めざめる力
俺とミトは薄暗い洞窟の奥へと進んで行く。
しばらく進むと、人が数十人滞在できる程の大きな空洞に出た。
その空洞の中央には、青白く光る石が浮いている。
そしてその石から、光が放たれているようだ。
俺はそっと近づき、青い石を覗き込む。……やはりこれは魔晶石だな。
この奥はあまり人が来たことは無いみたいだな、普通ならこの奥に転移の魔法陣があるはずだ、黒幕は転移でしっぽを掴ませないつもりだろう。
しかし、この魔晶石からは魔力を感じられない……。どういう事なんだ? 俺は魔晶石に手を当ててみる。!! やっぱりそうだ!この魔晶石からは魔力が感じられなかった訳じゃない。……吸収されていたんだ。恐らく、ここに来る途中にいた魔物達も、ここで倒されて魔晶石だけになった奴等だったんだろう。……じゃあ誰がこんな事をしたのかって話になるよなぁ。
そんな事を考えていると、突然後ろから声をかけられた。
どうやら考え込んでいて気付かなかった様だ。
振り返るとそこには一人の男がいた。……いや違うか。よく見ると頭の上に角が生えている。
コイツはオーガか!? 俺は警戒して身構えるが、男は両手を上げて戦う意思が無いことをアピールしてきた。
敵意はないということだろうか? とりあえず話を聞こうと思い、男の方に歩いてい行く。
「すみません、危うく攻撃するとこだったけど、あなたはオーガ族の人ですか?」
俺は相手に失礼だと思いながら種族確認する、この世界には人種はとは我々ヒュームやエルフに代表される人間種以外にもドワーフやホビットなどの亜人種や獣人やオーガなどの異形種がいるからだ。中には敵対している種族もいるらしいので用心の為の確認である。
俺の言葉を聞いた男は驚いた顔をしていた。
ん?言葉が通じていないのか?そう言えばさっきから一言も喋っていない気がするが……。
もう一度同じ質問をしてみた。
「すみません、オーガ族の方でしょうか?」
今度は伝わったようで、男はフルヘルム脱ぐとやさしい口調で応えた
「紛らわしくてすいません、この前の救出の時はありがとうございました俺はゴブリン族のモランです、角の方はオーガヘルムの飾り角なんで実際には角は生えて無いで
すよ。」
モランは角の部分が兜の飾りであるのが解るように俺に見せてくれる。
「そうなんですね、勘違いしてすみませんでした。私はエドと言います。よろしくお願いします。」
お互い自己紹介が終わると、早速本題に入ることにした。
「それで今日は何をしに来たんですか?」
「実は、人攫いや盗賊の黒幕を探しています。何か知りませんか?」
「ああ、それなら知っていますよ。」
「えっ!教えてください!」
あっさり情報を教えてくれた事に驚いていると、モランさんが理由を話し始めた。
「まあ、教えるといっても大した情報ではないのですが、実はここ最近自分たちの村の近くで子どものゴブリンの誘拐が数件あったんです。それで調査したところ、怪しい奴等を数人捕まえる事ができたんで尋問したら、そしたらこの洞窟のことを喋ったので、少し前に急いで調べに来たのですが、見つけることが出来なかったらまた来たのです。」
……そういうことだったのか。確かにこの規模の洞窟で見つからないのは魔晶石を使用した隠蔽スキルを使った可能性があるもんな。でも今は魔晶石は無くなっているから大丈夫なのか? そんなことを考えているとモランさんが話し掛けてきた。
「それで、その黒幕というのは誰なんでしょうか?」
俺は心当たりのある黒幕の名前を告げようとした瞬間、目の前の魔晶石から膨大な量の魔力が流れ転移の魔法陣が足元で展開されていく。
しまった!遅かったか!!俺は咄嵯の判断でミトを庇うように抱きしめてそのまま魔法陣に飛び込んだ。……気が付くとそこは薄暗い部屋だった。
周りを見渡すとどうやらどこかの地下牢みたいだ。そして腕の中にはまだ意識のないミトがいた。
くそっ!油断した!まさか魔晶石に仕掛けがあったとは……。
それに・・・・・、この感触・・・・・、まさか・・・・・、
ミトが何も言わないのなら鈍感で気が付いてないようにするか。
