第2話 カメムシ

 去年から今年にかけての冬は、とてもカメムシの多い年でした。

 こんなに多く見たのは初めてです。

 朝、仕事場に行くと、窓に、カーテンに床に……、ありとあらゆるところにカメムシがいて、捕まえるのに朝の時間がつぶれていました。

 やっと、少なくなったと思っていたのに、また、二月の末になるとカメムシを見るようになりました。


 ちょっと、猫のはなしじゃないの?と思われたかもしれませんが、猫の話で合っています。

 カメムシはどこからともなく入ってきて、気づかずにふんずけでもしたら、ひどいめに合います。それを防いでくれるのが、うちのたちなんです。


 猫って、虫というか動くものを発見するのが素早いですよね。

 アリでも小さい虫でも、家の中に入ってきたら、じっとその一点を追い続けています。

 つい昨日もそうでした。

 台所の上の方をじーっと見ているので、きっと何かいるのだろうと、アメショーのアメの目線の先を追っていくと……

「なにもいないよ?」

 そう、わたしの目には、ただの白い天井がみえているだけでした。

 すると、アメは、壁で爪とぎを始めたので、

 なんだ、つめとぎか。

 と安堵しました。

 でも、また、同じところを見つめていました。

「なにかいるの?」

 もう一度、目をむけても、やっぱり何もいませんでした。

 気のせいかな、と思いつつ、台所を離れて、お風呂に入ったり、歯を磨いたり、寝る準備をしていて、コップを洗いに、もう一度台所にくると、まだ、見ているんです。

 もう、ぜったいいるでしょ。

 と、検討をつけて、隈なく見ていくと、いました。

 台所の手元を照らす照明の隙間にこっそりと隠れていました。

 無事に外へとポイっとできて、一安心した次第です。


 カメムシは、パソコンを打っているときに、ぽとっと上から落ちてきたり、料理をしていると、なべの中に入っていることもありました。そのときは、悲鳴どころではありません。お察しください。


 そのカメムシを発見してくれる猫たちは、わたしにとっては、猫さまさまなのです。

 いつもは、ホットカーペットの上で、おなかを出してねそべってごろごろしている猫たちですが、虫を見つけると、どんなに寝ていても、素早く起きて臨戦態勢に入ります。その姿がとても頼もしく思えます。


 たまに、ちょっちょっと手を出して、カメムシを転がして、前足と床が臭くなることもありますが、それも愛嬌というもので、困ることもゆるしてしまうところが、猫好きの性かもしれません。

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