第35話:旧世紀の遺跡
ルーク達が階段を下り始め早一時間が経過した。
シルラは既にダウンし、ルークの頭の上にダラリと覆い被さっている。
オーロラの額に汗が滲んだ。
「いつまで続くのよ……」
「いくら何でも長すぎるよな」
(さすがにおかしい。それに何か違和感がする)
ルークは壁に切り傷をつけた。
「何してるのよ」
「いや、ちょっとな」
そして再び歩き続けること約十分。
「ねぇ、これって……」
「ああ。さっき俺が付けた傷だ」
「アタシ達もしかして、同じところをグルグルと回り続けてるの?」
「その説が濃厚だ」
二人は一度階段に座り込んだ。
休憩がてらサンドイッチと果実水を取り出し、食べながら相談をすることに。
「どこかにワープポイントがあるのかもね」
「そこを看破すれば階段から脱出できる。何かいい案はあるか?」
「……無い」モグモグ
「……わふ」モグモグ
(これを造った奴は相当性格が悪い。でも残念だったな。俺は幼少期から性悪連中に囲まれて育ってきたんだ。そういう奴の考えは大体理解できる)
「オーロラ、氷でいくつかボールを作ってくれ。できるだけ頑丈なやつ」
「わかったわ」
ルークはボールを受け取り、下に向かって転がす。氷はバウンドしながら奥に消えていった。
「追いかけちゃダメよ?」
「ワン……」
その後この場で三十分程待機したが、氷は後ろから転がって来なかった。
「少なくとも無機物はワープしないようだな」
「ふむふむ」
「ワン」
「で、どうするのよ?」
「俺たちから数メートル先を凍結させながら進む。そうすれば転換点がわかるはずだ」
「なるほど〜」
二人と一匹は壁を凍結させながら下へおりた。
すると……。
「ねぇ、あそこから先が凍らないわ」
「ワープポイント発見だな」
「ワン!」
そのポイントに人間や動物が入ると後ろにワープさせられるが、それ以外であれば何事もなく通過できるのだ。
「どうやって破壊する?」
「破壊する必要はない。ここに掛けられている魔法を"停止"させればいいんだ」
「……できるの?まだ停止は練習中でしょ」
「まぁなんとかなるだろ」
ルークはポイントに近づき、地面に手をついた。目を瞑り、五感を高める。
(ふむ……相当古い魔力を感じる。不思議な魔法だ。古代の叡智ってやつか?)
神経を研ぎ澄まし、〈アクセル〉を起動。
選ぶは加速でも減速でもなく、停止。
三つの能力の中で最も難しく危険な能力。
脳がマグマのように煮え滾り、凄まじい頭痛がルークを襲う。全身から汗が流れ、手が震える。
オーロラとシルラは心配そうに見つめているが、邪魔にならないように声はかけない。
(…………………今だ)
迸る閃光と共に、新たな扉が開いた。
ガチャリ。
古代魔法が停止し、出口が姿を現した。
「成功だ」
「お疲れ様、頑張ったわね!!!」
「ワン!!!」
ルークはまた一歩成長した。
(一度成功させれば、あとは努力でどうにかなる)
その通り。
これは有名な決まり文句だが、一を百にするのはそこまで難しくはない。最悪時間と努力が解決してくれる。しかし零から一を生み出すのは選ばれし天才にしかできないのだ。
ルークはその偉業を今、成し遂げたわけである。
「脳が焼けるかと思った」
「死んだらぶっ殺すわよ」
「ワン」
愛のあるツッコミをもらったところで、さっそく外へ出た。
二人と一匹は目の前の光景に言葉を失う。
「これはまた……」
「さすがに予想してなかったわ……」
「わふ……」
そこには巨大な古代都市があった。
その建築物や大通りを照らす魔導具の数々から、現代よりも遥かに発展していることが理解できる。
「間違いなく旧世紀のものだな」
「歴史的大発見よ!!!」
「ワン!!!」
地面には先ほど投げた氷玉が転がっているが、そんなものには目もくれず、すぐに都市に入った。
「生命反応は無し……と」
「今は夜だけど、昼間になったら太陽が昇るのかしら」
「どうなんだろうな。ってよくみたら、空に何か浮いてないか?」
「え?」
「わふ?」
空には数多の建築物が浮かんでいた。
「どんな技術だよ。やばすぎだろう」
「これが旧世紀なのね……」
「とりあえず民家に不法侵入してみるか」
「お宝探し好きなのよね、アタシ」
「わふ」
一般的(おそらく)な民家の扉を強引にこじ開け中に入ると……。
「見た事ない家具がたくさんあるな」
「でも魔導具は一つもないわね」
特に目ぼしいものは無かった。残念である。
大通りをまっすぐ進むと噴水広場があり、その奥には商店街、そのまたさらに奥には巨大な城が見えた。
「狙い目は魔導具店と城の宝物庫だな」
「装飾店にも寄りたいわ」
「わふわふ」
とその時、遠くから足音が聞こえた。
「民家に隠れろ」
「了解」「ワン」
ドシン、ドシン、ドシン。
窓から外を覗くと、金属で造られた巨人が歩いていた。赤い目を光らせ、辺りを窺っている。
「あれはゴーレムか?」
「壁画に描かれていたやつじゃない?」
「ワン」
「見つかったら襲いかかってくるんだろうな」
「シンニュウシャ、ハッケン、とか言いながら追いかけてきそう」
「慎重に探索を進めるか。マジックバッグの容量はまだまだ残っているからな。盗み放題だ」
「骨の髄までしゃぶり尽くしてやるわ、旧世紀遺跡」
「わっふ」ニチャア
生憎、彼等の辞書には"遠慮"という文字は刻まれていないのである。
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