しかし、何故俺たちは捕まったんだ? 考えられる可能性としては、あのゴブリン族がまさに本人が言っていた子ども達の誘拐犯の仲間という線だが……。……どちらにしてもまずはここから脱出しなければ、俺は腰に差している龍翔の鍔に手を掛けると鯉口に指を掛け引き抜いた抜刀と同時に鉄格部分を横薙ぎの剣閃を描く!音もなく鉄格子に吸い込まれるように振り切られた刃。そして再び手元に戻った柄は手の中からスルリっと入り鍔の音がチャリっと響き鉄棒から抜けたことを表している様にカシャンッと床についた鉄製の武器を落とした時だけ出る無機質な反響音とともに静かに収まっているそれを拾い上げてから周囲ををゆっくり見回したあと、俺はミトの隣で座って待とうとしゃがみこむと、少し冷静さを失った事に溜息をつくとそのタイミングを狙ったかのように地下牢獄の入り口部分に2人現れたことに焦りを見せてしまう。ヤバイ早く逃げないと不測の事態に動転してしまいそうだと思えた矢先扉を開いて牢屋番が入ってきたのだが、2人を見るなり驚愕すると慌てて叫んだのだ。
おい!お前たち何者なんだ!?どうやってここに忍び込んできたんだ!! 俺は牢屋番が叫んでいる隙に逃げようと立ち上がろうとしたその時、俺より先に動いた奴がいた。
それは、牢屋番より前に現れた2人だった。音も無く牢屋番の背後に回り込み始末すると俺達に付いて来いと取れるような合図を送って来ると扉の向こうへと消えていった。
俺は、ミトの体を強く揺すっておこす。
「ミト、起きるんだ」
「ふにゃ?」
ミトは、目を開けると俺を見る。まだ寝ぼけてるのか此処がどんな場所か気が付いていないのだろう。
「あれ? なんで私、こんなところで寝てるの?」
ミトは周りを見渡したあと、俺を見る。
「ねえ、ボクはなんで寝てるの?」
「それは……」
俺はどう答えるか迷ったが、結局そのまま答えた。
「転移の魔法陣に睡眠のトラップの効果もあったみたいで俺も眠らされていたんだ」
「そっかー」
ミトは立ち上がると、扉の方に走り出した。
俺は一瞬呆気に取られたがすぐに後を追う。
するとそこには、見張りの兵士とモランの姿があり、兵士は驚きながらも手に持っていた槍を突き刺そうと構えるが、それよりも速く兵士の懐に入り込むと、脇腹にパンチを食らわせ昏倒させていた、次にモランの方を見ると、モランも既に戦闘態勢に入っており、地上に上がる階段の方に走っていくところだった。
俺はミトの後を追いながらモランに向かって叫ぶ。
「ここは俺に任せろ!!」
そう言うとモランはこちらを振り向きながら答えた。
「任せたぞ!」
そう言い残して、俺の返事を聞く前に姿を消した。
俺もモランに続いて駆け上がり、一気に地上まで走る。
階段を登った先は、飾りの凝った造りの建物になっていて盗賊や人攫いの拠点とは思えない場所であった、俺たちは警備の兵がいない廊下を静かに移動していく、奥へと行けば行くほど建物に似つかわしくない腐敗臭が漂ってくる。……恐らく死体処理場だろう。
そして一番大きな部屋に辿り着くと、そこには先程見たモランが部下らしき男達と兵士相手に戦っている最中であり、俺は加勢しようと踏み出そうとしたが、ミトに止められた。
モラン達は3人で10人以上いる相手に善戦をしているが、明らかに劣勢であるのは誰が見ても明らかである、ミトの制止を無視して飛び出していこうとした瞬間、後ろから肩を掴まれて振り向くと、そこにいたのはゾンビだった。
なっ!こいつらアンデットかよ! 俺はミトを守るように前に出て剣を構えると、背後から足音が聞こえてくる、その方向を見てみると、そこにはモランが立っていた。
モランは肩で息をしながら悔しそうな表情を浮かべていた。
そして、俺たちに背を向けると話し始めた。
「俺がお前たちに前に言った通り黒幕の正体は、この国の司教の1人だ。」
「間違いないのですか?もしそうなら、もっと詳しく・・ってヤバい!」
俺が黒幕について詳しく聞こうとしたら、突然魔晶石から膨大な魔力が溢れ出して転移の魔法陣が展開された。
これはマズイと思った時には既に遅く、スケルトンやゾンビが俺たちの周りに転移してきていて囲まれた。
俺は即座に判断する。
「モランさん!貴方だけでも逃げてください!ここは俺が食い止めますから!」
「そんな!それじゃあ、エドさんが……!」
「大丈夫です!こう見えても結構強いんですよ?だから早く行ってください!」
俺は式神召喚しているミトの援護をしながらモランを避難させる、しかしミトの魔力量では数秒しかもたないだろう。
だが、その数秒で十分だ。
俺は心の中で呪文を唱えると左手に持った龍翔に右手を添えて刀身に魔力を流し込み始める。
すると龍翔が光を放ち始め刀身が青白く発光し始めて徐々にその光が広がっていく。
