第8話 食事中




 わかんないや。

 八雲やくもはあっけらかんと答えた。


「いいかい。栞太かんた少年」

「はい。八雲やくも師匠」

「大仙人様が言うには、栞太かんた少年は仙人の素質は一切合切ない。だから、本当なら肩にかけている宝貝パオペイ仙羽衣せんのはごろもが衣服に触れているので、即刻ミイラ化しているはずなんだよ」

「はい」

「でも、その宝貝パオペイ仙羽衣せんのはごろもは、大仙人様が栞太かんたの為に改造した特別仕様の宝貝パオペイなんだ。だから、栞太かんたに限ってだけ、触れてもミイラ化しないようになっているんだ」

「なるほど。大仙人様に感謝しなければなりませんね」

「うむ。今度会った時にでも、いっぱい感謝を述べるがいいよ」

「はいそうします。ところで、八雲やくも師匠」

「何だね。栞太かんた少年」

「先ほど八雲やくも師匠は、『栞太かんた少年は仙人の素質が一切合切ない』と仰いました」

「うむ。言いましたね」

。と言う事は。もしかしたらいつか、仙人の素質が現れるかもしれないのですか?」

「うむ。いい質問だ」

「ありがとうございます」

「そうだね。仙人の素質が現れる可能性もあるんだよ。まあ、現れない可能性の方が大きいんだけど。あっ」


 草が生い茂る大きな岩に飛び乗ってその地を走っていた八雲やくもは、見つけたよと声を弾ませて言った。


「え?」


 栞太かんたは心臓が飛び跳ねては、やる気が急上昇した。

 なんたって、唯一無二の相棒を癒さなければならないのだ。

 大仙人様に選ばれた己が。

 よーし頑張るぞ。

 栞太かんたの目にはまだ相棒の姿は見えないので、目を凝らして探そうとした時だった。



 八雲やくもが言ったのだ。

 震霆しんていが食事中だから、次々に飛んでくる雷に気を付けて。

 これまたとっても軽い口調で。




「まあ、宝貝パオペイ仙羽衣せんのはごろもがあるから大丈夫かっ」

「え?」




 え?











(2024.3.7)



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る