第6話 純和風喫茶
文化祭当日、ユエのクラスは
女子男子と和装で
女子たちは盛り上がって、持ち寄った浴衣に可愛らしく化粧をして準備に余念がない。
ワイワイとしながら男子と一緒になって服装のチェックをしていると、後ろのほうで大きな歓声が上がった。
『わあ!
文化祭ではそれぞれの出展にポイントがつけられる。
評価が高かった出展は校長からプレゼントがあるそうだ。
『ユエは遅番だっけ?』
虎二が制服のままのユエを見る。
給仕は交代制で早番、遅番となっている。
ユエは早番だったが、クラスメイトが彼氏と文化祭を回りたいから遅番と交換したのだ。
『うん、チヤちゃんと換わったんだ。虎ちゃんよく似合うね。格好良い。』
『ありがと。でも遅番だと一緒に回れないな?』
『え?西島さんと回るんでしょ?』
教室のドアに西島の姿を見つけると、虎二は苦笑して手をあげた。
『ちょっと行ってくる。』
虎二と入れ替わりに狼が傍に来た。
もたもたと腰辺りを確認している。
『ユエちゃん、帯のところ直してくれる?なんか変な感じで。』
『あ、うん。』
浴衣が少しねじれているのか、ユエがそこを引っ張ると帯を触っていた狼の手に触れた。
『あ、ごめん。』と狼の両手があげられた。
『大丈夫。よし、これでいい。狼君、格好良いね。』
『本当?あんまり着慣れないから変な感じだよ。ユエちゃんは遅番だっけ。』
『うん。でも楽しみにしてるんだ。一年の時は緊張もあってか楽しめなかったから。』
『そっか。あ、そろそろ時間だな?じゃあまた後でな。』
教室が一気に喫茶店へと変化する。
外で呼び込みをしている男子たちは、楽しそうに女子に声をかけている。
客入りも上々で繁盛しそうだ。
ユエはふらっと一人で回ってみることにした。
皆楽しそうでワクワクが伝わってくる。
いくつか店を回って体育館での演劇を見た後、教室へ戻ろうと歩き出した。
時間的には遅番までには少し早いけど、早番の子たちも回りたいだろうから。
教室に戻り、控え室で浴衣に着替えると早番の子に声をかけた。
『交代するよー。』
なんだか疲れ顔の女子がユエの顔を見て泣きつく。
『ユエちゃん!良かったー。すっごい混んでてさ、少し落ち着いて来たけど遅番も大変かも頑張ってね。』
『うん、お疲れ様。』
喫茶店は結構混んでいる。
待ち札を持った人が席が空くと吸い込まれていくが、解消される様子はない。
ユエはエプロンをして給仕をする。
トレイにドリンクとお菓子を乗せて、番号のテーブルまで運ぶと見知った顔がいた。
『あれ?ユエちゃん。』
生徒会長の
『会長、知り合いですか?』
男子の一人がユエを見て嬉しそうに笑うと霧河は頷いた。
『うん、
『へえ・・・可愛いなあ。』
ユエはテーブルにドリンクを置いて軽く会釈する。
『ねえねえ、如月さん!あとで一緒に回らない?』
男子は少し前のめりになってユエの顔を見た。
『すいません。これから当番なんです。でも誘ってもらってありがとうございます。じゃあ。』
『えー、残念!』と悔しがる声を聞きながら奥の控え室に戻ると椅子に座った虎二がいた。
『あ、ユエ。もう交代したのか?まだ時間あっただろ?』
『うん。でもこんなに忙しいと人手があったほうがいいし、早番の子たち皆クタクタだよ。』
虎二も何度か頷く。
『うん、マジで。なんか女子の客を任せれてて、今は狼がやってるけどあいつすげえわ。』
控え室からホールをチラッと覗く。
女性客に囲まれながら丁寧に対応し、爽やかにてきぱき動いている。
『うわ、凄い。私も頑張らないとね。』
『いやいや・・・ユエは。』と被せるように虎二が何か言おうとしたが、ホールの女子から声がした。
『ユエちゃん、来てー。手が足りない!』
『はーい。』
返事をして虎二に断りを入れるとホールに飛び出した。
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