そして、刀身の光が最大になると俺は剣を振るう。
すると刀身を覆っていた光の斬撃が放たれていき、俺の目の前にいるアンデッドたちを薙ぎ払っていった。
その後、俺は激しい疲労感に襲われるが、まだ黒幕を捕えなければならない為、気合で何とか耐える。
そして、俺の放った斬撃によって出来た道を通ってモランは出口に向かって走っていく。
よし、これでいい。後は黒幕を捕らえるだけだ。
俺は気力を振り絞ってアンデッドたちと対峙するが、もう限界に近いのか身体に力が入らない、ミトの式神の焔狐がアンデット達を燃やしていくのを見ながら、俺も必死に抗おうとするが、遂に膝から崩れ落ちてしまい倒れそうになる。
その時、俺の横をすり抜けて行った影があった。
それは、ミトだった。
ミトは俺の前に立つと両手を広げて庇ってくれている。
俺は最後の力でミトの肩を掴み引き剥がそうとするが、全く動かない。
「くそっ!なんでだよ!ミトは後衛だろ!俺なんかの為に命を張る必要なんてないんだよ!! するとミトは俺の方を向いて微笑みながら呟いた。
「ありがとうございます。ボクのために……。でも、ここで逃げたらボクは一生後悔します。それに、さっきは守ってもらってばかりいました。今度は僕の番なんです!だから、少しだけ待っていて下さいね! 」ミトは俺の方を見て笑顔を見せると、再び前を見据えた。
すると、ミトの足元に複雑な模様の魔法陣が展開されて、ミトの周囲に風が巻き起こり髪や服が激しく揺れ動いている。
次の瞬間、ミトの全身から眩いばかりの黄金のオーラが立ち昇り、両脇に人間大の黒い歪みが生じ人の形をした影が写し出される、そこから出てきたのは、2体の異形の戦士だった。
1体は、禍々しい大きな角持った赤い肌をした侍風の戦士。
もう1体には、全てを見通すような大きな1つ目を持つ青い肌のモンク風の戦士。
2体が同時に動き出すとミトは静かに倒れ込む、式神は一瞬にしてミトの周りにいたアンデットを倒していく。
俺はミトの切り札である式神に驚きを隠せないでいたが、今はチャンスだと思い、俺はミトをを抱きかかえてモランの後を追うようにして走り出した。
ミトのおかげで、俺たちとモラン一行は無事に脱出することができた。
俺達は街に戻ると、まずは宿変わりにしているアンジェロの居る教会に向かうことにした。
モランの方は、事前に連絡を取っていたアベルが出て来るだろうと思う邸宅の近くへと歩いて行く。
しばらく歩くと、モランが足を止めたので、俺も立ち止まる。
モランが見ている方を見ると、そこには見覚えのある人物が立っていた。
その人物は、俺たちの姿を確認すると、こちらに向かって歩き始めた。
そして、俺たちの前で足を止めると話し掛けてきた。
「貴方たちは、確かミトとエドと言ったかしら?久しぶりね。」
そう言って現れたのは、冒険者ギルドで働いている女性だった。
彼女は冒険者ギルドの中でも特別な仕事をしていると聞いたことがある。
俺たちは彼女の問いに答えようとすると、モランが先に口を開いた。
「私はモランと申します。お会いできて光栄です。」
私の名前は、ソフィ。よろしくお願いするわ。」
そして、モランは今回の件についてソフィに説明し始めた。
俺たちを襲ったのは、この国の司教である事。
そして、その司教を俺たちが捕らえようとしたこと。
更に、司教が居る建物がアンデットの温床になっている理由などだ。
モランの話を聞き終えたソフィは、腕を組んで考え込んでいるようだったが、しばらくして話し始める。
貴方たちの話を信用するとして、私たちが追っている相手はこの国を裏から腐敗させていたという事になるわね。
確かにそれなら辻妻が合うわ。
それで、貴方たちが捕まえようとしていたと言う事は、もうその男はまだという事でいいのかしら?」
ソフィは、少し思案し鞄から手帳を取り出し内容を確認し書き込み、そのページを手帳から千切ると音の鳴らない笛を吹いた。
「これより国家クエストの発動を確認!」
金毛の羊が突如ソフィの横に現れると手帳のページを加え消えていった。
ラグラジェント戦記 月野片里 @zeluda
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ラグラジェント戦記の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます