後日談

レッドグレイブ領の視察が終わり数日後、マルテはフレイルと王宮でお茶会をしていた。

 ギースリーの所業は内々で片付けられた為その後の報告を堂々とする訳にもいかず、お茶会と言う名目でフレイルの下に来たのだ。

「この度はギースリーへの寛大なる処分、誠に有難うございます」

 マルテはフレイルに頭を下げてお礼を言った。

「よして下さい、今私達はお茶会をしているのです。誰かに見られる訳にはいきません」

「申し訳ございません。これっきりでございますので頭を下げる事をお許し下さい」

 マルテは頭を上げてお茶会をしている様に振る舞った。

「それでギースリーの様子は?」

「はい、意識もはっきりし自らの行いを恥じております。ただ……」

「どうしたのですか?」

「邪竜教徒については詳しい事は思い出せずにいるのです」

「それはカミガーナーもそうでした。おそらく記憶を混濁させるスキルを持つ人がいるのでしょう」

「それでは示しがつかないので、今レッドグレイブの兵士が更なる調査をしています」

「分かりました。次の報告を待ちましょう」

 二人の相談は終わった。そして次の話題となる。

「それでオーズについてはどうするの?」

 フレイルの言葉にオーズはドキッとし身を強張らせた。結婚式の後オーズは直ぐに王宮に戻ったので今日久しぶりに会ったのだ。

 出来ればこのまま会わずに二人の関係は自然消滅するかと思ったらそうはいかなかった。

「はい、オーズさんは護衛騎士なのでレッドグレイブ領で暮らす事は出来ないでしょう。私もギースリーの補助をしなければならないので王都に住む事も出来ません」

 この発言にオーズとソニアは少し期待した。

「なので定期的に私が会いに来ます」

「それがいいでしょう。領に家族を残して働いている領主もいます」

「そう言う訳でオーズさん、これからよろしくお願いします」

「は、はい……」

「後そのうちギースリーは事が落ち着いた頃に領主を辞めて私が引き継ぐのでよろしくお願いします」

 まさかの発言に誰もが驚いた。

「ちょ!え!」

「当然です。あんな問題を起こしておいて何も処罰が無いなんて有り得ません」

「それじゃあ俺はどうなるんですか?」

「領主の夫になります」

「無理です!この前までただの平民だったのに!」

「騎士だってそうです、騎士爵と領地を賜るとその日から貴族の仲間入りです」

 オーズはことの重大さに押しつぶされそうになっている。そんなオーズをフレイルはニヤニヤ笑いながら見ている。

「よかったですね、オーズ・レッドグレイブ。貴族になり可愛らしい義妹が出来て」

 フレイルの言葉にソニアも何か言いたげだが何も言えないでいる。アーティも兄がとんでもない事になって焦っている。

「それでオーズさんはソニアちゃんにお兄さんらしい事をしたのかしら?」

「何を言っているのですか!姉上!」

「え?いや、えっと……ソニアちゃん、お菓子買ってこようか?」

 オーズの言葉にソニアはオーズをぶっ叩いた。

「痛い!」

「うるさい!」

「あらあら、仲が良さそうで本当に嬉しいわ、早くルーンちゃんに紹介したいわ」

「あら?ルーンとは誰ですか?」

 マルテの発言にフレイルが質問した。

「あら?ご存知ないのですか?ソニアちゃんたら何にも喋らないのね」

「必要ないかと思って」

 そう言うソニアは何処か気まずそうな顔をしている。

「もう!大切な事です!」

「そんなに大切な方なのですか?」

「ええ、私とソニアの妹です。騎士学校に通っているのですが、もうすぐ卒業して戻ってくるのですよ」

 フレイルとオーズとアーティは驚き何も言えなかった。オーズはマルテとの結婚で二人の義妹ができたのだ。

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