に話題は反らせたっぽく少し安心したのもつかの間


「昼ご飯の時に詳しい話は聞かせてもらうからな?」


「そうですね。僕もその話気になりますし。」




…とりあえず時間稼ぎはできたもののどうやって乗り切ろうか?


結構誤魔化し通すのはきついかもな…


まあできるだけ何とかしよう。




そうこうしているうちに勉強会が始まったので昼までの間は一旦その問題は置いておくことにした。


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